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私の本棚が「郷土玩具」で埋まってしまった

趣味で、郷土玩具を集めています。きっかけは、夫が『BRUTAS』の連載「みやげもんコレクション」を読んで、郷土玩具に興味を持ったことでした。出張から戻るたび、ひとつまたひとつと、夫のかばんから、郷土玩具が出てくる日々。本棚がみるみるうちに埋まっていきました。

全体2

ひな

スケボーだるま3

はじめこそ「ムダ遣いをして」と文句の一つも言いたい気分でしたが、本をしまうついでに、ふとダルマと目が合ったとき、

「このダルマのヒゲ、剃り残し?」とか

今町だるま

「この招き猫、タコに首絞められているけど大丈夫?」とか

猫たこ

細部が気になりだし、うっかり、すっかり、はまってしまいました。

郷土玩具には、伝統や歴史など、さまざまなストーリーがあります。手仕事がゆえ、ひとつとして同じものがないところも魅力です。だから私は、工房か店で買うと決めています。好きな子を選ぶためです。

こちらは、明治時代から続く越谷ダルマ・大里張り子の工房「中村商店」です。現在は、4代目が奥様と一緒にダルマや福助等を作っていらっしゃいます。おじゃました時には、ダルマの作業工程についてお話を伺うことができました。

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というわけで「ダルマの作り方」

①木型に張子紙を貼る。

イチョウやハンノキでつくった木型に張子紙を貼って、ダルマの生地を作ります。昭和の時代は、沸かしたばかりのお風呂につけて、柔らかくしてから木型に貼りつけたそうです。こちらは初代が彫った木型です。

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②張子紙の上に、和紙を貼り重ねる。
和紙は、丈夫でコシのある江戸時代から明治時代までのものが最適。貼り終わったら、天日で2~3日乾燥させます。明治時代の教科書などを破って貼るそうです・・・これ自体が貴重なのでは?

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③型抜きと目張り
乾いたらダルマの背を割って木型を取り出し、切れ目はニカワではり合わせます。ニカワは、魚など動物の骨や皮を煮てコラーゲンを取り出して固めたものです。
ただし、最近ではこのような手間のかかる工程をふまず、真空成型の生地作りが多いそう。紙を溶かした水槽にダルマの型を入れて、コンプレッサーで水分を吸いだし、固まったら天日で乾かせば完成します。

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④底を取りつける。
泥の円盤を底に貼りつけて、おもりにします。ダルマは七転び八起きですからココ重要。これでダルマの形づくりは終了です。次は色塗りです。

⑤胡粉(カキの貝殻を干してから焼き、粉末にしたもの)を塗って下地にし、色を塗る。
胡粉で白くすることで、後から塗る色が鮮やかに出ます。ちなみに、空気が乾燥する冬が、ダルマづくりのベストシーズン。すぐに乾くし、色もよく出ます。

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塗り終わったら、弁慶(針山のような藁のたば)に刺して乾かします。チュッパチャプス状態。

弁慶

⑥筆で表情を描く。
最後に筆で表情を描き、命を吹き込みます。奥様(お話好きで、笑顔がかわいい)は「お父さんが顔を描くときは、ケンカしないの。気持ちが筆にのっちゃうから」と教えてくれました。


工房の片隅にあるショーケースは、「おかめ」でいっぱい。一見同じ顔のように見えて、よく見ると全然違う顔をしています。そして、なんだかママさんコーラスっぽい。

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目と目の間隔や、瞳の大きさ、口の開き具合。ちょっとしたことで別人になります。

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時節柄、なかなか気軽にうかがえないのが苦しいところですが、工房で買うと、作り手の方から貴重なお話をうかがえ、とても楽しいです。スキを直に伝えられることにも、勝手に意味を見出しています。いいものを作る人は、きちんと褒められるべきだと思うからです。

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私は日本各地の郷土玩具を集めているのですが、郷土玩具なら何でもいい、というわけではありません。好みの「顔」というものがあります。「かわいい」「おもしろい」「なんかヘン」なものが好きです。好みのタイプに出会うと「いい顔してる」と、にやにやしてしまいます。

ちなみに今の推しは、香川県高松市の高松張り子「よねずだるま」です。何かを我慢している顔が好みです。

もともと人形作りが盛んだった高松市の鍛治屋町。江戸時代、粘土や木の型に和紙を張り重ねる製法が伝わり、高松張り子は生まれました。

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「よねず」は「夜、寝ず」。
寝転ばないことから、高松では起き上がりだるまを「よねず」と呼んだそうです。寝ずの番で守ってくれるだるまさんは、眉間にしわ寄せ、歯を食いしばっています。もう寝た方がいいと思う。

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新しい郷土玩具を手に入れるたびに思うのは「何十年、何百年という歴史を持つ郷土玩具が、なぜこんなにモダンなのか」ということです。きっと「良いデザインは不変」ということなのでしょう。そうでなきゃ、江戸時代から形を変えない郷土玩具が、令和の私の財布の紐を緩ませ「欲しい!」と叫ばせるわけがない。

今年も、にやにやする出会いがたくさんありますように。そして、おこづかいが尽きませんように。

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※「書いたnoteをお互いに持ち寄り、読み合うnote交流会」に参加しました。自分の記事を読んでもらえ、感想まで頂けるという、夢のようなイベントです。
この記事は、頂いたアドバイスをもとにnote記事「わたしの郷土玩具のえらび方」を書き直したものです(皆さん、敏腕編集者並みの的確なアドバイスばかり!)。note編集部ならびに参加者の皆さま、ありがとうございました。


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