宝くじに当たりたくない

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 宝くじ。一獲千金が実現できる人生のチートアイテムで、上位の等級に当選すれば、その瞬間に夢の億万長者になれる。宝くじの公式サイトで確認してみると、2017年に発売した年末ジャンボの1等はなんと7億円。一生遊んで暮らせそうな超大金だ。ちなみに2等でも1,000万円をゲットでき、高額商品の購入資金には十分だろう。

私はこれまでの人生で宝くじを購入したことがない。もちろん大金に興味がない訳ではないし、欲しい物がない訳でもない。では、なぜ大衆が欲しがるチートアイテムを手にしようとしないのか。ただただ宝くじに当たるのが怖いのである。

普通であれば、宝くじに是非とも当たりたいのが本音だろう。額にもよるが、運よく当選すれば世界一周など海外旅行や億ション、高級外車の購入を実現できる。なんと魅力的なのだろうか。

私も人の子であるが故、こうした道楽を否定する気はないし、少なからず関心がある。しかし、万が一宝くじに当たって高額を手にした時、様々な弊害が襲いかかりそうでとにかく怖い。

当選の噂を聞きつけた人物から怪しい儲け話を提案されるだろうし、詐欺の電話を受電するリスクも高まる。そもそも、手に入れた大金を使うにも、どこにどれくらい使えば気が済むのかも不明だ。かといって使わなければ勿体ないし、代わりに慈善団体へ寄付するほど人を慮る余裕もない。また、手始めに高級物件へ引っ越しをしたり、ブランド物を身に付けたりしてしまえば、案の定周囲に勘繰られてしまう。

 友人A「なんで最近引っ越したの? あとさ、羽振りもよくなったよね? スーツと 時計も高級ブランドじゃん」
 私「…」
 友人A「どうしたの? あ、宝くじでも当たった?」
 私「えーと…(隠しきれてない)」
 友人A「いいよな運が良くて。お次は社交界デビューですか(皮肉)」
 私「…(違う、そんなんじゃないのに)」

 
咄嗟に嘘をつく(しかも上手に)のが苦手な私にとって、この手の押し問答は地獄。このまま追及が続けば、あっさり白状してしまいそうだ。まるで凶悪犯罪で逮捕された容疑者の気分である。

 こうして私は、宝くじに当たったお陰で友人を失う羽目になった。そして、普段から節約をモットーとし、質素に暮らしたいのにも関わらず、急に大金を手に入れたことでバランスが崩れ、心を病むようになってしまった。また、少しでもニヤついてしまうと「調子に乗っているのではないか」「誰かに妬まれるのではないか」と自己嫌悪に苛まれ、ポーカーフェイスを心掛けるようになった。凄く喜ばしいことが起きたのに、それを隠して慎ましく暮らす毎日。ちょっとした出来心で人生を棒に振ってしまったのである。

こう考えると、私にとって一番の宝くじは「宝くじに当たらない」ということに尽きる。宝くじはダメ。ゼッタイ。

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