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世界のどっかで勝手に幸あれ
──今年はどんな年だった?
次々と光に沈んでいく水鳥たちに、細めた目が奪われる。カモの群れは列をなして夕陽の前を横切って、白鳥は浅瀬に浮かぶ岩の上で優雅に羽を震わせている。この光景をどうにかして明日にも残せないかと思案して、明日またここにくればじゃないかと自嘲する。それでもやっぱり、この光は今日だけのものな気がして、携帯のシャッターを切るけれど、スクリーンにはこの目で残したいと思ったもの以外が写
自分らしさは更新できる
サヤカはいつも遅れてやってくる。都心から少し離れた駅前は家路を急ぐ人たちの雑踏で混み合っている。サヤカが遅れてくるのはみんな知っているので集合時間には来ない。みんな集合時間より遅くて、サヤカよりも早い。店は予約してあるけど、みんなには嘘の時間を伝えている。これも、サヤカ対策。だいたい遅くても20分以内にはやってくる。慣れたものだ。
「ごめんごめん」
と、サヤカがやってきて「おせえよ」なんて言って
人様に迷惑をかけるな
わたしの不満と孤独は、遠くにいる姉がしたためた便箋で真ん中が膨張している七インチサイズの缶々が物語っている。たいていは、送った時点で満足している。手紙なんて、すぐには返ってこないから。
今よりも子どもだった頃、「人様に迷惑をかけるな」と父はよく言った。公園の砂場で遊んでいて、友達のお人形を砂だらけにしたとき。合唱コンクール直前に声が出なくなったとき。好きだった先輩につられて万引きしたとき。ほか
バイバイを言うとちょっと死ぬ
メガネかけたことある? ないなら想像して。
0時になって、外に出るの。あたりは真っ暗。でもきみが想像する田舎よりも、1つ都会かな。コンビニの駐車場は、フットサルコートよりも広いけど家からは徒歩5分。駅は無人じゃないけど、30分に1本。
高校のときから着ているジャージは、お腹周りが苦しいけどこれしかない。メガネをかけながら走るとね、視界に入る世界はまるでVRみたいに思える。少ない外灯は私のため