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老親の謎(17)平成狸合戦ぽんぽこな思い出−2.私 狸です。

続きです。

父の主治医の先生とお話をして、父の症状がその時も以前も、個室を必要とするものではなかったとわかりました。

「ただ、とても繊細な方なので、娘さんからただ、4人部屋へ移ってと言われても、承知なさらないでしょう。
わかりました、私たちがなんとかします」

先生は、このような案をくださいました。
先生から、

「重篤で、どうしても個室が必要な方が待っておられます。
◯◯さんと見込んでお願いするのですが、大変申し訳ないのですが、
ほんのしばらくの間だけ、4人部屋でご辛抱願えませんでしょうか。
こんなことをお願いできるのは、◯◯さんだけですので」

と言ってくださると言うのです。

「すみません」と頭を下げましたら、先生も看護師さんも、

「よくあります。大丈夫ですよ」

とおっしゃいますので、私はますます頭を低く下げました。

姉のSOSがあるたびに来てはいましたが、仕事もあり、受験期の娘を二人抱えて、そうそう長くは実家に滞在できません。

善は急げと、翌日に出直し、

お父さん、先生がお話があるそうだよ。

と言って、病室で主治医の先生を待ちました。

入ってこられた先生は、上記の通りに言ってくださいました。

苦虫を噛み潰したような不機嫌な顔になる父。
でも、こう言う人にありがちですが、権威に弱く、外面も良いです。

しばらく空中を睨んで、

それは・・・そういう方はお気の毒ですね。
こちらも本当は個室でなきゃならん病状なんだが(ないない)・・
仕方ない、いいですよ、移りましょう。
俺は我慢します。

と言いました。

病院のベッドというのは、下にキャスターがあって、あっというまにスルスルと移動できるのをそのとき初めて知りました。

「では、ことは急を要しますので、今から移動させていただきますね」

と、移動開始。
父のベッドはスルスルと個室を出ていくのでした。

その後について行くと、父がいつもの口調で、

「でも先生、他に特別室があるんでしょう。
そっちへ移ろうかな」

と言い出すのが聞こえました。

か・・勘弁して〜! 😭

が、先生も心得たもので、

「はい、ございます」

「では、そっちにしようかな。いくら?」

聞いておて冷や汗が出ましたが、先生は落ち着いて、

「大変申し訳ございません。生憎、そちらの方も長い順番待ちでして」

先生大好き、結婚してください。

「そうですか。じゃ、空き次第そっちへ行くから」
「わかりました。空き次第お知らせいたしますね」

と、そこへ父のお気に入りの看護師さんがナイスフォロー。

「でもね◯◯さん、特別室は、ここの病棟ではないんです。
なので、◯◯さんが特別室にお移りになられてしまうと、
私たちがお世話ができなくなってしまって、とても悲しいんです」

すいません・・・そんなことまで言わせてしまって・・。

「そうか・・じゃ、君がそう言うんなら、
特別室が空いても、行かないことしますよ。
でも先生、個室は空き次第・・」

「もちろんです。
他の方がなかなか承知くださらない中、ご理解いただいていますので」

先生、看護師さん・・・・😭😭😭

対面でなければ、あいつとか、あの医者とか、あの女とか、失礼な呼び方で皆様をお呼びしているうちの父ですが、皆様には本当に感謝していると申しております。

4人部屋に入ったために病状が急変ということもないでしょうから、もうずーっと、ずーっと最後まで、4人部屋で大丈夫です!

スルスル前進するベッドの後ろを歩きながら、私は心で先生と看護師さんを拝むのでした。


何年も経ってから、姉から聞きました。

父はそのときのことや、私が開催した、突撃介護認定会議のことを、

「あれはあれだろ、俺は、tamadocaにはめられたんだろう?」

と言っていたそうです。

ビンゴです!

親子の信頼関係や愛情がないって、荒涼としがちですね。
普通の家族で育ったみなさんが、本当に羨ましいです。

以上、平成狸合戦ぽんぽこの一部始終でした。

これでしばらく愚痴を言わないで済みそうです。
おつきあいさせてしまったみなさん、ごめんなさい。


サポートしていただけたら、踊りながら喜びます。どうぞよろしくお願いいたします。