偏見と劇場

海外に住んでいると、「ただのなんでもない自分」なのに自分のすることが日本人やアジア人のステレオタイプと取られないか、自分のせいで日本人やアジア人へ悪いイメージをつけることにならないかといつも気にして暮らしている。

ドイツの都市に住んで幸せだと思うことの一つは音楽や芸術が日常にあることだ。立派な音楽ホールや劇場で一流の演奏やバレエやオペラをシーズン中は毎日でも楽しむことができる。
学生チケットは10ユーロ。私も大抵安い当日券を買う。しかもそのチケットには往復の交通費も含まれている。チケットを見せることで電車やバスに乗れるのだ。

チケットを受付で見せて階段をいくつもいくつも登る。上へ行くほど階段は簡素になる。その辺りには学生や私のような安いチケットでの常連客がカジュアルな服装で来ている。人気の演目ならそのあたりの席もいっぱいだ。下の方を覗き込むと舞台に近い席には着飾った客たちが優雅に座っている。

天井桟敷の我々は奥の席の客が来るたびに立ち上がりスペースを空けて通らせてあげる。それがなんども何度も繰り返される、開演まで。

最近公演中に気になるのはスマートフォンの灯だ。公演中に携帯をオンにしている人が後ろからちらほら見えるのだ。あちこちで電気のついた画面が見える。真っ暗な劇場の中でそこだけ明るい。後ろの席からだとよくわかる。見ないでおこうとしてもどうしても目に入ってきてしまう。動画を撮ってるのだろうか?写真だろうか?もしくは彼女に連れられてやってきたもののバレエに飽きて他の動画を見ているのだろうかと。
そしてそれをしているのは皆東洋人の若者なのだ。
中国人か韓国人か日本人か...何人なのかはわからない。憶測で国籍を書くのは偏見になるのでやめておきたいと思う。彼らがドイツで学ぶ学生なのか旅行者なのかもわからない。
ただそういうマナー違反をしているのが今まで見たところ皆若い東洋人なのだ。
時代の違いも感じる。彼らはなんて堂々としているのだろう。
周りの様子を常に伺い、ルール破りやマナー違反をしないように悪い印象を与えないようにとビクビク暮らしてきた自分とは大きな違いだ。
彼らは自分や東洋人がヨーロッパでどう見られるかなんて気にしていない。ルールは自分といった強さを感じる。

これをオンにするかオフのままにしておくかだいぶ悩みました。おこがましいのではないかと。でも決めました。 書くことが何より好きでそれを仕事にしたいからその第一歩として。よろしくお願いします。