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お客様もサービス品質の一部

私が鉄道会社で車掌をやっていたころ、
車内で「残念なお客様」が車内環境を乱す
ことが度々ありました。

 車内にゴミを放置する
 ヘッドフォンからの音漏れが半端ない
 足を投げ出しての居眠り
 車内でのケンカ


どこまでがOKか、の線引きは難しいと
言われますが、私はシンプルだと考えていました。


「サービスはお客様が作る」

良い車内環境というものは、鉄道会社がハチマキしめて奮闘して出来るものではなく、車内に居合わせた見知らぬ人同士が「良い客があろうと振る舞う」ことでしか作れないものです。

啓蒙は大切です。
でも啓蒙が法律ではない以上、

「車内環境って大事だよね」

という乗客同士の共通認識が必要なのです。
割と当たり前のことだと思います。

私は、会社の規定云々とは関係なく、
「他のお客様が不快に感じる」行為を断じて
許しませんでした。

ロマンスカーの展望席で、足を前のテーブルに
土足のまま投げ出している乗客には

「その足、止めて下さい!」とキツい口調で注意し、ヘッドフォンから音がシャカシャカ漏れ過ぎている乗客には、車内巡回中にヘッドフォンをはずし、

「お・と・が・もれすぎていますよ」

と耳元で大声で注意しました。

周囲の乗客に

「当社はこう言った行為に、見て見ぬ振りは
 しませんからね」

という、アピールも込めてです。


これは旅行会社のツアーにも当てはまります。

不特定の方が集まる「ツアー」という形態に
置いては、それぞれの参加者が

「この旅をよりよいものにするには、自分の
 振る舞いも重要なことだ」

というごく当たり前のことを「共通認識」にする必要があります。

旅行会社はパンフレットにいちいちそんな
ことを書きませんが、

 自分勝手な振る舞い
 約束やルールを守らない
 添乗員にクレームをつける

などは、調和を乱す行為です。

多くの「善良なる参加者」が、ごく一部の
勝手な主張ばかりする参加者のために
迷惑するという状況だけは、避けなければなりません。


以前、
京都のあるレストランで夕食を
お客様と食べ、至福の時間を過ごした時のこと。

それはもう「至福」としかいいようのない
時間だったのですが、ほんとうにひとつだけ
残念だったのが、

「居合わせた別のお客の品のない大声の会話」

だったのです。

私たちはカウンター席に座ってオーナーシェフの立ち居振る舞いを見ながら、会話を楽しみながら、私たちなりに「良い客」であろうと努力しました。

 
おいしい料理を「美味しい」といって食べる
 
セレクトして下さった素敵なワインをきちんと評価する

当たり前のことです。

ところが奥にひとつだけある4人がけの半個室に50代くらいのおじさん2名と、品のない女性が1名、食事をしていたのですが、
この3人、声が大きく、会話の内容がこちらに
まる聴こえなのです。

会話の内容からすると「教育関係者」とも
思えるのですが、笑いにも品がなく、とにかく
声が「うるさい」。

出された食事にも関心を示さず、ぎゃあぎゃあと騒いでいる風にしか見えませんでした。

私は、小さなお店は「カウンター」だけで
やるのがベストなんだろうな、と思いました。

この手の客はカウンターは居心地が悪いので
一度、評判を聞きつけて来店しても、
次から来なくなります。

このお店も、
半個室のようなものを作った主旨は、
お祝いの席や、家族水入らずの時間を
過ごしたい人のためなのです。

サービスの品質を上げるには、

「顧客の質も、サービスの品質に重大な
 影響を与えるパーツ」

であることを、
まずは経営者がきちんと理解して、
それを、あらゆる形で、顧客にも
しっかりと伝えていかなければなりません。

ここを怠ると、気が付かないうちに
サービスが崩壊していきます。

悪貨は良貨を駆逐する。

そうなる前に、踏ん張ることが必要です。

これは飲食や旅行だけではなく、
フィットネスクラブや物販、航空会社などの
公共交通機関にも言えることです。

そんなのあり得ない、と言われるかも
知れませんが、私は「行政サービス」にも
この考え方は通用すると信じています。

正直者がバカをみないサービスのしくみ
作りは、普遍的に大切です。

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