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我が家の宇宙人が地球を救うかもしれない

こんばんは。id_butterです。

少し前のことだけれど、思い出したので書いてみることにした。

以前にこんな記事を書いた。

その中で、宇宙人の特徴の一つとして、「どこまでも優しかったりして、時々切なくなる」と書いた。
こういうときに、切なくなるんだよなと思った時のことを書く。

半年前くらいのことだ。
スーパーのセルフレジでお会計をしていたとき、突然「もう、なんでこんなことすんのよ!」と叫ぶお母さんに遭遇した。
見ると、わたしたちの立っている後ろの床に、お菓子がばらまかれている。
「だから、これ買うの嫌だったのに!」と尖った声が続く。

わたしは、一瞬どうしたらいいか迷った。
まず、自分のお会計を終わらせなくてはいけない。
セルフレジは長蛇の列ができており、たくさんの視線が刺さっている。
終わったら手伝ってあげたい、けれどきっと叫んでいるお母さんはわたしが声をかけたら気まずくて余計辛いかもしれない。気を使わせるだろうな。
どうしたら、うまくやれるかなと考えながらカゴの中身をチェッカーに通し袋に詰め続けた。

すると、後ろから先ほどのお母さんの「ありがとうね」という声がする。
振り返ると、我が家の宇宙人長女地球人次女が一所懸命に床に散らばったお菓子を拾い集めていた。
そのお母さんと目が合い、こちらに「ありがとうございます」と声をかけてくる。申し訳なさそうではあったけれど、その声は、もう冷静さを取り戻し柔らかくなっていた。
ほっとして、ベビーカーのお子さんをやっと見られた。
先ほどは鋭かった周囲の視線も和らいでいるように感じた。

「まだ小さいんだから、しょうがないよ。みんなでやればすぐ終わるよ。」

そんな感じで調子よくお母さんに声をかける長女宇宙人に後光がさして見えた。
そう、なぜか彼女宇宙人はこういうときに本領を発揮する。
物事を丸くおさめるという謎の能力があるのだった。

「〇〇ちゃん、そっち」
地球人に手際よく指示を出し、監督業務にも抜かりがない。
普段あんなに頼りない宇宙人に従いせっせと働く地球人
素晴らしいチームワークだった。普段はケンカばかりなのに謎。

母がセルフレジでのお会計を終わらせる頃には、ほぼ作業が終了していた。
かくして、任務お菓子収拾を終えた宇宙人と地球人のペアは満足してセルフレジを後にする。

「娘さんに手伝っていただいて、ほんとうにありがとうございました。」
そうお母さんに声をかけられた。
なんだか泣きそうになって、返した。
「いいえ、うちもよくやりますよ。お互い様ですから気にしないでください。」

救われた気分になったのは、わたしの方だった。
かつて、何度も同じような気分を味わったことがある。
宇宙人長女地球人次女は、よそのお母さんとかつてのわたしの心を同時に救ってくれた。今日の無力だったわたしも救われた。
これは、大人で母であるわたしには到底真似できない。

長女宇宙人が2歳か3歳くらいのころのことを突然思い出した。

保育園に向かう朝、彼女宇宙人を後ろに乗せ自転車を漕いでいた。
「今日もいい天気だねぇ」と話す。
空は雲ひとつなく、晴れ渡っていた。
すると、彼女宇宙人が喋り出した。

「あれはね、ママ、わたしのおかげだよ。」
信号で振り返ったわたしの目を見て、さらに誇らしげに話を続ける。

「空を真っ黒にして雨を降らせたい悪者と、昨日の夜戦ったんだよ。」
頭にイメージが浮かんだ。
水色のペンキを持つ彼女宇宙人と真っ黒のペンキを持つ謎の誰かが空にペンキを放ち合い戦っている。
「ふぅ〜ん、ひとりで戦うの?」
「違うよ、みんなで。悪いやつらが真っ黒のやつをかけてくるから、その上から水色のをかけて、空を青にするんだよ。がんばったんだから。昨日は、勝てたんだよ。だから、今日の青空はわたしのおかげだよ。」
「そっか、ありがとう。いい天気でうれしい。」

そのころは、かわいい夢だなぁと思っていた。
でも、彼女はほんとうにわたしの心を晴れにしてくれる。
そんなときに、わたしのために生まれてきてくれた天使かもしれないとすら思う。

けれど、それは錯覚かもしれない。
今日は脱いだパンツをリビングに放置し、三回注意されたのち、怒鳴られながら「不思議だねぇ、こんなところに落ちてるなんて。」とニヤニヤとわたしの顔をみて笑っていた。
その後に、もう一枚昨日の?パンツをリビングで見つけて、ほんとうに彼女宇宙人イライラしたのが今日のわたしである。

元宇宙人であり今は地球人として生きる母の修行は続く。

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