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ラーメンの著作権の話。

タイトルからすると「一体何を言っているのだ?」と感じる方が大多数だと思いますが、私が愛する料理「ラーメン」(つけ麺を含み、以下同様とします。本当は、つけ麺の方が好き。)について、なぜか著作権の観点から考えてみたいと思います。

なぜ著作権?

そもそもなぜラーメンの著作権について考えるのかと言えば、私はラーメンが好きでよく食べに行きますが、その際に、目の前に運ばれてきたラーメンの写真を撮影して自身のインスタにアップしています。
仕事用アカウントのはずなのに、何かの間違いかと感じられるほどラーメン画像で埋め尽くされています。
(この記事の写真も、上記目的のために私が撮影したものです。)

写真を撮影しているのは私であるため、その写真の著作権は撮影者である私に帰属するはずです。
これについては特に異論は無いかと思います。

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上記写真は、エビ好きとしてたまらない「つけ麺 五ノ神製作所」さんの「海老つけ麺」ですが、この写真はより美味しそうに見えるように、料理の素晴らしさが現れるように私が構図判断して撮影したもので、「写真の著作物」(著作権法10条1項8号。以下著作権法を単に「法」と表記します。)として私が著作者であり著作権者です。
だから無断でSNSなどに転載すると著作権(複製権(法21条)・公衆送信権(法23条1項)・氏名表示権(法19条1項))侵害ですよ!

では、被写体となっている、ラーメン自体には著作権は存在するのか?
仮に著作権が存在するとすれば、写真撮影という私の行為は複製に該当し、さらにそれをインスタにアップしているということは公衆送信も行っていることになります。

つまり、ラーメンに著作権がある場合、権利者に無断でインスタにアップするということは、上記権利の侵害に該当してしまうおそれがあります。

それは困る。

ということで、ラーメンの著作権の話です。
なお、著作権のネタは、私のブログ『著作権のネタ帳』で扱うのが原則ですが、今回はそこまで真面目なネタではないため、このnoteに殴り書きするだけに止めようと思っています。

見た目の著作権

まずビジュアル面から考えていきます。
ラーメンの外観は著作物なのか?」という点ですね。
著作権で保護されるものは著作物に限られるため、ラーメンの外観が著作物でなければ、そもそも著作権で保護されていないということになります。

ただ、前提として、ラーメンは美しいですよね!
誰がどう見ても美しいですよね!!
特につけ麺は美しいですよね!!!

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上の写真は東京のKITTEにある「松戸富田麺絆」さんの「濃厚つけ麺」です。
本店ではなく恐縮ですが説明不要の有名店ですね。
綺麗に揃った麺、そして濃厚なスープの上にはバランス良く配置されたトッピングが並びます。味はもちろん、彩り的にもゆずが良いアクセントになっています。

これだけ美しいのだから、もはや芸術作品では?とさえ思えなくもないですが、果たしてこれは「美術の著作物」(法10条1項4号)なのでしょうか?

そもそも「美術の著作物」は、絵画や彫刻などの作品を指す「純粋美術」と、大量生産される製品や実用品などのデザインを指す「応用美術」は分けて考えられていますが、応用美術のうち美術工芸品については美術の著作物に含まれると定義されています(法2条2項)。
※ これはつまり、美術工芸品以外の応用美術については、著作権法で保護されるか否かが曖昧ということです。過去の裁判においても判断が分かれています。

ラーメンの外観は美術の著作物なのか、という点においては、まず鑑賞作品として制作されたものではないため純粋美術には該当しないと思います。
では、応用美術なのかと言うと、まず美術工芸品には該当しないのはまあ当然として、鑑賞用としての役割も併せ持つほどの美的価値が高いかというと、なかなか微妙なところだと思います。

綺麗に揃った麺についても、確かに美しさを醸し出す要因にはなっていると思いますが、こういった”麺の向きをそろえて器に盛り付ける”ことは、うどん等他の麺類でも見られるものであるため、これに著作権を主張することは難しいのではないかと感じられます。

スープについても、確かに綺麗ですが、特段の創作性が発揮されているのかというと、これもまた難しいように感じられます。

そもそも、著作権とは「著作者の死後70年間」もの間、基本的に同一の表現を許さないという非常に強力な権利であるため、あまり容易に認めすぎても生きづらい社会となってしまいます。
あの外観が著作物であり著作権で保護されるとなった場合、もう誰も器のあの位置に「なると」や「海苔」を置くことができません。
いや、そもそも、あの位置に「なると」「海苔」を置くことはもっと前から誰かが行っていたのでは無いか?とも思えます。

・・・というより、

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ラーメンの盛り付けは、機械的に大量生産するものではないため、日によって、そして店員によって、盛り付ける位置は若干変わりますよね。

そうなりますと、やはり著作権を主張することは難しいのではと感じられます。

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こちらも有名店の「六厘舎」さんです。限定Wつけ麺です。間違いなくBeautifulです。

こちらもスープに「なると」が入っていますし、麺も(とみ田とは異なりますが)揃えられて盛り付けられています。

でも、これを見て「あ!とみ田と一緒!!」と思うでしょうか?
このような外観はつけ麺の盛り付け方のスタンダードになっているような印象も受けるため、やはりこれに対して著作権を主張することは難しいのではないかと感じています。

結論:ラーメン外観に著作権を主張することは難しい(あるいは相当ハードルが高い)ような気がする

レシピの著作権

では、外観ではなく、どのような具材をどのように調理してどこに盛り付けるのか、といった「具材の選択とその調理方法」つまり「ラーメンのレシピ」には著作権は生じるのでしょうか?

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私が愛してやまない錦糸町の「ラーメン Sorenari」さん。「鶏そば(塩)」with ライチタイムのサービスライスです。

こちらのお店は、鶏ガラや豚骨をオーブンで焼いた焼きガラを利用してスープをとるという、一般的なラーメンスープとは少し異なる製法を用いているそうです。

こういった独自の製法は、著作権で保護されるのかというと、一般的には「著作権では保護されません」。
仮に製法を真似したとしても「著作権侵害では無い」と考えられます。

著作物とは「思想または感情を創作的に表現したもの」(法2条1項1号)と定義されているため、どの食材をどのように調理するのかといったアイデアは”創作的に表現されたもの”に該当しないため著作物にはなりませんし、そのアイデアを用いて生成されたスープは具体的な有体物(いわゆる”物”)であるため、”表現したもの”の”もの”が指す精神的・抽象的な存在(加戸守行『著作権法逐条講義 六訂新版』p.34より)とも異なります。

※ただし、アイデアであるレシピを表現(レシピ集やレシピサイトなどに掲載されているもの)した文章や写真は著作物になります。
また、非常に革新的な製法であれば特許権によって保護されている場合もあり、それを無断で利用した場合は特許権侵害となることはありますので要注意です。

結論:アイデアとしてのレシピは著作権は及ばない。でも表現物からのコピーや特許には注意してね☆

丼のマネには注意が必要な場合もあるかも

以上、ラーメンの著作権について少し考えてみました。
基本的には、著作権によって保護されているとは考えにくいと思います。

ただし!

ラーメン店によっては、店独自の丼や皿を利用しているケースがありますが、それに店独自のイラストやデザインが施されている場合があります。

例えば先述の「松戸富田麺絆」さんをはじめとする「中華蕎麦 とみ田」さんの店舗で使っている丼には、見事な鯉のイラストが描かれています。
このイラスト、かなり美的価値も芸術性も高いと思いますので、著作物に該当する可能性は高いと感じられます。

その場合、その鯉のイラストが描かれている丼を撮影してSNSにアップする程度では(厳密に言えば複製権と公衆送信権の侵害に繋がる可能性がゼロではありませんが)特段問題は無いと考えられますが、しかしこのデザインを模倣した丼を制作したり、イラストを他の用途に使用した場合に、著作権侵害のリスクが生じてきます。

結論

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上記「麺屋一燈」の「濃厚魚介つけ麺」をはじめ、
つけ麺、大好き!


なお、ラーメンに限らず、上記論考は料理全般に当てはまると思いますが、本記事ではあくまでラーメン推しということで。

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