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組織の規律はどこから生まれる? 多様な文化が交錯するニューヨークで考えた。

ミスタータイムズスクエアの話から考えるニューヨークの特性とは?

自分のニューヨーク生活は、日本から来た若手経営者の方々とプログラム参加者との顔合わせからスタート。そこではゲストとして「ミスタータイムズスクエア」こと、広告会社ADKのアメリカ法人でCFOを務めていた榮枝(さかえだ)氏から滞在における心構えを聞きました。

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長年NYで活躍をして来た先人から聞いた内容を簡潔にまとめると『ここでは、これまでの経験を元に考えることは意味がない』ということ。つまりは、日本で生まれ育ちHRに軸足を置いて活動するなかで培われてきた自分の価値観は、多様な価値観が入り混じり、定まったレールの存在しないこの土地では通用しにくい。それがニューヨークという都市の投げかける試練であると。

榮枝氏は、「NYでは、日本よりも規律が厳しい」という言葉でニューヨークの特徴を表現されていました。一般的には、組織内で遵守するべき手続きやコンプライアンスなどについては、日本のほうが厳しく規律化されているイメージがあるかもしれません。

が、榮枝氏の意味しているのは、「多様な価値観を背景にしているニューヨークでは、自由が尊ばれる一方で誰かの設けたルールに全体を従わせることが難しいからこそ、自分で自分の行動に対しての責任を持つことを高いレベルで求められる」ということ。

日本では、集団生活を送る中で与えられたルールを守るという規律性が重んじられていますが、ここNYでは、外からルールが与えられることはなく、「自分で自分の行動を律する」「自分の行動の価値基準をもつ」ということが重要なのです。

生活における“規律”を人事システムに置き換えて考えてみた

HRに普段接する自分の視点に置き換えると、生活における“規律”とは、組織をまとめ上げる上でのルール、つまり「人事システム」と類似したものと捉えられます。(大前提として、人事システムは事業を成長させるための1つの手法であり、アメリカだから、日本だからという違いから来るものではなく、事業モデルや組織の価値観に基づいて決定するものなので、あくまで1つの視点での考え方として語ります。)

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画像引用元:https://seleck.cc/1291

少し前に流行ったティール組織を例にあげると、日本で当時話題になったものの、むしろ、ティールと同時期に経営者の間で話題に上がった識学が広く市場に受け入れられていきました。

ティールでは、「自律性や性善説による統治の放棄」「価値観への共鳴による統治」という考え方。これは、アメリカのそもそもの生活における考え方である"自分の行動は自己責任"の前提に成り立っている組織の考え方という印象を受けます。ある意味、組織やデスバレー な今日に依存できないという裏返しでもあり、まさに今送っているNYでの生活そのものだな、と。

一方で、識学では「ヒエラルキーこそ組織運営の基本」「位置(役割と責任)こそが重要」という考え方。こちらも日本人の国民性である"一定の決められたルールに基づいて生活し、ルール内での白黒をはっきりつけることを優先して考える"という部分において適応のしやすい考え方だったのではないでしょうか。(もちろん業界/事業特性等の要因ももちろんあります。)

つまり、人事システムの構築を考えるにおいて、「事業モデルへの適応性」や「組織の価値観」だけでなく、「集団生活を送る上で浸透している価値観」を視野に入れることが、実際に機能する組織の型をつくるヒントになるのではないでしょうか。

規律の考え方への違いはどこから生まれるのか?

結論から述べると、アメリカ(ニューヨーク)の思考では、"多様性を前提として、同質性を大事にしている"のに対して、日本の思考では"同質性を前提として、多様性を推奨している"という違いがあるという部分が、組織の考え方にもキーになると考えます。

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もちろん人々は人種や経済水準によってのみ切り分けられるわけではありませんが、同じ土地で暮らしているものの、生活水準によるライフスタイルの違いや、生活の根底にある民族文化・宗教等の違いが多様に存在することが、生活する上でのルールづくりにも影響しているという仮説はそこまでずれてはいないのではないでしょうか。

そこには、様々な要因が複合しているものの、自分が考えたポイントは、経済格差と人種の多様性の2点。マジョリティを想定したルールを運用しようとしても、ニューヨークのような土地においてはマジョリティの定義をすることがそもそも難しいのだと感じました。(ジニ係数や人種構成を見ると明らかなので気になる人は調べてみてください)

最後に

余談ですが、上記で例にあげたティール組織のキーワードを日本にいた時は「アメリカではこれが最先端の当たり前!」的な印象を受けていたものの、実際アメリカではトレンドとして世の中に浸透しているイメージはありませんでした。

ただ、近い感覚は色々な人から話を聞く中で感じることもあり、次回は某GAFAの本国人事の方から聞いた話を整理していきます!(今回の記事のテーマの考察と少し結びつくものがあるかと)

以上!

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