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24時間いつでも会いに行ける、ツンデレ系酒場

「ベルリン酒場探検隊レポート」

ドイツでは日曜日にすべての店が休みとなることをご存じだろうか。飲食店は営業可能だが、一般商店・スーパー・デパートはすべて閉店している(ベルリンでは年間数日の日曜営業許可日あり)。例外的に日曜営業していた「シュペートカウフ」と呼ばれる日用品店も、ベルリンでは今後日曜の営業は不可であるとの判断が下されたところだ。

そんなサービス砂漠のドイツで、24時間いつでも行ける夢のような酒場があるという。これはベルリン酒場探検隊としては、行かねばなるまい。

24時間営業の酒場の名はzum Hecht(ツム・ヘヒト)。それではさっそく、レポートをお届けしよう。

レポート提出者:久保田由希

酒場データ

店名:zum Hecht(ツム・ヘヒト)
入りにくさ度:★★★☆☆
居心地:★★★★☆
タバコ:喫煙可
ビール:Hecht Spezial(ヘヒト・スペツィアール)0.3L 2.30€、Flensburger Pils(フレンスブルガー・ピルス)0.3L 2.90€ほか。


扉を開けると、カーテンだった

場所はSバーンCharlottenburg(シャルロッテンブルク)駅の眼の前に広がるStuttgarter Platz(シュトゥットガルター・プラッツ)のすぐそば。

24時間営業なのだから、朝っぱらから来ればあるいは入りやすかったのかもしれないが、飲む側は24時間体制というわけにもいかない。隊員たちが酒場の前に集合したのは、順当に夕方であった。

入り口の両脇に窓があるものの、暗くて中の様子はうかがえない。しかも窓枠に沿って緑色のネオンサインが光っている。やはりネオンは場末感の演出に不可欠だと、この外観を見て確信した。色はけばけばしいほどいい。

扉を開けると内側にさらに分厚いカーテンがあり、これをかき分けないと中には入れない。冬の寒さを乗り越えてるためにこうしたカーテンを扉の内側に付けている店はよくあるが、知らなければここで心が折れてしまう人もいるかもしれない。いや、人によっては、むしろ胸が高鳴る仕掛けだろうか。

ツンデレ系? 外と中とで大違い

店内は2つの部屋があった。手前は酒場の基本アイテムであるジュークボックスやゲーム機などが置かれている。われわれは、やや落ち着いている奥の部屋のテーブル席に陣取った。


どちらの部屋も、モスグリーンの壁にモノクロ写真が収まった額縁がぎっしりと飾られている。ちょっと外観のイメージと違いすぎやしないか。店内も場末感に満ちているかと思いきや、期待(?)を裏切る上品さである。

襟付きのシャツを着たお客もいるし、英会話もちらほら聞こえてくる。全体の年齢層も30〜40代ぐらいで、比較的若いといえよう。

入り口でハードルを上げておきながら、意外に外国人にも利用しやすいのではと見た。ツンデレ酒場か? ちなみに英語がどの程度OKかは、未確認である。

カワカマスの謎

(たくましいワニ?)

メニューの表紙にはワニのような生物が描かれているが、どうやらこれが店名となっているヘヒトという魚らしい。辞書によると「カワカマス」だそうだが、日本語で聞いても想像がつかない。よく見ると壁にそれらしき魚が飾られていた。1mを超えるほどの大きさだったが、あれが作りものなのか剥製だったのかは不明である。

(写真上部左端にカワカマスの尾ひれ部分が写っているのだが……)

われわれはいつもどおりにビールを頼んだが、どうやらワインも売り物らしい。やはり、場末の酒場よりは若干上品な気がしなくもない。しかし、ワインを飲んでいるお客は見当たらなかった。

ジュークボックス初体験

以上でこの酒場の1回目の探検は終了したのだが、その後隊員久保田は再びここを訪れ、ジュークボックスを初めて使用してみた。ベルリン酒場探検隊員としては、やはり一度は酒場の基本アイテムであるジュークボックスを使ってみるべきだろうと考えてのことである。

コイン投入口には「2曲50セント」と書かれているので、とりあえず50セント硬貨を投入する。

で? その後はどうすれば? と眺めていたが、機械の中央に数字の書かれたボタンがあることに気がついた。機械上部の窓から、環状に並んだCDと数字が振られた曲名リストが見える。

なるほど、このボタンでリクエスト曲の番号を入力すればいいのだな。

では……ブロンディの「ハート・オブ・グラス」にするか。隊員久保田が個人的にドイツと聞いて頭に浮かぶ曲のひとつだ。アメリカのバンドだが、ドイツでも大流行したのである。

♪アハー、メイク ミー トゥナーイト♫

しまった。間違って次の番号の「アトミック」を入れてしまった。

課題
その気があれば次回は朝っぱらに訪問。
その際には今度こそ間違いなく「ハート・オブ・グラス」を選ぶ。

ベルリンのさらなる秘境酒場の開拓と報告のために、ベルリン酒場探検隊への支援を心よりお待ち申し上げる。