絵葉書
介護の仕事に就かせていただたいて、1か月が経ちました。
介護の仕事は、まるで二重生活で、大所帯の家族の一員になったようなものです。※こうやって文章にしていますが、動いているときは、ほぼ無心です。母親の大変さに似ているのだろうかと思うことがあります。
一緒に働いている方は、女性が多く。お子さんもいます。彼女たちから、家事について多くのことを学びます。彼女たちの段取り力は、すさまじく、秒単位でこなしていかれます。焦ります。
さて、僕が仕事をさせていただいている施設ですが。利用されておられる入居者さんは、90歳に近い方が多く。団塊の世代と呼ばれている方々のさらに上の世代(焼け跡世代?)に当たる方々です。
ともに生活をさせていただく中で、お話をさせていただく機会も多く。経験の深さを感じる佇まいをされます。
一人の男性は、さらりと言われました。「もうすぐ、何か起こりますよ。」僕が束の間の平穏を得て、その方の前で気を抜いていた時に静かに囁きかけてくださった一言です。目は微笑んでおられました。僕は、気を引き締めます。「嵐の前の…」
タイトルの「絵葉書」は、ある女性入居者さんとのやり取りの話です。
その方は、寝たきりです。
その方は、とても思慮深く、日々の関わりに対して、しっかりと言葉で「ありがとうございます。」と伝えてくださいます。
働き始めたころから、僕のことをとても気にかけてくださり。親元を離れて、一人暮らしをしている話をしたとき。
「ちゃんと、親御さんに手紙を出さないとだめよ。」「元気にしていますと、ちゃんと伝えないと。」「電話はしているの。」と仰られました。
少し時間をさかのぼりますが、昨年。僕は、いろいろな人に会いに行きました。行き先は、主に東京で。インスタグラムで興味を持った方や、その方からの紹介の方々。または、名古屋で知り合った方。
その方々は、一般的なサラリーマンではありませんでした。事業主として、いきいきと自分の取り組んでいる仕事に誇りを持っている人達で。皆一様に「他への感謝」と口をそろえて仰られ、実践されていました。そして、また「親への感謝」と。
僕は、親にはとても感謝していました。
でも、実際に親を前にし、直接感謝を伝えることをしたとき。その瞬間、初めて本当の気持ちが生まれました。両親は、しっかりと感謝の言葉を受け止めてくれていました。こと母親は、いつもとちっとも変わらない顔で座っていました。
今、目の前の女性は、自然と同じ言葉を口にされます。僕は今、何物にも代えがたい経験をさせていただいています。
普通の生活を送っていたのでは、関わることのできなかった世代の方々と直に接する機会をいただき。
僕は、両親に手紙を出すことにしました。
毎月送る、手紙の第一弾は。
「ジュール・パスキン」《カフェにて》です。
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