会場の明かりがつくと、自然と拍手が収まった。15分間の休憩を知らせるアナウンスが流れる。

「ちょっとトイレ行ってくるね」

　わたしは彼に声をかけると、会場の外へ向かう流れに従った。トイレの表示を見つけると、人の間を縫うように進む。

　トイレは廊下までずらりと並んでいた。15分では間に合いそうに無い。もう少し遠くのトイレへ行けば人も少ないだろう。

　駆け足で廊下を進む。が、こちらも行列。最後尾に並びながら、そわそわと腕時計を確認する。あと11分。出かける前にコーヒーなんて飲まなければよかった。

　こっちも並んでるわ、という声が後ろから聞こえた。

　わたしの後ろに並んだ年配の3人組は、向かい側の男子トイレに目をやると、「今日だけオトコ～」と笑いながら入っていく。

　あと10分。背に腹は代えられない。

「き、きょうだけ、お、とこぉ……」

　呪文を唱えながら入ると、小便器に向かった男子・男子・男子が一斉に振り向く。

　個室は3つ。「今日だけ男子」で満室だった。

（４１０字）

前回に引き続き、たらはかに（田原にか）様の企画に乗っかっています、のパート2。

今回のテーマは「男子」「宝石」ですが、裏テーマは「男子・男子・男子」。

表テーマがいまいち綺麗な話じゃなかったので、裏こそは！　と臨んだのに下ネタ……。おかしいな。。。