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本気で頑張れる大きな目標を持て

お父さんが明るく熱心な方で、小さい頃から一緒に遊びながら鍛えられ、笑顔を絶やさない野球が大好きな少年がいた。運動神経が抜群で、肩が強く、投球、捕球の一連の動きにはセンスが光る。どのポジションも守れるユーティリティプレイヤー。

6年生になって新チームになる時、他に投手がいたが、彼も投手として育てていこうと監督に薦めた。小学生時代に投手を経験しておくことは、これからも野球を続けるであろう彼にとって、間違いなく大きな経験になると思った。そして何よりも4年生の頃に上級生の試合を見て、目を輝かせながらピッチャーやりたいと話してくれた笑顔が忘れられなかった。

しかし簡単な道のりではなかった。球は速いがコントロールは今一つ。春先はもう一人の投手と交互に先発で投げていたが、安定力を欠きいつしかキャッチャーがレギュラーポジションになり、その面白さも感じ始めていた。僕は改めて監督に進言した。

子ども達の可能性を広げるのも我々の指導者の役目では。

理解ある監督は僕の意見を受け入れ、投手再生としての指導を預けてくれた。

球が高めに浮くので、ワンバウンドでキャッチボールさせたり、ホームベースに当てさせたり。上体の捻れと身体の開きのバランスを整えるために、2ヶ月間セットポジションで投げさせて少しずつ修正していった。

そして6年ラストゲームに彼は先発し、ファーストストライクを膝元にどんどん決める。得意気な表情はお調子者の彼にピッタリで、プレッシャーのかかる大事な試合で最高のピッチングを魅せ、チームはリーグ戦春秋連覇を成し遂げた。

中学では強肩を買われキャッチャーを守っていた。配球の組み立てが面白いし、小学生時代から仲のいい仲間とのバッテリーは楽しいと話してくれた。

でも1年前、高校入学前に集まった同窓会の時に、一人ずつこれからの目標を話してもらった時、彼はみんなの前でこう発表した。

もう一度ピッチャーに挑戦してみたい。

嬉しかった。諦めていなかった。
そのためにやるべき事はきっと自分で見つけてくれるだろう。

そして今日、偶然にも彼と近くの駅前で会った。身体も大きくなり精悍な顔つきに成長し、でも人懐っこい笑顔は変わらない。挨拶を交わして別れたその背中にメッセージを送った。

本気で頑張れる大きな目標を持て。

人づてに肩を故障していることを聞いている。諦めないでじっくり治して、またチャレンジしてほしい。

#自分と向き合う心得
#2
#少年野球
#baseball


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