32歳 浅海咲

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32歳 浅海咲

はじめまして、こんにちは。
カフェのオーナーをやっております。浅海です。いや、緊張しますね。こういう機会って滅多にないので。というか、こういうことをやらさせてもらえるようになったんだなと思うと感慨深いです。始めたばっかりの頃は何も先が見えなくて、1日を切り抜けていくだけで精一杯だったので。カフェは出してから3年が経ったのかな?その前は飲食店でバイトしたり、大手の製菓会社で働いてたりしてたんですけど、ちょっと大手の考え方というか、トップダウンで大量生産的な考え方と自分のやりたいことが乖離して。この松陰神社前にお店を出したのもたまたま家に近かったのもありますけど、友達が物件を紹介してくれたっていうのもあって。本当に今までずっと何かしらの「縁」で自分は生きていけてるって思います。製菓会社をやめるときも先輩が応援してくれて、独立した人を紹介してくれたりして本当に助かりましたし。でも、ほんとは独立するのはもうちょっと他で修行してからしようと思ってたんです。でも親友に「咲が準備万端に何かを整えて成功した記憶が一個もない」って言われて「確かに(笑)」と。それでもう出しちゃおうと。自信なんてなかったですよ、完全に勢いで。だからお店のメニューも曖昧だったし、コンセプトもそう。初めの1年くらいは全然お客さんがこなくて試行錯誤でした。お店の借金返せなくて死ぬんじゃないかって思いました。でも、そこから考え方を変えてSNSを意識したフォトジェニックなメニューを一つだしたら案の定SNSでバズってお客さんが来てくれるようになって。本当はそういう流行ど真ん中のメニューは出すつもりなかったんですけど、生きるので精一杯でトガってる場合じゃないなと。今ではそういうメニューは極力減らして、生活の一部みたいなメニューを中心に出してます。なんかやり方がバンドマンみたいですけどね。でも、そういう考えができるようになったのも、本当に昔バンドやってたおかげもあると思います。そうそう。学生時代はバンドをやってて、インディーズでCDも出したことあるんです。まあ、1枚出して解散したんですけど。でも、自分にはそれに似た経験がいくつもあるから、今も正直永遠にカフェを続けられるかどうかはわかりません。バンドの前はイラストレーターになりたくて、絵を描きまくってて、高校の時はカメラマンになりたくて20万くらいするカメラをバイトして買ったり、中学の時は小説家になりたくて応募しまくってました。中学の頃のあの自意識モンスターだった自分が今の自分を見たら目指す場所が変わりすぎて驚くと思いますよ。でもなんというか、今の自分があるのはそういう自分がいたから、なんですよね。今やってるカフェに本当に来て欲しいのはあの頃の自分なんです。東京にカフェは無限にありますけど、ライバルは他店じゃなくて、あの頃の自分。あの頃の自分が喜ぶかどうか。お店を閉めて、家に帰るじゃないですか。玄関のドアを開けて、部屋を見渡すと、そこは過去の自分が「本当は一番やりたかった夢の残骸」だらけなんです。ギターがあって、書いた絵が飾られてて、本が積み上げられてて。今の部屋には、いくつもの時代の自分が眠らずに佇んでいる。姿を変えた幽霊たちがいるんです。だからフォトジェニックに一度寄せたときは部屋に謝りました。「知ってるよ、私がやりたいことはこれじゃない。でも、一度だけ許してください」って謝ったんです。それで許してもらえたのかはわからないですけど、過去と今がつながっているということを部屋に帰ると感じられるんですよね。でも、うーんどうだろ?やっぱりがっかりするかも。いわゆる「おしゃれカフェ」みたいなポップなことして、とにかく個性と実力主義だったから「繋がり」とか「縁」とか言い出してる今を見ると、泣き出すかもしれない。でも、そこは今の自分を信じるしかないんですよね。結局、あの頃の自分は今の自分の信念の一つにはなっているけれど、アドバイスはくれませんから。あるとき、「自分を信じる、または自分以外を信じないってことが自信なのかもね」ってオードリーの若林さんがラジオで言ってたの聞いてストンと腑に落ちたんですよ。これでいいんだ、って。だから私は、常に最新の私を信じることにしてるんです。だからお店だっていつまで続けるかわかんない。今までずっと中途半端で途中下車で、断念と挫折と諦念の人生でしたから。そして、部屋に夢の残骸が増えていく。でもその残骸で、また新しい夢を組み立てるのもおもしろいじゃないですか。だから未来のことは何も決めないんです。明日にはお店ないかも(笑)。それは流石に嘘ですけど。でも、カフェをやってる人間てそういう人が多い気がします。だから、あなたの街のお気に入りのカフェが私のカフェかもしれない。そう考えると、必要とされるからやるのではなくて、自分がやりたいからやるっていう考え方のほうが幸せだって思いますね。自分がいなくても、自分のような人間はいるし、代わりはいくらでもいる。昔はそれをネガティブに捉えて絶望してましたけど、今はポジティブに捉えているんです。代わりはいるから、じゃあ私は違う場所で新しいことができるなって。また新しい自分を見つけられるなって。何かをやっている自分に誇りを持つのもそうですけど、何かをやっていて、今はこれをやっている自分に最も誇りを持ってます。だから、どんどん新しいことにチャレンジして、諦めていきたいですね(笑)。

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