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ロードムービーが好き②「都会のアリス」

「都会のアリス」は、ヴィム・ヴェンダース監督初期のロードムービー。1973年製作。

DVDを持っていたので久々に鑑賞しました。

ちなみに、原題はドイツ語「Alice in den Städten」。

「Städten」は街、市、都市などの意味らしいのだけど、邦題は「都会」になっている。

映画を見てみると感じるのだけど、ニューヨークはともかく、映画に出てくるドイツの町並みは全然「都会」ではなく、どちらかと言うとのどか。



あらすじ

ドイツ人ジャーナリストのフィリップは、ニューヨーク滞在記がなかなか書けずに悶々としている。

金が尽きたフィリップはドイツに帰ろうとするが、ストライキで直行便がない。空港で一旦アムステルダムに飛ぼうか思案中、ドイツ人の母娘、リザとアリスに出会う。英語が苦手なリザを助けるうち懇意になり、翌日同じ飛行機でアムステルダムに向かうことになる。

しかし翌朝、リザは急用で行けなくなり、フィリップとアリスが先にアムステルダムに向かい、リザを待つことになる。

フィリップとアリスは、アムステルダムでリザを待つが、一向に到着しない。

しびれを切らしたフィリップは、アリスから祖母の住む街の名前を聞き出し、祖母の家を探す旅に出る。


感想1「一見ドラマチックじゃない」


先週、「スケアクロウ」を観たせいか、淡々と話が流れていく印象を持つ。

「スケアクロウ」は喧嘩、酒、セックス、刑務所、精神錯乱など派手な要素が多かったのに対し、こちらは会話は静かだし、街の様子をカメラがじーっと追いかけていく時間も長め。

まるでニューヨークやドイツの街並みを題材にしたモノクロ写真集を眺めているよう。

ただ、出会ったばかりの少女(9歳)と旅に出る、というのは考えたら現実味がない設定。

「先に飛行機でアムステルダムに行ってて」と出会って一日の男に娘を預ける母親なんているだろうか。

考えたら非現実な話の運びなのだけど、なぜか受け入れて見入ってしまうのは、淡々と話を進めるヴェンダースの魔術だろうか。


感想2「アリスの子供っぽさと大人っぽさがいい」


アリスは子どもながらに母親に無茶なところがあるのを理解しているのか、状況を受け入れているようだが、アムステルダムに着いてからしばらく経っても母親が現れないと、さすがに泣く。

トイレにこもって、泣く。

この辺は子ども。

ホテルのベッドで、フィリップの読み聞かせに眠気を誘われ寝入るところも、普通に子ども。

翌朝、ミルクに浸ったコーンフレークに文句を言うあたりは、大人っぽくもあるが、生意気な子ども。


一方で、旅の途中ふたりが出会った女とフィリップが女のベッドで眠っているのを見て軽く嫉妬するアリスは、少し大人っぽい。

そもそも、フィリップになつくアリスは、少しフィリップに恋をしているのかもしれない。

ふたりで撮った記念の写真を嬉しそうに眺めているシーンもある。

この映画でいちばん好きなのが、ふたりでスピード写真を撮るこのシーン。


もしくは、父親の愛を知らないアリスは、フィリップに父の影のようなものを感じているのかもしれない。


仮想父娘というのは、「レオン」に通じるものがある。

定番モチーフかもしれない。

ただこの「都会のアリス」は、上質なモノクロ写真集を眺めるような楽しさがある。

今回久々に見直して相変わらず筋を忘れていたが、昔も写真集を眺めるように見ていたからかもしれない・・。



追記として、ドイツの地方都市ヴッパタールの空中鉄道が出てくるのだけど、これはかっこいい(怖いけど)。

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