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エッセイその68. 小さなタイムカプセル(4)青林堂・ガロ・白取千夏雄さんのこと(上)文春青年


青林堂編集部員であった白取千夏雄さんが旅立たれてから、
明後日の3月17日で4年が経ちます。

そんなタイミングで、朝日新聞の書評中にこの記事を見つけました。
(2021年3月13日(土))


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ネチケット異変で、ちょっと抜粋を失礼します。

「主流とされる少年漫画のオルタナティブとして、実験的で作家性の強い作品を数多く世に送り出した伝説の漫画雑誌「ガロ」。その黎明(れいめい)期に編集部に在籍した著者がつづる、漫画家たちとの思い出。個性的なキャラクターが数多く登場するが、神保町界隈(かいわい)の町の景色も主役と同じ扱いで描写される。編集室の一部のようにして存在した数多くの喫茶店や、今や数少なくなった銅板建築に、路上でのパフォーマンス。SNSなどなかった時代、作家や編集者たちが交わる町の空気が雑誌に色濃く反映されていた時代の記録。」

先ほど、ネット上でお線香を上げられる場所に行ってきました。

以下は、3年前に投稿したものの再録です。
noteの皆さんには、ガロが好きとか、
ひょっとして、白取さんと交流のあった方もいらっしゃるかなぁと思ったため、ここに拙文を上げさせていただきます。
3回にわたってしまいます。冗長ですみません。




2018-07-19 08:43:26

テーマ:つれづれ
今日は実名で失礼します。

青林堂勤務時代の白取千夏雄さんを紹介してくれたのは、
当時「ガロ」の編集長だった谷田部周次さんでした。

谷田部さんとは、歌舞伎を3階席や桟敷で見る会の仲間。
週末は暇な面々で一日中歌舞伎座にいて、
夜は夜で銀座のミュンヘンなどに流れて飲んでいました。

長い間、彼の仕事のことは特に聞かずにいて、あるとき、
私が杉浦日向子さんや やまだ紫さんのファンだと知って、
そこで初めて、
自分が漫画の編集者で、この二人の担当でもある
ということを話してくれました。

私は、別冊少女コミック育ちで、
劇画や青年漫画をほとんど読みませんでしたが、
でも「ガロ」と青林堂については、流石に知っていました。
なので、とてもびっくりしました。

私が杉浦さんのサイン本をたくさん持っているのもこのためで、
落語や歌舞伎で同席したとき
(ご一緒したわけではないです、
谷田部さんがとりまとめてくれたとき、末席に連なっただけ)、
ちょこっとお話ししたり、サインをいただいたものです。
杉浦さんのエッセイも全部読み、おっかけ読者でしたが、
谷田部さんから聞いて お加減がずっと悪いのも知っていたので、
亡くなった時は「ああ、とうとう」と思ったのでした。


若き白取さんのことは、谷田部さんが大変買っていて、
その頭の良さと、ナイフのようなキレキレの思考に、
年下ながらとても尊敬していました。

「あいつさ、文春抱えて出勤するんだぜ」

「頭いいんだもん、俺参っちゃうよ」

「谷田部さん、それ、だめですよ、って怒られちゃうんだよ俺」

なととしょっちゅう言っていました。

今でも文春を見ると、白取さんを思い出します。


初めて白取さんに会ったときに、当時からパートナーでいらしたやまだ紫さんもご一緒でした。
お二人は熱々で、まだご結婚前でした。

やまださんは茶色がかった柔らかいショートヘア。
小柄で透き通るような肌で、笑うとわずかに目元に可愛いシワができる、
それだけが、

ああそういえば、
白取さんがだいぶ年下なんだっけ。

と思う瞬間でした。
何を着てもオーバーサイズな感じ、とても可愛らしい女性でした。
丸いメガネがよく似合っていた。

皆さんお忙しかったはずですが、
私が歌舞伎以外でも谷田部さんとよく飲んでいたため、
なんとなく4人で集まることが多くなりました。

白取さんは、濃いくせ毛がかっこよくうねっていて、
ファッションもすごくラフにして清潔感あり。
当時20代前半だったと思いますが、
本当にイケメンで、永遠の少年という感じでした。
痩せっぽちの谷田部さんは、

「あいつのお尻見てみな、きゅっと上がってるんだぜ」

とよく言っていました。

そんなところ、私は別に見てませんが。

私は、崇拝するやまださんのパートナーということで、
だいぶ年上でしたが、白取さんのことは白取さんと、
白取さんも私のことは苗字で呼んでいました。


懐かしいので、ちょっと脱線します。

本当はいけないのかもしれませんが、
当時、漫画の原稿というものも、谷田部さんにちょこっと見せてもらいました。

あるとき、

「これ、君の姉さんぐらいの世代の人が描いたんだけど、
ちらっと見て、受けるかどうか言ってくれない?
てか、君がどう思うかだけでいいや」

と言って、生原稿を私に見せました。

私の姉ぐらいの年齢の女性が、
ちょっと前の自分の時代を振り返るような内容で、
無駄に装飾の多い温泉のことや、
おばあちゃんと同居の大家族の暮らしを描いたもの。
神保町の岩波ビルの下のお店で読ませてもらいました。

「面白いと思う。
私はピンと来た。
でも、私も好みが変だから、大向こう受けするかはわからないなぁ」

と言いました。

それが本となり、まもなくジブリの映画にもなりました。
アニメでは、思い出部分は、余白を残したような作画で、私はとても好きです。

「思ひ出ぽろぽろ」でした。




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