見出し画像

雨の日の拾い者、第1話(Novel Days版)

雨の日の拾い者、第1話(Novel Days版)

第1話

 ●2017年11月17日(金)、夜の公園にて
 ●2017年11月18日(土)、ミノルの部屋 Ⅰ

第2話

 ●2017年11月18日(土)、ミノルの部屋 Ⅱ

第3話

 ●2017年11月18日(土)、ミノルの部屋 Ⅲ

第4話

 ●2017年11月18日(土)、ミノルの部屋 Ⅳ

第5話

 ●2017年11月18日(土)、神社
 ●2017年11月18日(土)、早紀江の部屋 Ⅰ

第6話

 ●2017年11月18日(土)、愛子叔母様
 ●2017年11月18日(土)、早紀江の部屋 Ⅱ

第7話

 ●2017年11月18日(土)、北千住の分銅屋

第8話

 ●2017年11月18日(土)、ミノルの部屋 Ⅴ
 ●2017年11月19日(日)、ミノルの部屋 Ⅵ

登場人物

 遠藤実  :尾崎の部下。防衛省防衛装備庁航空装備研究所技師
 遠藤早紀江:遠藤実の婚約者、高校3年生
 尾崎紀世彦:防衛省防衛装備庁航空装備研究所上級技師、ミノルの上司
 比嘉美香 :尾崎の恋人。石垣島出身の建築設計事務所勤務
 三國優子 :新幹線のパーサー
 小林智子 :新幹線のパーサー

 吉川公美子:小料理屋分銅屋の女将さん
 後藤順子 :高校3年生で傷害事件で中退、分銅屋のアルバイト
 節子   :高校2年生、分銅屋のアルバイト
 田中美久 :北千住の不動産屋の娘、元ヤン。大学1年生
 時任純子 :氷川神社の娘、長女
 時任直子 :氷川神社の娘、次女

あらすじ

 尾崎は、遠藤実と共に防衛装備庁航空装備研究所に勤務しているが、彼と遠藤実の研究課題はレールガンの大容量キャパシターを使った蓄電技術、砲身・コイルの素材開発、標的への標準管制技術などを協力会社と共に開発中だった。尾崎はこの分野の中心人物として、チームを指揮していた。

 中国も同じく艦船積載用のレールガンを開発してたが、開発は難航していた。国産の機器・素材に問題があるのだ。しかし、先端技術製品である機器・素材は日米欧州からおいそれと輸入できるものではない。彼らお得意の産業スパイを使った技術の模倣にも限界がある。

 レールガンの基本技術は、中国3隻目の空母「福建」の電磁カタパルトにも応用できるが、彼らの電磁カタパルトもレールガンと同様開発が難航していた。米国の最新の原子力空母「ジェラルド・R・フォード」に搭載しテスト中だが、米国でさえ諸問題を抱えていた。

 そこで、中国は、手っ取り早く、防備の固い米国ではなく、簡単に人間を拉致できる日本に目を付けた。それが尾崎と遠藤だった。彼らは、まず、尾崎の知り合いの三國優子に目をつけ、彼女が勤務先の東京駅から彼女のアパートのある大井町まで尾行した。その時点では、彼らは尾崎のガールフレンドの比嘉美香の存在を察知していなかったようだ。

 この尾行にきづいたのが、尾崎を警備・監視していた公安の富田。尾行していた人間が迂闊にも中国大使館に入ったのだ。富田は自衛隊の諜報部門の紺野三等空佐に連絡した。富田と紺野は、尾崎と尾崎の周辺人物への監視を強化した。

 その後、遠藤実の婚約者の早紀江が、北千住の分銅屋からの帰り道で暴漢に襲撃され拉致されそうになった。連絡を受けて急行した紺野。紺野は、尾崎、比嘉、三國優子、遠藤実、早紀江の警護を強化した。しかし、民主国家である日本は、中国の公安警察のような強制的な行動はできない。自衛隊も民事には介入できない。紺野と富田は、数少ない公安警察と標的となっている人物の近隣の警察所轄の人員を組織した。

 現在、中国大使館国防武官兼海軍・空軍武官の女性の楊欣怡(ヤン・シンイー)海軍少校(少佐)が赴任していた。

 港区元麻布3丁目の中華人民共和国駐日本大使館で、楊少校は、防衛省航空装備研究所の尾崎技官と恋人の比嘉(ひが)美香の拉致の計画をたてた。まず、遠藤の婚約者の早紀江の拉致を目論んで失敗した。しかし、彼らは、三國優子と小林智子の拉致を陽動として、尾崎と比嘉を拉致する計画をたてていた。

2017年11月17日(金)、夜の公園にて

 連日の残業でぼくのマンションの最寄り駅の改札をくぐった時には時刻は十一時半を回っていた。今日は終電2本前。まだ早い方だった。外は霧雨。傘を持っていなかったが、霧雨程度なら徒歩十五分だしそれほど濡れないだろう。

 いつもは大通りを抜けていくが、近道の裏道を通っていくことにした。ぼくの住まいは東京の下町。風紀がいいとは言えない。襟を立てて足早に急いだ。

 この道の途中には寂れた公園もある。その公園の前を通り過ぎようとした時、公園の中の街路灯から外れたブランコの当たりで何か揉めている気配がした。目を眇めて見ると、会社員のような男性と制服姿の女子高生らしき人影が見えた。男性が嫌がる女子高生の手を引っ張っている。これは放っておけないよね?ぼくは公園の入り口の鉄製の柵をまたいで彼らの方に歩み寄る。

「ちょっと!何をしているんですか?」とぼくが男性に声をかけた。男性はギョッとしたようだった。暗がりで顔を見るとまだ若そうだった。ぼくと同世代かもしれない。痴話喧嘩で揉めているなら他人のばくは間抜けに見える。その際には謝ってしまえばいいのだ。

「おまえには関係ないことだ!」と男がぼくに怒鳴る。ぼくは女子高生に「この人はお知り合いなんですか?痴話喧嘩か何かでしたらぼくは余計なことをしているんですが?」と聞く。女子高生は顔を激しく左右に振って「違います。知り合いなんかじゃありません!」と答えた。

 ぼくは男性に歩み寄って顔を近づけて「彼女、ああいってますよ?警察に通報しましょうか?ぼくはこの近所のもので交番のおまわりさんとは親しいのですが?どうされますか?」とニヤッと笑って言ってやった。

 彼は女子高生の手を振り放して「この女が暇そうで雨も降ってきたので雨宿りに連れて行ってやろうとしただけだ!バカヤロウ!」と言って駆け去ってしまった。雨宿り?ホテルかカラオケにでも連れ込もうとしてってことか?

 ぼくは振り返って女子高生を見た。薄い通学鞄と肩にはエレキベースのようなものを背負っていた。「行っちゃったな。キミはあいつにナンパでもされちゃってたのか?」と聞いた。「あの、ちょっと考え事をしていて、ブランコを漕いでいたら声をかけられて、急に腕を引っ張られて引きずられたんです。ありがとうございます」と言う。暗がりだからあまり見えないが、髪の毛の長い細身の女の子だった。

「こんな夜遅く薄暗がりの公園にいる方も悪いよ。早く帰りなさい。怖かったら駅まで送ってあげるから」とぼくが言うと「あ!今何時ですか?」と言う。ベースを担いているからスマホとか腕時計が見えにくいのだろう。ぼくは腕時計を見て「11時55分だけど」と言った。

「アチャア、終電を逃した!どうしよう?」と泣きそうな顔で言う。ぼくにそれを言われてもなあ。「タクシーか徒歩で帰れないの?」と聞くと「アパートが大宮なんです。最終がJRの11時52分。お金も持ってません」と涙目でぼくを見上げて言う。北千住から大宮じゃあタクシー代は1万円以上するなあ。深夜割増だとそれ以上か。面倒な子に関わったものだ。

「キミは・・・ぼくは遠藤実。見ての通りの会社員だ」
「私は、早紀江、遠藤です。偶然です。名字同じですね」
「早紀江さんね。早紀江さんはなぜこんな遅くにこんなところに居たの?見たところ高校生みたいだけど?」
「ハイ、高校3年生です。私、この近所の居酒屋でバイトしていて店が立て込んでしまって出るのが遅くなりました。それで悩んでいることの考え事をしていたらフラフラとこの公園に入ってしまって・・・すみません、この通りの有様です」とペコンとお辞儀をする。

「じゃあ、その居酒屋さんでお金を借りるとかできないの?」
「前借りもしているんで・・・そもそももうみんな帰っちゃっています。大宮のアパートも一人暮らしです。家族は静岡にいます」とすがりつくような目でぼくを見る。でかい目だなあ。長い髪の毛からエルフのような耳が出ている。まいったな。

「早紀江さん、これはお互い困ったことだよ。キミは袋小路。ぼくは早紀江さんを知らない。おまけに高校生の未成年。ぼくのマンションはこの近所だけど、まさか早紀江さんを泊めるわけにもいかないじゃないか?犯罪になるよ」
「少なくとも、私、四月生まれなので18歳です!犯罪にはなりません!」

「いや、そういう問題じゃない。ぼくは一人暮らしなんだ。それでぼくがさっきの男みたいによこしまな考えを持って、早紀江さんを襲っちゃうかもしれないんだよ?ぼくはキミの見知らぬ男性なんだよ?」
「いえ、そういうことを言われているなら、私、実さんが信用できます」
「口ではなんとでも言えるよ。ぼくがいいチャンスだ、なんて考えていたらどうするんだ?」
「構いません。自分の部屋まで歩いてビショビショになって帰るよりもマシです!可哀想な子猫でも拾ったと思って、玄関先でいいので泊めていただけませんか?お願いします!実さんなら何をされても構いません!」

サポートしていただき、感謝、感激!