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おばさんと電車と死体【リレー小説/⑦】(スズムラ様の続きです)

秋様がリレー小説を募集しています。

闇夜のカラス様発信のお話です。
……あれ? みんなバトン取らないの? 
取らないならひよこがバトンをこっそり転がしておきます。


「島に到着するよ!」

おばさんのひときわ大きい声に
ビクリと体が反応した。

状況を理解できないまま
私はもうすぐ故郷に帰れるみたい。

車内であった事には
忘れてしまおうと固く決意した。

 足をバタつかせながら島を眺めるおばさんの後頭部と、テリーヌを食べ終わりチーズを口に運ぶ男の驚きの吸引力を交互に眺めながら、ぼくはただ茫然と立っていた。

 ふと視線を感じたような気がして周囲を見回す。だが誰もいない。たった一両の小さな車両の中には、隠れるような場所も無い。あれか。この会社の管理者的な人が見ているのか。だとしたら、エラー起きてますよ。
 ぼくはその場でゆっくりと回りながら、両手を大きく振る。アナログ世界だったら車両の天井の隅の方に監視カメラがあるんだろうけど、ドリームダイブだから、どこに手を振ったらいいのかが分からない。
 二週目に突入したところで不審そうに見つめる男と目が合う。皿は空っぽだ。

 車両は一度大きく揺れ、止まる。
「ついたわよ!私のリゾートビーチに!」
「おお、俺の理想の島だ!」
 二人は我先にと車両を飛び出した。僕が望んだのはかわいい女の子との電車デートだ。座席に座ったまま発車を待とうと思ったが、リゾートビーチも少し気になる。
 二人に遅れてぼくも電車を降りた。

 小さな駅構内で、いつの間に仲良くなったのか、二人は手をつなぎ踊っていた。僕は二人を避け遠回りをしてビーチへ降り立った。
 そこは遠浅の白浜ときらきらと輝く青い水面。そして白砂に打ち上げられたように、大量に転がっている男性の身体。全員似たような中肉中背。ぼくは恐る恐る顔をのぞき込む。ぼくの顔だった。

 このダイブで何回目かの悲鳴を上げる。転がっているのは全員ぼく。みんな生気のない顔をしていた。
「やっぱり君、モブじゃん」
 振り向くと肩を抱き合った二人がぼくを指さしていた。
「違います!ぼくが客で、あなたたちみんなが僕の夢の中の人なんです!」
 二人は肩をすくめ、やれやれという顔で見つめ合っている。どんだけ仲が良いんだ。

「ああ本当、どれだけ沸いてくれば気が済むんだよ」
 すぐ目の前からひどくダルそうな声がした。男性がいた。中肉中背の、よく鏡の中で見る死んだ魚の目をしたぼくだ。目の前のぼくは、真っ赤に染まったサバイバルナイフを持っていた。


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