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ジャンプ・アウト・ザ・ウィンドウ

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名桜文学賞落選作です。全5話。原稿用紙50枚ほど。
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記事一覧

ジャンプ・アウト・ザ・ウィンドウ【第一話】

 尖塔のある白塗りのカトリック教会が、黝いモクマオウの防潮林を背負い、さらにその防潮林は澄んだ青空を背負っている。静かで、涼しい。ステンドグラスのある壁とは反対側に位置する玄関の前に立つ石膏でできたマリア像の台座の足元を起点として、シロツメクサやオオバコを混じらせた水っぽい芝生が、敷地の四隅まで広がっている。
 芝生の禿げた小さなくぼみの底に、血が溜まっている。すぐそばに俺の弟の死体が横たわってい

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ジャンプ・アウト・ザ・ウィンドウ【第二話】

 中学三年生のころから住んでいる県営団地の敷地の入り口の看板の、「団」の字が剝げかかっているのに気づいた。ここのところ全然外出していないし、するとしても夜中に五十メートル先の駐車場近くにあるコンビニに行くくらいのものなので全く気が付かなかった。弟の原付バイクが、階段裏の駐輪スペースで倒れたままになっている。タイヤはパンクし、ミラーとハンドルの間には蜘蛛の巣が張っている。もうしばらく乗っていないから

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ジャンプ・アウト・ザ・ウィンドウ【第三話】

 よくわからない材質でできた立方体の大きな物体に押しつぶされそうになったり、高いビルの屋上から飛び降りたりする悪夢に、さんざんうなされたあと、開けっぱなしの窓から入ってきた細かな雨粒が頬に触れ、目が覚めた。夕方の曇り空が暗くなり、山際に建つゴルフ練習場のライトの白い輝きが、夕空の青みがかった灰色のスクリーンに鋭い輪郭の穴を開けていた。
 起きてすぐに吐きたくなった。キッチンのシンクへと急ぐ。シンク

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ジャンプ・アウト・ザ・ウィンドウ【第四話】

 瞼が開閉式ドームの屋根のように開く。すると、深みのある藍色の下地に、ナトリウムランプのオレンジ色を重ね塗りした夜空の上澄みが、眼の前に拡がっていた。

 顎を引いて、へそを見るようにして頭を少しだけ持ち上げると、斜め上方向の中空に、椰子の葉が風に揺られているのが見えた。やがて枯れている葉が椰子の木から離れ、風にあおられて自分の方向へと突進してきた。とっさに身をよじる。三秒と経たないうちに小学生の

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ジャンプ・アウト・ザ・ウィンドウ【第五話】

 足の裏に、うぶ毛ぐらいの神経が弾けるような衝撃が伝わる。海の匂いを含んだ風が首のすぐ横を通り過ぎる。目論見どおり、伊計島の門中墓の前に、俺は座っていた。俺の姓が刻まれた黒い御影石製の石碑や、破風の屋根の直線、そして両端で少し跳ね上がる曲線、植え込みで揺れているハイビスカスの花などが、春の静かな風景として現前していた。耳を澄ませば墓地の裏手にある太平洋の荒波が、珊瑚礁の島を削り取る音が聞こえる。

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