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海へ

晴れた日の夕方、友人とドライブに行った。 なんとなく海に行こうと言ったが、目的地なんかどこでもよくて、どこにも着かなくたって別によかった。 ただじっくり会話をする時間と理由が欲しいだけだった。 一面に田んぼが広がる道を走ると、なににも遮られていない太陽が風景の主役になっていた。 日差しが強くて眼を開けていられない。 雨が多い地域だから晴れてるだけで良い日になる。 目的地だった海に着いて車を降りる。 波が打ち寄せるとともに潮の匂いがした。 季節は地平線の向こうから波が運んで

    • 眠る前

      眠りにつく前、無い頭でふと、何が自分にとっての幸せかを考えることがある。 人にはあまり言いたくない少し恥ずかしいマインド。 漠然とした想像は枕に乗った頭をすり抜けて宙に浮き、照明の近くをフワフワと漂ったあと霧散して消える。 それを見届けているときはもう夢の中にいるのかもしれない。 「心が広い」「優しい」なんて言われることがあるが、そうじゃない。 人に嫌なことを言われた時に言い返す度胸がなく、反射的に笑って誤魔化してしまうだけだ。 決して許してはいない。 そうしてその場しのぎ

      • 遮断するイヤホン

        つけ麺屋の行列に1人で並んでいた。 その日に調べてノリで来てみたが、ここまで人気店だと思っておらず、長時間立ちで待機する心の準備はできていなかった。 前に並ぶ30代前半くらいの夫婦は延々と仕事の愚痴を言い合っている。 キンキンと高い声で新入社員を悪く言う奥さんの声を聴いていると気分が悪くなってきたため、 イヤホンで耳を塞いだ。 この列に並ぶ10数名、そして店内にいる店員含めた数10名の中で1人も知らない可能性のあるバンド音楽が私は孤独にしてくれた。 イヤホン誰からも干渉される

        • 形成される私

          高校生だった私に母が勧めてきた映画があった。 就職活動中の大学生数名のそれぞれの人間模様や葛藤を描いていた。 主題歌と綺麗な女優が出演しているかくらいの理由でしか映画を観ない私だが、今作はそのどちらにも当てはまっていたので言われるがままにDVDではあったが鑑賞した。 正直、なにが面白いのか分からなかった。 将来のことなんて何一つ考えてなかった私に共感できるところがなかった。 それほどの距離感を感じるほどに私は精神的にも子供だった。 母は未来に対して考えのない私を見抜いていた

          見上げる、他愛もない会話

          私なんか必要としない会話は進んでいく。 エスカレーターに乗る人を、階段で走って追いかけてるような感覚。 たまに気を使って振られる話題にもユーモアを持って返すことができず、 もしかしてこの場に私がいない方がむしろスムーズなんじゃないかと思っしまう。 それを勘づかれてしまわないよう、わざと気丈に振る舞う自分を客観的に見て情けなくなっていた。 同じ時間を共有しようとする私のエゴはいつまで通用するだろう。 いつか友人に言われた「映えないから写真に写ってほしくない」「お前は冴えないか

          見上げる、他愛もない会話

          コーヒー以前以後

          20年来の友人3人と呑みにいき、懐かしい話ばかりをしていた。 私だけが乗る必要のあった終電の時間も分かっていたけど、追いかけるつもりもなく、幼馴染ならではの昔の話に夢中になっていた。 内容がなくても懐かしさだけで笑顔になれる。 話しているときだけはいつだって20年前に戻れた。 2軒目のバーで会計時にもらった、女の子の可愛らしい手書きで私の名前まで書かれた高額な請求の伝票は、大人の世界への切符のように見えて大事に持ち帰った。 1人でバーなんて行く勇気はないから、また誰かに誘わ

          コーヒー以前以後

          宇宙オーケストラ楽団の襲来

          子供の頃の想像力は無限大だった。 プールに溜まってる水が一瞬でゼリーになる魔法とか、空から見たらこっちが空だとか、自分たちは誰かの頭皮の上で生きるただの毛じらみなんじゃないかとか。 一番怖かったのは、「地球温暖化」を「地球音楽家」と聞き間違えており、環境汚染を続けると罰として宇宙オーケストラ楽団を名乗る宇宙人達が楽器を武器に地球を破壊にしに来ることだった。 バイオリンの音波で建物を破壊し、チェロは巨大なハンマーと化す。 それらを空中から操る、禍々しい容姿に反した厳かな黒いテイ

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          どこかへ向かう婆さん

          仕事柄、運転をしている時間が長いのだが、田んぼ畦道をシルバーカーを押しながら歩いているお婆さんをよく見かける。 おそらく都会にはない田舎を象徴する光景の一つだ。 彼女達はいったいどこから来てどこへ向かっているのだろう。 勝手な偏見でシルバーカーには市場で選ばれた大根が積まれていると思っているが、実際はどうなんだろう。 腰を曲げながらも少しずつ一生懸命に歩く姿は、地の果てまで進んで行く気なんじゃないかとさえ思ってしまうほどにパワフルだ。 そのくらい、私にとってはよく見かけるの

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          走る朝、早起きにて

          今日から朝のランニングを始めることにした。 週に3〜4回はジムに通い、ランニングマシンで運動を続けているが、時速10kmで無機質に流れるコンベアの上から落ちないように抵抗を続ける作業は退屈でつまらない。 外ならば景色は変わり続けるし、なにより早起きして活動していると得している気分になれるのが良かった。 快晴の中、汗と共に余計な思考は流れ落ち、純粋な状態で様々なことを考える。 この後の仕事のこと、彼女との結婚のこと、楽しみにしている予定のこと。 この時間は寝ているはずの過去の自

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          悩みを吹き飛ばすツービート

          落ち込む出来事があった日の帰り道は決まってツービートの曲を聴く。ツービートとはメロコアやパンクで多用されるドラムの高速ビートを指す用語であり、ビートきよしとビートたけしによる漫才コンビとは無関係。 知らない間に出ていた鼻くそをぶら下げながら女の子と喋ってしまった日、買ったばかりのTシャツにラーメンの汁を飛ばしてしまった日、似たような情けない気持ちになった経験は誰にでもあるだろう。 そんな日はNorthern19のSTAY YOUTH FOREVERを聴こう、dustbo

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          年齢で見る

          今年で24歳になる私は、人をまず年齢で見る嫌な癖がついていた。 仕事で優秀な能力を持つ人に出会ったとき、 「この人はすごいけど、自分より○個も年上だからだ。焦る必要はない。」 などと情けない着地点を見つけてしまっている。 しかし、海の向こうで活躍するスポーツ選手、流行りの恋愛ソングを歌うバンドなど、テレビをつければ自分より若い才能で溢れていた。人生を賭けた挑戦や続けてきた努力もない私は、彼等に対して嫉妬する権利すらないように思う。 なにもしてないくせに一丁前に悩みや不安

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          救急車

          住んでるマンションの近くには消防署と警察署があるから、毎日のようにサイレンが聴こえる。 引っ越すまでは知らなかったけど、知らないところで事件事故は頻繁に起きているらしい。 近い距離の出来事なのにそういった現場に居合わせた経験のない私はまだ他人事でいる。 実害以外で学べるものは少ないと思う。

          100円貯金

          私は買い物はできる限りに札で払い、お釣りによって発生した小銭を全て貯金していた。 もともとは袋入りのチップスが入っていたアメリカサイズの筒状の箱に向けて財布を逆さにして小銭を乱雑に積み上げていくのが日課だ。 その気軽さゆえに続いたいたところもあったが、正直1円〜10円玉を1人の力で集めても、夢を見れるような金額にはならない。 だから、100円玉のみを入れる貯金箱を購入した。どうやら満タンになれば30,000円になるらしい。 だが、その貯金箱を買うために消費税を入れて110円を

          100円貯金

          高速バスに揺られて

          今日は東京六本木にてBase Ball Bearのライブがあるため、高速バスで長時間揺られている。 到着まで5時間以上かかることが分かっていたので 予めNetflixにアニメを20本以上ダウンロードしておいたがBluetoothイヤホンの充電が切れたと同時に意味を持たなくなってしまった。 こういった長距離移動でイヤホンを封じられた私は無力だ。 数少ない趣味の音楽・アニメ鑑賞は音無しでは楽しめないし、一応持ってきた本もあるが読書の習慣なんてないから気が進まない。 ただただ高速道

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          何もない休日

          本当に何もない休日だった。 できれば毎日描き続けたいと思っていたこのnoteも早くも停滞気味にある。 あまりに暇だったため、平日用の食事を予め作って冷凍することにした。 昼用の卵そぼろ弁当と夜用のチャーハンをそれぞれ5食ずつ作った。 チャーハンを作り出した段階では卵を切らしてることに気づき、仕方なくマヨネーズで代用してみた。 マヨネーズは魔法だ。 入れておけばとりあえず平均点以上の味に底上げしてくれるし、量が控えめだろうと多めだろうと失敗にはならない。 ストック用の料理が上手

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          地震

          地震が起き、石川県を中心に甚大な被害が出た。 倒壊した建物、割れた地面、津波など、SNSやテレビがその規模の大きさを絶え間なく伝えていた。 その中には自分の知っている場所があったり、実際に避難している知人がいることも分かっていた。 それなのに僕の日常に変化はなく、予定通りの友達と会って食事をしていた。 僕はもし被災したとき、都合よく助けを呼んでいるだろう。 こういうとき、心底自分が嫌な奴に感じてしまう。