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何を選びますか

とある嫁姑の物語。

始まりは激しく結婚を反対された40数年前に遡り、そこから数々の確執を越えて、最期は優しく看取った物語。

ひとことで良いところだけ摘めばそういう物語になるのに、現実は優しいだけでは終わらない。

日々小さな恨み辛みは山ほどに積もり、それでも世間体を気にして表面上尽くし、さらに恨み辛みに悪口三昧に、でも一生懸命に尽くし。
最後は姑が倒れて、そのまま動けずトイレに行けなかったことを嫁はバカにした。
それでも一生懸命尽くし、汚れた畳を掃除したのも病院に連れてったのも、献身的に看護したのも嫁。

そして最期も夜中に駆けつけ看取った。

世間体としても文句のない立派で素晴らしい葬儀も終えた。
だけど人が死ぬってことはそれでは終わらない。
疲れた嫁にはまだまだやることがいっぱいあり、家の片付けで下着やボロまで処分してやったこと、掃除の行き届いていなかったことや、果ては押入れのホコリにまで文句は及ぶ。

それは二人の間に他人には分からないものがあったからだろう。
長年の確執がそう言わせているのだろう。
どっちも悪いのかもしれないし、どっちも悪くないのかもしれない。
ほんとうなんて私にはわからない。
同じ事実でも主役が変われば物語は変わるから。

だけど私は、その話を聞くのがすごく嫌で悲しかった。
人としての尊厳を守れなくなったときに優位に立ってバカにして笑うなんて。
それを聞いた方も笑うなんて。
私はすごく傷ついた。

そもそも私は世間体という言葉が嫌いだ。
子供の頃施設に入れて欲しいと親に頼んだときに、そんな世間体が悪いことはダメだと言われた時からこの言葉が嫌いだ。


「そんなことしたら私が親戚にどう思われるか‥」
ボーっと聞いてたそんな言葉を遮って、私は誰にどう思われたって構わないですよ!石投げられたって構いませんよ!と言ってしまった。
私は聞き役に向いてない。

世間体を気にして一生懸命尽くし、影でボロクソに言うなんて器用な真似は私にはできない。
そんなことしたら手足がバラバラに動いて身体から離れて行ってしまいそうだ。

私は自分の心を守って、世間体を捨てる。
相手に対する尊厳を持って見放す。
どっちがいいのかといったら、嘘でも尽くされた方がいいのだろうか。
私なら寂しいなぁ、そんなの寂しいなぁ。

私は色々弱いけれど、私という意志は強い。
私は心からだけの行動をしていきたい。

それだけなんだけどな。


#エッセイ #世間体

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