ぼくの伯父さん。Mon Oncle.

 最近、私はまたジャック・タチが気になっています。フランスの映画監督であり、俳優です。私が観たことがあるのは、『のんき大将』『ぼくの伯父さんの休暇』『ぼくの伯父さん』『トラフィック』です。他に、タチ主演の映画ではありませんが、オリジナル脚本のアニメーション作品の『イリュージョニスト』も観ています。この作品は、単純な笑いというよりも、ちょっとした哀しみも感じます。ちなみに『ぼくの伯父さんの休暇』は(原案:ジャック・タチ/著:ジャン=クロード・カリエール/絵:ピエール・エテックス/訳:小柳帝/刊:リブロポート)でも読みました。映画を観たのが先だったのですが、映画を観ていなくても、そのおかしさ(楽しさ)は充分に伝わります。もしあなたが自動車好きなら『トラフィック』がお勧めです。アムステルダムで開かれたモーターショー(1971年)が舞台なので、当時の最先端の車が勢揃いです。もちろん日本車も。
 他にも作品は色々ありますが、代表的な『プレイタイム』と『パラード』を、私は観ていません。以前、回顧展が大阪のミニシアター系で開催されたとき、当時の仕事が忙しくて観に行けずに残念な思いをしました。
 私の個人的な意見ですが、タチの魅力は言葉の要らない動きの面白さだと思います。一言でいえば、動くべきところで動くべき動きをしない。たとえば、Mr. ビーン役のローワン・アトキンソンも、言葉よりも動きの役者ですが、アトキンソンよりもタチの方が風貌が当たり前だというところが、さらに笑いを誘います。アトキンソンは観る前に笑ってしまいますが、タチは観てからじわじわ笑い始める感じです。
 皆さんも、機会があったら、ぜひ一度、ジャック・タチの映画をご覧ください。

追伸

 『タチ「ぼくの伯父さん」ジャック・タチの真実』(著:マルク・トンデ/訳:佐々木秀一/刊:国書刊行会)の「訳者あとがき」には、こんなエピソードが掲載されています。
 あるとき、エリゼ宮の園遊会に名士や高官の一人としてタチも招待されます。時の大統領ド・ゴールはタチを目の前にして、隣にいる事務総長に「この人物は?」と尋ねます。事務総長は「ぼくの伯父さん」と囁きます。そして大統領は、こう答えます。「貴殿の、才たけて魅力的な甥御さんの、目覚ましい出世ぶり」に心からお祝いを述べたそうです。
 一読しただけでは意味がわかりませんが、そのうち、じわじわとおかしみが湧いてきます。まるでタチの映画のように。


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