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毎月更新 https://twitter.com/BCKN18 レベッカ・シュガーと高畑勲の作品を中心に

最近の記事

『火垂るの墓』(高畑勲)ーアニメーションが死を描くということ

高畑作品にしては珍しく『火垂るの墓』は今でも世間で定期的に話題になる作品だ。近年の言及のされ方には一つの定型がある。イメージとして広く共有されている悲しい『火垂るの墓』の物語に対して、清太の自己責任論ないしは西宮のおばさんの擁護論から議論が盛り上がり、最終的に以下の高畑勲のインタビューが引用される流れだ。 だが、このインタビューの引用だけでは、作品や高畑勲の意図を十分に説明しているとは言えないだろう。現在とは異なり、『火垂るの墓』の公開当時、殆どの日本の観客は清太たちに全面

    • 高畑勲と新海誠の微妙な距離感

      『赤毛のアン』をめぐって 『すずめの戸締り』を見た時、主人公の本棚に『赤毛のアン』が一瞬映るのに気付いた。(他にもツルゲーネフの『初恋』などがあったと記憶している。)そういえば、とふと思い出したことは『君の名は』でも『赤毛のアン』を想起させる場面があったことだ。 調べてみると、新海誠自身が高畑勲の『赤毛のアン』を「影響を受けた作品」として公言していることを知った。「アニメの作り方を初めて自覚的に知ったのが『赤毛のアン』」だったとのことだ。 『君の名は』のヒロインを演じた上

      • 『ベター・コール・ソウル』最終話について

         『ベター・コール・ソウル』が最終話を迎えた。『ブレイキング・バッド』の前日譚でもあり、後日譚でもあった作品の最終話が描いたのは、ジミー・マッギルがソウル・グッドマンの仮面を脱ぎ去る姿だ。散々言われていることだろうが、ハイゼンベルクとして死を迎えたウォルター・ホワイトの姿と対照的だ。だが、ベクトルは違えど、両者にとって救いの道であったことには変わりない。  ジミーがマッギルの家名を捨てて、ソウル・グッドマンになったのは痛みから逃れるためだった。その最大の痛みは彼が間接的に関

        • 『おもひでぽろぽろ』(高畑勲)のリアリズムと諦念について

          ◆エンディングをめぐる解釈  『おもひでぽろぽろ』は"鏡"のような映画にするつもりだった、と高畑勲は語っている。(ジブリの教科書『おもひでぽろぽろ』「反響の大きかった映画/意見の分かれたラストシーン」より)この作品について語ろうとするとき、人々は作品に批評めいたことを言いつつも、その実、自分の人生や価値観を語らざるを得ないのだと。  原作の『おもひでぽろぽろ』が持っている構造をそのまま映画で生かそうとしたこの試みは、ある程度成功をした。誤算だったのは、監督自身が「結論として

        『火垂るの墓』(高畑勲)ーアニメーションが死を描くということ

        • 高畑勲と新海誠の微妙な距離感

        • 『ベター・コール・ソウル』最終話について

        • 『おもひでぽろぽろ』(高畑勲)のリアリズムと諦念について

          『スティーブン・ユニバース』と『未来少年コナン』の関係について

          ◆”Future Boy Conan”  5月28日(土)より、三鷹の森ジブリ美術館で『未来少年コナン』展が始まっている。  『未来少年コナン』は、当時37歳であった宮崎駿の監督デビュー作である。その後の宮崎作品の原型の一つであり、当時のクリエーターやクリエータの卵たちに多大な影響を与えた。(近年では『映像研には手を出すな!』の冒頭の場面の使われ方が印象的だろう。)  そして、その影響は時代と国境を越えていた。  『スティーブン・ユニバース』の監督であるレベッカ・シュガー

          『スティーブン・ユニバース』と『未来少年コナン』の関係について

          『アルプスの少女ハイジ』(高畑勲)ーアルムおんじのエゴイズム、あるいはフランクフルト編におけるもう一つの視点についてー

          ◆あらすじからこぼれ落ちてしまう描写  『アルプスの少女ハイジ』については、多くの人が沢山の事を語っている。そのため、語られていること(その歴史的意義や、「生活」をめぐる描写、原作との相違点)について、特にここで触れる必要はないだろう。  一方で、あまり語られない側面というのも、確かにあると感じている。  ハイジの大まかなあらすじは次のとおりだ。  このあらすじは、実際にハイジを見た人の記憶と一致しているはずだ。  アルムの山での心の解放、フランクフルトでの憂鬱、アルムの

          『アルプスの少女ハイジ』(高畑勲)ーアルムおんじのエゴイズム、あるいはフランクフルト編におけるもう一つの視点についてー

          『母をたずねて三千里』(高畑勲)ー慈悲と冷酷の狭間でー

          ◆「もっとちゃんと評価されてしかるべきなのに誰も評価していないから、頭に来ている」  『風立ちぬ』、『かぐや姫の物語』が相次ぎ公開された当時、文藝春秋の企画で高畑勲と宮崎駿と鈴木敏夫の最初で最後の鼎談があった。(「スタジオジブリ30年目の初鼎談」) 鼎談の中で鈴木敏夫が2人に問いかける「お互いの作品で何が一番好きなんですか。」と。  どちらの回答も予想通りで、高畑勲は『となりのトトロ』を選び、宮崎駿は『アルプスの少女ハイジ』を選んだ。この時の「もっとちゃんと評価されてしかる

          『母をたずねて三千里』(高畑勲)ー慈悲と冷酷の狭間でー

          全話見てからのスティーブン・ユニバース(番外編-2)『The Deepest Well(小児期トラウマと闘うツール)』について

          2020年3月27日、アメリカでスティーブン・ユニバースが完結しました。 それから、ひと月が経つものの、私の心は整理がついていません。 私はスティーブン・ユニバースの感想を見るのが好きです。色んな方の初見時の感想を見るたびに、自分もこのときこう思っていたな、と体験を振り返ることができます。そしてそれ以上に、エピソードをある程度見終わってから見直した際の感想も好きです。過去と未来のエピソードが常に相互補完されていく物語の中では、初見時には思ってもみない視点が加わっていくからで

          全話見てからのスティーブン・ユニバース(番外編-2)『The Deepest Well(小児期トラウマと闘うツール)』について

          全話見てからのスティーブン・ユニバース(番外編)「もう一つの地球」("an alternate Earth")としてのSU

          2020年3月27日、アメリカでスティーブン・ユニバースが完結しました。 それから、ひと月が経つものの、私の心は整理がついていません。 私はスティーブン・ユニバースの感想を見るのが好きです。色んな方の初見時の感想を見るたびに、自分もこのときこう思っていたな、と体験を振り返ることができます。そしてそれ以上に、エピソードをある程度見終わってから見直した際の感想も好きです。過去と未来のエピソードが常に相互補完されていく物語の中では、初見時には思ってもみない視点が加わっていくからで

          全話見てからのスティーブン・ユニバース(番外編)「もう一つの地球」("an alternate Earth")としてのSU

          全話見てからのスティーブン・ユニバース#6「Cat Fingers」#13「So Many Birthdays」

          2020年3月27日、アメリカでスティーブン・ユニバースが完結しました。 それから、ひと月が経つものの、私の心は整理がついていません。 『Steven Universe』『Steven Universe:The Movie』『Steven Universe Future』全てを見終わった今(日本未放送分は北米iTunes等でリージョンフリーの配信をしています)、心の整理をするため、全話見終わってからの視点で、いくつかのエピソードで気づいたことを書いていこうと思います。 -

          全話見てからのスティーブン・ユニバース#6「Cat Fingers」#13「So Many Birthdays」

          全話見てからのスティーブン・ユニバース#1「Gem Glow」

          2020年3月27日、アメリカでスティーブン・ユニバースが完結しました。 それから、ひと月が経つものの、私の心は整理がついていません。 私はスティーブン・ユニバースの感想を見るのが好きです。色んな方の初見時の感想を見るたびに、自分もこのときこう思っていたな、と体験を振り返ることができます。そしてそれ以上に、エピソードをある程度見終わってから見直した際の感想も好きです。過去と未来のエピソードが常に相互補完されていく物語の中では、初見時には思ってもみない視点が加わっていくからで

          全話見てからのスティーブン・ユニバース#1「Gem Glow」