ひつじ

海外在住。多文化、様々な価値観の中で暮らしていると何が常識なのか、自分の信じることとは…

ひつじ

海外在住。多文化、様々な価値観の中で暮らしていると何が常識なのか、自分の信じることとは何なのか見失いそうになる。立ち止まって自分の気持ちに向き合うためにも書くことは大事。

最近の記事

空港で

あるとき「これは大阪行きのゲートですか?」と英国人のお爺さんにたずねられた。「ええそうですよ」と答える。「ああよかった。空港の職員に間違ったゲートを教えられて空港の端まで行ってやっと戻ってきたんですよ。」 「それはひどい」とそれから立ち話を少しした。「ドイツには何年住んでいるの?」という質問に私が「もう10年も暮らしているのにドイツ語は難しくてなかなか上手くならない」と話すと「私なんて日本に20年以上住んでいるけど日本語が話せずお恥ずかしい」という。 「何がきかっけで日本に来

    • 空港で

      空港で一人でいると人に話しかけられることが多い。 気軽に話しかけてくるのは大抵アメリカ人だ。デューティフリーショップで時間つぶしにカバンを見てると「あなたそれ素敵よ。色がいいわ。買うべきよ。」と声をかけられる。 南ドイツの保守的な地域に住んでいると見知らぬ人にフレンドリーにされることなど久しぶりなので内心驚く自分がいる。そして「ああアメリカではそうだったわ」と懐かしくなり、驚いている自分は表には出さず顔では何気なく「ありがとう。うん私も気に入ってるの。もうちょっと考えてみる」

      • 偏見と劇場

        海外に住んでいると、「ただのなんでもない自分」なのに自分のすることが日本人やアジア人のステレオタイプと取られないか、自分のせいで日本人やアジア人へ悪いイメージをつけることにならないかといつも気にして暮らしている。 ドイツの都市に住んで幸せだと思うことの一つは音楽や芸術が日常にあることだ。立派な音楽ホールや劇場で一流の演奏やバレエやオペラをシーズン中は毎日でも楽しむことができる。 学生チケットは10ユーロ。私も大抵安い当日券を買う。しかもそのチケットには往復の交通費も含まれて

        • ドイツのサービス

          渡独してきた人が最初にぶつかる壁は店員やウエイトレス、医院の受付などの横柄な態度ではないだろうか。「お客様は神様です」なんて言葉のある国から来たら余計にショックが大きい。 店員が何か作業しているところに声をかけたら無視。もしかして聞こえなかったかと思って再度声をかけようものならジロッと睨まれて「待って」と冷たく言われる。「人が用事しているときに声をかけるとは。それくらいのマナーも知らないのかこの外国人は」とその目が語っているような気がする。 最近出会った日本人は店員の態度

        空港で

          数分で電気の消えるアパート3

           アパートの入り口の横に長年貼り付けられている色褪せた住人への注意書きには「Kehrwoche ケアヴォッへ」についての記述もあった。 この聞きなれない言葉は「住民が交代で集合住宅の公共部分を掃除すること」を意味する南西ドイツ特有の習慣である。 私の住むアパートには1階から4階まで各階に3軒の住居があり、最上階の5階には2軒。つまり合計14軒の間に「Kehrwoche」つまり掃除当番が1週間ずつまわって来た。「Kehrwoche」と書かれた札とともに。    ドイツの人の掃除

          数分で電気の消えるアパート3

          数分で電気の消えるアパート2

          Ruhezeit(静かに過ごす時間帯) ドイツにやってきたばかりの時、アパートの共通の入り口のすぐ左にいくつか色あせた張り紙が貼ってあるのに気づいた。 アパートの規則であると気づき、写真にとって家に持ち帰り、ドイツ語の辞書を片手に「解読」した。 そこには渡独前から聞いていた「ドイツで暮らすためのルール」が事細かく書かれていた。まず目についたのはRuhezeitという言葉である。 ドイツにはRuhezeit「静かに過ごさなければならない時間帯」がある。 平日は夜の22時か

          数分で電気の消えるアパート2

          子連れ出勤 in ドイツ

          ここ南ドイツでは子連れ出勤はよく見かける。 とにかく学校の休みが多い。 2月にカーニバル休暇1週間。4月にはイースターで2週間、5月にはまたキリスト教関係の休みで2週間...そのうち夏休みになる。 旅行に行ったり家族で過ごす時間ももちろん1、2週間とるが学校の休みはそれ以上に長い。 親は仕事をそれほど休むわけにはいかないので、子供だけのキャンプや乗馬教室のような様々なアクティビティに何ヶ月も前から申し込む。あとはオマとオパつまり祖父母に子供を預ける。 それでも止むなくどこにも

          子連れ出勤 in ドイツ

          朝6時前の出勤

          一月の早朝6時前の南西ドイツはまだ真っ暗だ。 その時間に隣町の病院まで森を抜けていく。 ドイツの国道の多くがそうであるように街灯は一つもなく真っ暗だ。 その時間にもう通勤に向かう車は走り出している。 時折来る対向車のためにハイビームにしておくこともできない。 真っ暗な中を時速70キロで走る。 突然ラウンドアバウトに差しかかる。 行き先の看板さえよく見えない。 瞳の色の薄いここの住人たちには見えているのだろうか? 真っ暗闇の中数百メーター先に路肩に見える小さな灯り。 近づいて段

          朝6時前の出勤

          数分で電気の消えるアパート1

          ドイツに来てから10年以上同じアパートに住んでいる。 簡素でエレベーターもないアパートの3階だ。 3階というのは日本でいう1階をE階(Erdgeschos) というドイツ式に数えた場合であり、日本式に言えば4階ということになる。 地下には各戸に一つずつのケラー(物置)があり、さらにその下がガレージのある階だ。 ガレージのある地下2階はE階にある入り口から階段を降り、各戸のケラーの入り口の並ぶ長い廊下を通り抜けてさらにもう一回階段を降りたところにある。 ケラーは一軒につき幅1m

          数分で電気の消えるアパート1

          「だから日本は」と言える怖いもの知らず

          大学生の頃から、「アメリカではね」とか「だから日本人は」とか「日本の教育は」とか平気で海外礼賛、日本批判を何かと言えば繰り広げる人たちがいた。 語学留学などで数ヶ月から1年くらい留学したことがあったり、または外国人の恋人がいたりした人たち。 その人たちと比べて帰国子女は海外に住んでいた期間は何年にも渡るほど長いのに、外国のことを一切言わないなあと思っていた。 今になってその理由がわかる。 日本批判や海外礼賛を堂々と口にする人たちは「怖いもの知らず」だ。自分の一言が相手にどんな

          「だから日本は」と言える怖いもの知らず

          クジラと羊

          海外に住んでいると捕鯨問題はずっと付いてくる。 会話の合間に突然「日本人ってクジラを食べるの?」と聞かれることがある。そんな時どう答えるか用意しておいたほうがいい。 「日本人はキリスト教徒でもないのにクリスマスをどうして祝うの?」と聞かれた時の答えを用意しておいたほうがいいのと同様に。 学校の授業でも繰り返し繰り返し捕鯨問題が出てくる。その度にクラスのみんなが日本人の生徒を見る。学校で習った生徒たちは「クジラを食べる日本人」への怒りを持ち続ける。 息子が小学生の時も60代

          クジラと羊

          移民が入ってきたら

          入管法が改正され、大勢の移民が入ってきて多国籍多文化社会になる。そうすればもちろん様々な不都合や問題が生じるだろう。 そうすれば「普通」の概念が変わる。 でも、それで救われる人もいるかもしれない。 知り合いの海外からの帰国者は皆その事実を近所や子供の学校の保護者の中でひた隠しにしている。 なぜか? 叩かれるから。 長い外国生活でいくらみんなと同じようにしても違うところが出てしまう。それを「あの人やっぱり変だよね」と「こんなこと言ってたよ。」と陰で噂する。 それを子供も聞いて

          移民が入ってきたら

          noteで良かったこと 3

          Facebookを去ったのは若い世代からだった。彼らはInstagramや他のツールを見つけさっさと去って行った。アカウントだけ残して。 そりゃそうだ。親や親の友達から「友達」申請が届き、誕生日に親世代からもお祝いメッセージが届くようにもなり一々コメントされるようになると本当の自分なんて載せられない。 私がFacebookが面倒くさくなった理由の一つは、自分が「友達」に取ったアクションが他の人にもシェアされてしまうこと。見ず知らずの「友達の友達」や別の「友達」に書いたコメン

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          Facebookを始めてから数年経ち, 同窓生、子供の学校の保護者、元同僚が「友達」に増え、日本人が主流になってきたとき私も投稿を英語から日本語に切り替えた。同時に日本語のわからない人たちには流れないようにした。そうしているうちに日本人以外の「友達」とはだんだん疎遠になっていった。 ドイツ語クラスの多国籍のクラスメイトたちとはクラスが終わった後は滅多に連絡を取らなくなった。まずドイツ語の上手さを基準にできていたクラスの中のヒエラルキーがクラス終了とともに崩れたことによりぎこ

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          noteで良かったこと 1

          noteで良かったこと。それはまだない。 FacebookとInstagramをやめてnoteだけを書くことにしたのは今年の夏。 Facebookを始めたのはリーマンショックのすぐ後だったからもう10年も前になる。その頃私はドイツで様々な国籍の20人余りの人たちとドイツ語初心者用クラスで席を並べていた。 クラスメイトはブルガリア、コロンビア、ブラジル、トルコ、イラク、イタリア、スイス、フランス...。全員初心者なのに共通語はドイツ語。休み時間には拙い言葉を駆使してジョークを

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          Volkshochschule

          -移民としてドイツで暮らして 1- ドイツの町にはVolkshochschule(フォルクスホッホシューレ=市民大学)と呼ばれるカルチャーセンターのような施設がある。大きな都市にも郊外の小さな町や村にも。 殆ど残業をしない彼らは仕事が終わり帰宅した後...そして子供を7時に寝かしつけた後、もう一つの社会を持っている。スポーツや音楽や手芸など趣味の世界である。 たまに日本のドラマを見ると郷愁を感じる。 一日中机をつき合わせて同じ課で仕事をしている同僚や上司とランチも一緒に出

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