技術研究組合について

複数の大学や企業が集まって共同研究・プロジェクトを進めるにはどういう組織設計が良いのか。通常の共同研究のフォーマットでも可能であるし、いきなり合弁会社を作ることも可能です。しかしながら、近年の技術は複雑化が進んでおり、1対1の契約で完了するケースは稀になってきており、様々なステークホルダーを取り込んだオープンイノベーション型になることが多くなっているのではないでしょうか。今回はそのビークルの一つとして、技術研究組合を紹介します。

技術研究組合とは

技術研究組合は、産業活動において利用される技術に関して、組合員が自らのために共同研究を行う相互扶助組織(非営利共益法人)です。各組合員は、研究者、研究費、設備等を出しあって共同研究を行い、その成果を共同で管理し、組合員相互で活用します。
平成21年の改正により、研究開発終了後に会社化して研究成果の円滑な事業化が可能になるなど、従来よりも使いやすい制度になりました。今後は、大企業、中小ベンチャー企業、大学・公的研究機関等により幅広く活用されることが期待されます。(参考:経済産業省ウェブサイト

特徴

技術研究組合の特徴は次の4点です。

・法人格があり、組合員は拠出金の費用処理が可能。
・非出資組織のため脱退組合員に持分を払い戻す必要がなく、長期間を要する研究開発においても安定的に行うことが可能。
・業務範囲は共同研究等に限定されるが、研究開発終了後に会社化すれば、研究成果の円滑な事業化が可能で、欠損金の累積なく、事業を開始できる。
・ただし、認可法人であるため、主務官庁に対する認可申請や届出が必要。

企業から見たメリット

法人格があるため、契約行為が可能であり、知財などの整理の透明化が図れることに加え、賦課金を支払う組合員に対し研究開発税制が適用されることが大きいです。
すなわち、賦課金として組合に拠出した金額は、自社の研究開発費用(研究開発税制)に参入することができます。

技術研究組合の概況

現在、47の経産省主管の技術研究組合と9つのその他の省庁主管の技術研究組合があります。→リスト

活用類型

経産省のまとめによれば、5つの類型があります。

①「異業種連携研究型」
 同種の製品・サービスを提供していない事業者同士が、それぞれの強みを活かしつつ、共同で研究開発を行っているもの(中小・ベンチャー企業が参加している場合もある)。
②「同業種連携研究型」
 同種の製品・サービスを提供している事業者(同業者)同士が、共同で研究開発を行っているもの(それぞれの強みを活かす場合や、共通基盤技術の開発を行う場合などがある)。
③「垂直連携研究型」
 製品・サービスを直接に受発注する関係にある事業者同士が、共同で研究開発を行っているもの。
④「実証型」
 研究開発成果を実用化するために、大規模な実証研究を行っているもの。
⑤「共同利用型」
 事業者(同業者等)が自ら共同で利用する性能評価試験方法などを研究するもの。

事業規模・事業内容など

事業規模は、数百万から数十億まで幅があります。概ね億円以上の事業規模の組合は、主にNEDOの事業の委託を受けているケースがほとんどです。NEDOの事業を受けるために作られたと思われる組合もあります。そのためか、ゴールが工業・産業的であり明確な組合が少なくありません(水素太陽電池コンビナート新材料など)し、廃炉など国策として行う事業において、1社・1業種では対応できないケースに入れ物として使われるケースもあります。
一方で、単純にベンチャー企業の活動の入れ物として使っているケース(プリンタブルセンサーコード)や、知財の活用の入れ物として使っているケース(全国トース)もあり、活用方法としてはかなり自由度があるように見受けられます。

出口・事業実例

法改正がされたのが2009年ということもあり、株式会社などに新設、分割した例は「グリーンフェノール・高機能フェノール樹脂製造技術研究組合」からの「グリーンケミカルズ株式会社(旧・グリーンフェノール開発株式会社)」が第1号ですが、例としてはあまり多くありません。ただし、類型⑤ 「共同利用型」では、評価装置などを組合で設備し組合員がその装置などを共同利用するという形態も取りうるため、この類型ではある意味で事業として運営できているとも考えられます。

電子商取引安全技術研究組合

平成14年12月独立行政法人製品評価技術基盤機構により、IT セキュリティ評価機関の認定を受けました。これをベースに当組合の組合員を中心に設立された株式会社電子商取引安全技術研究所に、平成16年7月1日移管しました。(株式会社 ECSEC Laboratory

技術研究組合光電子融合基盤技術研究所

世界最小、指先サイズの光トランシーバー「光I/Oコア」を生産・販売する「アイオーコア株式会社」を分割設立。アイオーコアは、資本金5億4千万円。すくなくともテックアクセルベンチャーズ大和企業投資からの出資を獲得しています。

技術研究組合リチウムイオン電池材料評価研究センター

リチウムイオン電池に関する評価法などの開発を行い、その評価を元に評価サービスを提供しています。かなり充実した設備を持っており、独自事業での開発なども行っています(NEDOの委託事業あり)。→組合ウェブサイト

東京バイオマーカー・イノベーション技術研究組合

オープンイノベーションにより新医療技術および新医療機器の早期実用化を支援する“トビラ・バイオテクノロジー・パートナーズ(TOBIRA BioTechnology Partners)”を設置。会費を徴収し雲煙に回していくというモデルを模索しているものと思われます。
<協賛法人会員>
企画・運営を含め本会活動に積極的にご参画頂ける企業。TOBIRAプロジェクトへも参画可能。また、TOBIRAが主催するイベント・講演会への参加費が免除されます。(年会費¥500,000)
<一般法人会員>
本会活動にご参画頂ける企業。ただし、TOBIRAプロジェクトへは参画できません。また、TOBIRAが主催するイベント・講演会へ参加費が割引されます。(年会費¥250,000)

まとめ

技術研究組合は、経産省が大きく寄与しているため、主管官庁が経産省のものも多いですし、NEDOなどの国プロがベースになっているものも多いですが、ベンチャーや中小企業にも利用できる仕組みです。研究開発型ベンチャーの立ち上げの前に、検討しても良いかも知れません。

ありがとうございます!