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ポプリの葉


会うのは夜が多くて。
夜って言っても本当に夜中。深夜。
真っ暗でどこもお店なんかやってなくて、お家達の明かりもついてない。

迎えに来てくれた車に乗って、2人でドライブ。
知らない街に2人で閉じ込められたみたいで。
ずーっと2人だけの時間が続いてるみたいで。
このままずっと続いて、止まってほしい。

何度思ったことか分からない。


別れたはずの2人が遠慮がちに手を繋いで。
数分後には付き合ってた頃に元通りの雰囲気。


「やっぱり手小さいな」


懐かしくて、でも前よりずっと寂しくて、泣きたくなんかないから、楽しい時間にしたくてずっと笑ってて、そうしたら本当に楽しくて。

私の愚痴も、私の鼻歌も、ずっと静かに聞いてくれて。
相槌打ってくれり、少し笑った横顔だったり。
あの時と何も変わらない2人の空気感。
幸せで幸せで。そりゃあもう、とっても幸せで。

たぶんこれは夢だな〜〜〜〜幻想だな〜〜〜。

抱きしめながら頭を撫でてくれて。
私の手を握り返してくれて。

なんで私この人の手離したんだろ。
好きだったんだけどな。
好きを貰えなかったんだよな。



好きって言ったら
知ってるって言われたい訳でもなくて、
好き?って聞いたら
なんで?って聞かれたい訳でもなくて、


好きって言ったら、俺も好きって。
好き?って聞いたら、好きだよって。


私馬鹿みたいだよなって100回は思った。

好きって思っちゃダメ?言っちゃダメ?
好きって聞きたいのダメだった?
寂しいって、会いたいって。
言わなければよかった?


お家達の明かりがポツポツついてきて、空が晴れてきて、隠れるみたいに人気のない所に避難して。

身体に触れられて。

違う、違う違う違う。
全然幸せじゃない、何これ。
嫌だ。好きでもないでしょ私の事。

私は、好きじゃない。誰?この人。
なんで?あ、そっか、私がいけなかったんだ。
自分勝手に呼び出したりして。
会いたいって。
そういう意味じゃなかったんだけどな。

くだらない話ができたらそれで良かったの。
ラーメンの話とか、スノボの話とか。
くだらなくない話がしたかった。
何時間でも喋り合うあの時間が大好きだった。

でももう、二度と伝わらない。
私の好きな気持ちも、会いたい気持ちも。
どうせもう、伝わらない。

じゃあ、もう、いいか。いっか、これで。

流されて、流されて、流されて。
馬鹿だよ本当に。分かってるのに馬鹿だ。


せめてもの弱い抵抗をしたって無意味。
無理矢理笑って、傷ついてないフリ。
演技をして、気持ちのいいフリ。

泣きたかった。
好きって言いたかった。

何にもできなかった。
あげたくなかった。
込み上げそうな涙も好きも。
全部全部あげてたけど、もうあげたくなかった。


そのままの意味で、会えたら、本当に幸せ。
服を剥がさなくても、好きと言えたら、とても幸せ。


「寂しい」は、会いたいだったし。
「会いたい」は、好きだったし。
「好きだよ」は、さよならだった。
なんにも気付いてなくて、呑気で羨ましい。


そのくせ、もう一度なんて願う私もおかしいよね。
ずっと忘れられない、いい加減忘れたい。


ひとつずつ ひとつずつ
蘇る思い出がフワリ落ちてゆく
そうだった そうでした
こんなにも好きだったなぁ

♪ ポプリの葉 / あいみょん


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