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ある国で映画に出てる話し【海外俳優記】

やばい、腹がマジで痛い。。


でも、間違いなくオレはこの国でやりたい事をしに来ている。


この国では事務所制度がないので、個人で人と繋がってて、映画に出るチャンスをゲットしていく必要がある。何の後ろ盾もなくこの国に乗り込んだから、相当ムズイ。今回のオーディションのチャンスは別のShooting (撮影)に行った時に出会った現地人からもらった。

Stand by. Roll camera, sound, and action!
(全員定位置で待機。カメラ・音響スタート。アクション!)


この掛け声でガンガン撮っては撮り直し、撮っては撮り直しを続けていくけど、喋ってる現地人俳優の演技が全然監督からOk出ーへん。


サッカーの試合中継のシーンで、実況が喋り続けるのだが実際に目の前で試合が行われてる訳ではないので、映像とコメントが合わない。

お前はいつ主役を採る?

白いホワイトボードみたいなんにカンペが書いてあって右から左に、左から右にってホワイトボードが動く。ホワイトボードの下にはローラが付いてる。サッカーの試合を見ながらの実況やから目線を気にしてカンペが動く(笑)



あー、腹をこわしてる。ガンガン休憩無しで撮り続けていくからトイレにいくタイミングないがな。助けてくれ。


同じシーンを別のアングルから撮る、そのタイミングでカメラの位置、セットの位置が若干変わる。その時に15分くらいグダグダするから、雰囲気をよみとって、今や!って時にトイレにいくしかない。

Shooting の日に体調を崩すと恐ろしくしんどい。この日のShooting は海の近くで、潮風がつよく、汚れてる海やからめっちゃ臭い。ほんでこんな感じのとこに特設セットが組み立てられてるから、マジ暑い。外の気温は40度くらい。写真に移ってる黄色と黒のシマシマの管みたいなんわ、布でできた管みたいなんで、俳優たちの足元に繋がっててエアコンがそこから出てくる。
腹痛い、海臭い、マジ暑い。これプラス朝6am集合で7pmくらいまでShooting やる。マジで体力いる俳優の仕事。今日が2日目で、オレの仕事は3日間のShooting 。この映画自体は半年くらいのShooting 期間があり、これが最後に残ってたシーンみたい。


1日目めっちゃ疲れたから、自分へのご褒美と思って、この国では中々手に入らへんサムギョプサルをアホみたいなスピードで食うて、あたったみたいに腹こわした。疲れてるとかストレスがある時って体に悪い事をしたくなるのは何でやろ。


オーディションのときにA4用紙1枚分のセリフを覚えた。オレの役はこの国VS 日本の実況である。早口で緩急をつけて話して受かった。


当日Shooting の現場に付いたときに台本を渡されて、全くセリフが変わっててビックリした。ほんでShooting が始まる直前にセリフは全部口パクや言われて、実質セリフなくなった。実況のマイクの前でひたすらパクパク口を動かす。金魚なのかオレは。もしくは鯉か。鯉であったとしたら、殿様の庭園で泳いでいるような美しい鯉でありたい。とかマイクの前で要所要所で意識が飛びながら口をパクパクし続けた。


Shooting の当日にセリフが丸っと変わったりすることはよくあるが、なくなるのは始めてでショックやった。合計20時間くらいかけて覚えたセリフやったのに。お前アホかって思われるけど、オレはセリフを覚えるのにめっちゃ時間かかる。てか覚えるん好きちゃう。めんどい(笑)


実況の役にパートナーがいた。日本人ではないが、日本人に見える方。オレたちみたいな顔をしてる人たちって、韓国・中国・マレーシア・インドネシア・シンガポールとかってイメージあるけど実は違う。他の国にもオレたちみたいな顔の方々が散らばっているねん。基本、中国大陸にいた人が主に中国大陸周辺を世界中に散らばったんやろなって推測する。

まずはさ、やりたい事の環境にいれること、それよ

ケサンという名の彼と顔を見合わせたり、うなづきあったりしながら、このマイクの前でパクパクし続けた。ケサンはとてもココロの優しい方で波長があった。顔が似てる種族とは感覚がやはり近いのであろうか。いつかケサンのいる街に行くよって、話をした。Google map で住んでる街を見せてもらう。


同じ顔立ちの種族の中でも""日本人""というブランドは海外旅行をされた方は感じているのではないか。ガチャガチャを回すと、落ちた国がタマタマ日本であった。日本という中で、またガチャガチャを回すと今の両親のとこに落ちて、生まれて来た。国ガチャ、親ガチャで人生の大枠は決まる。こんな恵まれた環境で生まれて育ててもらったから、人に動物に、地球に還元したい。


日本というとサムライ、アニメ、って外人に言われることが他の国では多かったけど、この国では違った。テクノロジーの国って言われる。


国には色んな局面がある。どこを切り取るかによって変わってくる。この国のメディアは日本のテクノロジーという局面を切り取って流すことが多いのであろう。パソコン、機械、車、バイク、で日本製のモノが多い。


国だけではなく、人にも局面があるから1つの情報だけで人を判断するのはやめようと心がけている。誰でも良いとこ悪いとこがある。体調、タイミング、誰と一緒にいるか、とかで良い部分がでるか悪い部分が出るか決まったりする。オレはこの悪い部分がでそうになったときに人に迷惑をかけないよう、演技の勉強をしているのかもしれない。


全然関係ないけど昔、メキシコ人の同僚に、
I can speak Japanese (日本語話せるよ)
と言われて、
Arigato、Kawasaki、Pikachu
って全力で言われたことを突然思い出した。


このShooting は1960年代のサッカーの試合を描いた映画。主役はこの国のドンやし、全映画館で放映される。でもさ、オレの役は大きくないしセリフもナイシ、満足いかへんなぁ。


1分の役を取るのがどれだけ難しいか、この国の普通の人でもみんな知ってるのが有り難い。オレの、もがきを分かってもらえるから。色んな俳優たちが大変さをメディアで話しまくってるし、国民全員が映画が好き、ってのもある。


日本やと、『え?お前、全然映ってなかったやん。オレ街頭インタビュー受けたことあるけど、オレの方がガッツリ映ってたで(笑)』ってなって、どんだけ映像に映り込むのがむずいか、セリフをもらうのがむずいか、が伝わらない。とりあえず、俳優の仕事とタマタマの街頭インタビューを一緒にすんなや。


確かに俳優の仕事をするまでは、全然セリフない人とかをただのエキストラで大した事ないって思ってた。だから、がっつりセリフのある役の時にしか家族とか友達に言われへん。


でもこの国ではどんだけ小さな役でも言える。役に小さいも大きいもないから、全力で演技しろって応援してもらえる。日本では俳優してるって言うのが恥ずかしくて言えへんかったけど、この国では応援してもらえるから気軽に言える。


昼飯にブッフェ形式でこんな感じのんが出るけど、気をつけて取らな、腹こわす。

取る料理の選び方は、油っこくないもの、色が赤くないもの、火が通ってもの。つまり、油・唐辛子・生物にアタル可能性がある。そして腹は7分目にとどめておくのが賢い。この国の料理はバクバク食べれて、後からめっちゃ腹膨れて気持ち悪くなるってなるパターンが多い。ビックリするくらい調味料の粉を入れてるからかな。

どこのShooting 現場に行っても大体、ワンワンがおる。鶏肉を多目に取ってワンワンに上げるのが昼飯後の楽しみだ。ワンワンと仲良くなるには鶏肉を上げるのが一番良い。
話が横にそれるが、路上で怪我してるワンワンを動物病院に連れてくにはまずは人犬関係を作らないといけない。鶏肉を3.4日あげると仲良くなれるから、その後触らせてくれる。


エサを上げると犬はオレたちのことを神様と思ってくれる。猿にエサを上げると、オレらからもっと食料をもぎとってやろうと攻撃してくる。同じことをしてるのに、相手によって出方が変わってくるのがオモシロイ。


狂犬病が怖いと言う話しを聞くが、事前に予防接種を打ってても、噛まれたら結局どうせまた打たなあかん。起こるか分からへんことを恐れるより、起こったらそん時はそん時と楽観的に生きてたい。Happy go luckyな性格って人から言われたらときは嬉しくなる。

Shooting の現場には色々な人がいる。監督、助監、照明、音響、カメラマン、カメラのアングルを決める人、カメラを固定して前後に動かす為の電車のレールみたいなんを組む人、茶を用意する人、現場全体をスムーズに動かす為のコーディネートしてる人。


何をしてる訳でもないけど、暇してる金なさそうな現地人スタッフが結構いるのがこの国のShooting 現場の特徴。彼らはボスの子分の子分みたいな感じで、何かあったときにパシらされるけど基本ボーっとしてる。


全体図を把握して、その中でオレはどこの位置にいてるのか、を考えるのが好き。いつもShooting に来ると何でオレはこんな小さな役なんや、とか全然知らん国に来て何してるんやろ?とか、ほんまに主役取れる日が来るんかな、とか自分の役に集中せんとそういう葛藤と戦う時間がめっちゃある。で、周りの人の動きを観察して、こいつの仕事は助監督かとか考えてまう。そんなんを全部忘れて自分の役に集中して演技しなあかんのに。

この人たちは全然タイ人じゃないけど、タイ人役。外から見たら掘っ立て小屋みたいなセットやけど、中はしっかりしてる。

Shooting の間の空き時間で、踊りの動画をインスタに上げる俳優がオモロイ。この方は俳優というか、有名なニュースキャスターで、アジア系の顔が欲しいと知り合いのキャスティング会社から言われて来たらしい。本気出したら誰でも映画に出れるんがこの国の魔法。

監督、この映画いつ公開されるんすか!?映画の公開ってめっちゃ伸び伸びになる。
ヒットしたら日本でも見れるはず、Netflixとかで。


有名になったオレを映画のスクリーンで観てもらうよりも、有名になるまでどんだけ大変なんかの発信、こっちの方が観ててオモロイって親友に言われた。


確かに、うまくいった話しを聞くよりも全然うまくいかへんかった話しを聞く方が何かオモロイ(笑)でも不思議とこの国ではうまくいった話をするとみんな喜んでくれる、自分のことのように。基本この国の人は陽気でみんなもHappy やから他の人のHappiness も喜べるんかも。


てな訳で、一歩進み二歩戻ることが多いねんけど、俳優街道を少しずつ異国で歩いてるZe! 


みんなもそれぞれ色々な戦いや、葛藤があると思うけど、オレも何とか主役を勝ち取るから一緒に少しずつ進もうZe! 


最後まで読んで頂きありがとNe!

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