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「酒場なレストラン」、営業再開である!


「ベルリン酒場探検隊レポート」
新型コロナウイルスによって、3月14日に突然酒場に営業停止の通達が出てから約2ヵ月が過ぎた。3月14日以降も次々に制限が加わり、それまでの日常はすっかり過去のものとなってしまった。
しかし厳しい制限の甲斐があってか、感染ペースは緩やかになり、街は段階的に動きはじめた。そしてついにレストランが一定の条件下で再営業可能になったのである。酒場的雰囲気に満ちた「レストラン」も再びシャッターが開いた。われわれベルリン酒場探検隊も再始動である!

レポート提出者:久保田由希

好きなものにお金を使える喜び

5月7日のことであった。隊員久保田はいつものように散歩をしていた。コロナ制限下でも、健康維持のための散歩は許されていたのである。好きな酒場の前を通るコースで、それまでは閉ざされたシャッターを見てはやりきれない気分になっていた。

ところがその日は違った。

シャッターが開いている! 

路上には大きな二つ折りの黒板ボードが置かれ、料理とビールの値段が書かれている。テイクアウトを始めたのだ! 

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(写真:ついにテイクアウトで再開だ)

考える間もなく、足は自動的に店に向いていた。入り口をふさぐような格好でテーブルを置き、店員が注文を取っている。店内には入れないがここで料理やビールを注文し、持ち帰る仕組みだった。制限下のベルリンのレストランでよく見かける方法だ。入口付近では、ヤンキー座りで持ち帰り用カップに入ったビールを飲む若者たちがいる。

ようやくここまで来た……。

思わず目頭が熱くなった。
ブレッテ(ドイツ風ハンバーグ)とドイツ風じゃがいもサラダのセットを注文し、めいっぱいチップを払って持ち帰った。

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(写真:これぞドイツ料理。ブレッテとじゃがいもサラダ)


酒場にお金を払えることが、こんなにうれしいとは。

そうだ。自分はずっと、酒場にお金を使いたかったのだ。
こういうときに、チップ文化は本当にありがたい。かなり多めに払っても、渡す方も受け取る方も抵抗がない。「こんなに多くチップを渡したら嫌味な感じがしないだろうか」と気にしたり、店側から「いやいや、そんなに受け取れません、お気持ちだけで結構です」みたいなしち面倒なやり取りがない。あるのは互いに「ありがとう」の気持ちだろう。

本来ならばテイクアウトにチップはそれほど必要ないが、いまは違う。酒場はこれまでずっと閉店させられて、先の見通しは立たない。好きな酒場に生き残ってほしいから、単に買うだけでなく、チップという形で応援したいのだ。それがとてもうれしい。好きなもの・ことにお金を使えるというのは、こんなに幸せなことだったのかと心の底から思った

料理主体の「酒場なレストラン」なら店内飲食も可能に

われわれベルリン酒場探検隊がふだん「酒場」と呼んでいる店には、じつは種類がある。一つは、アルコール飲料がおもな商品で(ノンアルドリンクもある)食事の提供はないか、あったとしてもソーセージなどの簡単なものだ。喫煙酒場ならば、食事は提供できない。

もう一つは、きちんと調理した料理を出す店だ。レストランとも呼べるが、酒場的雰囲気があり、カウンターでビールだけ飲んでいくお客もいる(酒場的雰囲気については、こちらの過去記事を参照されたい→ベルリン酒場インテリア考)。 

テイクアウトを始めた近所の「酒場」は後者、つまり「酒場なレストラン」である。「レストラン」はコロナによる制限で店内飲食は禁じられていたが、テイクアウトは可能であった。そして、5月15日から一定の条件のもと店内飲食による営業再開が許された。

われわれベルリン酒場探検隊は「酒場なレストラン」を再び訪れ、祝杯をあげた。2ヵ月ぶりの店でのビールである。長かった……。本来ならば酒場感あふれる店内で飲食をしたかったが(それは可能だが)、新型コロナウイルスへの用心と暖かい季節への喜びとでテラス席での飲食と相成った。

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(写真:テイクアウト開始時にはなかったテラス席が復活した)

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(写真:テラス席で探検隊としての再始動)

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(写真:この店は本来ならば酒場的調度が素晴らしいので店内飲食をしたい。50年代のスロットマシーンは現在でも5セント硬貨で遊べる)

ちなみに、飲食後に氏名や住所を記入する用紙を渡された。政府の意向で(義務ではないという)、後日新型コロナウイルス感染者が発生した場合にほかのお客に連絡が取れるようにするためという。個人情報には敏感な人が多いドイツだが、連絡がつく状態にしておくのは自分のためとも思い、記入をした。

「マジ酒場」の営業再開を心より待つ

こうして再始動したベルリン酒場探検隊であるが、真に待ちわびているのはアルコール飲料がメインの「マジ酒場」(勝手に命名)の営業再開である。こちらはまだ閉店を強いられている。
隊員久保田の好きな酒場は商品券を販売していたので、応援の意味を込めて購入した。募金のつもりなので、実際に商品券を使うかどうかは重要でない。重要なのは、再び「マジ酒場」が営業できることだ。

「マジ酒場」のシャッターが開く日を、今日も待ち望んでいる。

ベルリンのさらなる秘境酒場の開拓と報告のために、ベルリン酒場探検隊への支援を心よりお待ち申し上げる。