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罠はひっそり忍び足

使わなくなった通常版のチェロ、つまり弓を右手に持つバージョン(弓という漢字を出すのに「ぼう(bow)」と平仮名でタイプして、何度もスペースキーで変換しながらなんで出てこないんだろうと数秒間探した後で、「やだ、ぼうじゃない」と気づいた…)を売ろうとしているのだけれど、これがなかなか小さなトラブルが絶えず、なんならタダで良いから、大切にしてくれる人にもらってもらいたいと思い始めました。

最初の購入希望者は、FBのチェログループで偶然出会った人。なんでもチェロ教室を始めるので、生徒用の安いものが欲しいということで、需要と供給がマッチしたのでした。ところが、メッセージを繰り返し、話を詰めては引き渡し予定日を直前にキャンセル、というのを2回繰り返されたので、本当に買う気があるならデポジットを払って欲しいというと、それはいやというので、それならこれ以上時間を無駄にしたくないので、と私からお断り。この時点ですでに1ヶ月無駄してるし、私もそんなに暇じゃない。

普段なら売り慣れたイーベイに出すところなのだけれど、周りの人たちが結構よく使っているFBのマーケットプレイスを試してみることに。ここでほんのり怖い体験をしたので、そのことを書いてみます。

昨日の夜に売ります広告を出したところ、今日お昼頃に1件の問合せが来ました。最初のメッセージは「まだある?」と一言。「あるよ」と返事をすると、「じゃあ買いたい。明日引き取りに行きたいところなんだけど、仕事が忙しいからフェデックスを(代引きの反対バージョンで)手配する。ピックアップは5時。」となんとも手慣れた感じの返信でした。フェデックスって代引き的なこともするんだ?と一瞬気にはなったものの、FBのプロファイルも公開しているし、写真で見る限り変な人ではなさそうだったので、この時点では特に警戒もしていませんでした。

それよりもこの時は、見ないで決めちゃうんだと思いつつも、それよりもチェロの安全の方に気を取られて、「それってフェデックスの人がピックアップしてそのままそっちに届けるの?そうじゃなかったら輸送中に壊れちゃうかもしれないし、私は責任持てないよ。なんならお互いの都合の良い場所で引き渡ししても良いけど?」と楽器の心配をうんとしていました。初心者用って広告出してるし、金額的にも、ちょっとやってみたいという人をターゲットにしていたので、楽器のこと全く知らないのかもしれないし、なんて思ってすごく細かく説明しました。おまけにフェデックスのサイトで集荷センターを介さずにドアtoドアのサービスを提供してるのかを調べたりもして(でも情報がさくっと見つからず、すぐに諦めた)。

ところが先方は、それでも良いというし、まあフェデックスなら保険もかけるんだろうし、翌日集荷の予約をするだろうから早く話を進めてあげないと、と今思えばお人好しにも程があるお人好し加減で、言われるがままに集荷住所とメールアドレスを伝えます。(今回はこれが一番の後悔。ただこれが「ちょっと待った」と思うきっかけをくれたともいう)

まあ、とりあえず売れたみたいだし、やっぱり輸送中に壊れちゃうのは悲しいから、できる限りの安全対策は取ろうと、チェロの指板の裏や、ブリッジ周り、テールピースのした、などの隙間をプチプチやいらないニットで埋め、さらにボディ周りの隙間も埋め、ケース内でチェロが動かないようにします。特別思い入れがあるわけではないし、なんだかんだとお世話にはなったしね。合板の安いチェロながら、3ヶ月放置していたのにちゃんと音程は合ったままという安定感だし、値段の割には良い楽器に出会えていたんだなあと今更感謝しています。

そう言えばと思い出し、「松脂とかチューナーとか楽譜スタンドとか、使わなくなった(というか私が前オーナーから受け継いだものの使っていない)備品があるけどいる?」と追加でメッセージをしたものの、そこはスルー。でもお人好しの私は、その時点では、チェロを引く目的ではないのかな、と思ったり。

その代わりになにやら奇妙なメッセージが届きます。ところで集荷時に手数料を払ってもらうことになる、ただその分は上乗せして払うから心配ないから、というもの。「え、どういうこと?」と聞きかえすと、今集荷手配したからフェデックスからの確認メールが届いていると思う。そのスクショを送って?そしたら詳しく説明するからと先方。

パッとみたところフェデックスからっぽいメールは確かに届いていて、あまりよくみないままスクショを撮って返信しました。ただその時にパッと保険料が結構な額(チェロの半額)で、「え、そんなにするもの?(てかそんなに払う?)」ともやっとし、なんか怪しいかも、とうっすらざわざわし出す私。

相手からの返事が来るまでの間、もしやと思って、”フェデックスから”のメールの送信者アドレスを確認したところ、ビンゴ!フェデックスを扮した写真をヘッダーに使っていて、Gmailはないわ。

その間に先方から、なにやらやたらと長いメッセージが届きました、が、この時点でそれを読むのさえめんどくさくなり、「ていうかさ、なんかいろいろ胡散臭いよね?メールだってフェデックスからじゃないし」と突っ込んでみました。

そこからはもうめんどくさくてちゃんと読んではいないものの、心配はいらない、という言葉が散りばめられたメッセージが。「ごめんだけど、すごく違和感あるのよ。違和感あることを進めるくらいなら、このチェロをチャリティーショップに寄付するわ」と返信すると、そんなこと言っても今から集荷のキャンセルはできないし、こっちはこっちでもう支払いをしてるんだ、と言います。そんなの知ったこっちゃないので、「キャンセルできないのはそれが本物のフェデックスじゃないからでしょ?」と返信し、速攻こいつをスキャマーとしてFBへ通報したのでした。

とともに、こいつのアカウントをブロック、念のためにメールの方もブロック、そしてFBもメールもパスワードを変更+セキュリティ強化。もちろんマーケットプレイスの出品も削除。

集荷住所に関しては、ピックアップの時には自宅住所を教えなくて済むように、最寄り駅待ち合わせにしようと思っていたのですが、集荷ということでやむなく。今までもFB上だけで売り買いをしたことは何度もあったし、全部ポジティブ体験だったので、FBの海は広くて汚染されていることをうっかり忘れて、疑う気持ちが緩んでいたというわけです。今更どうしようもないので、この教訓を今後に活かすのみ。

偽メールはすでに抹消しているのですが、スクショが残っていたので見てみたら、偽メールの中に”手数料”の支払いリンクが文面よりずっと大きいフォントでありました。あー、これをクリックして欲しかったのねと納得。よほどの理由がない限り、メールはじっくり読まないズボラさが功をなしたということでしょう。笑

しかしこれ、思い出してみると、気をつけていればあらゆるところに「あれ?」と思うポイントが散りばめられていますが、なんとなく相手のペースに飲み込まれてしまって騙されるというのは、余裕であるだろうなと思いました。実際、普段から割と気をつけているつもりの私も、え?と思いながらもあわや飲み込まれかけたわけで。

あの手この手で騙そうとしてくる人々に出会すのも、損得勘定なしに助けあったりできる人々と出会えるのも、SNSをはじめとしたインターネットの向こう側。顔が見えないからと言って、すべてを疑ってかかるというのは悲しすぎるけれど、そうも言っていられないのが今の時代なのでしょう。本当はみんな愛でできているのにね。


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