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老親の不思議(13) 消費期限切れ間近

人間、一生に一度、二度は体験することになる親送り。

去年その辺について、「老親の不思議」シリーズを12篇、それ以外のことであと7篇ぐらいかな、それをマガジンに纏めてみたのでした。

でもその後、半年の間に、自分の両親を含めた身内5人を送り出すことになり、コロナ禍での渡航の大変さもあり、落ち着いて書くことはできなくなって、マガジンのことは、すぐに忘れてしまいました。

しかし考えてみると当時、バタバタしながらも、他のことはいろいろ書いていたのですから、このテーマは私にとっても、筆が重くなるものだったのですね。
なるほどそうだったのね。🧐


それにしても、生まれてきたなら必ず向き合う、自分の旅立ちのとき。
自分の店仕舞いなのだから、なるべく自分でやりたいものです。
私なんかあと、遺言書くだけです。
近々飛行機に乗るので、その前に完成させて法務局に預けていきます。

さてその、各人の店仕舞いですが、なにゆえにか、
「自分がいなくなった後のこと」を考えてくださいと言われると、
とても嫌な気になるのはまあ人間の自然としても、
非常に逆上、激怒する親御様たちが、なかなか多いらしいのです。

するとどういうことが起きるかというと、いろいろなことを、子供に言っていってくれません。

そして、あとに残る子供(逆でないことはとても幸せなことですが)が、
何もわからなくないまま残されて、

🎵困っちゃ〜う〜ナ〜🎵

ということになります。

お読みの皆さんの90%ぐらいはご存知ないのですが、これは、昔一世を風靡したヒットソングです。
当時の子供達が何かというと、困っちゃうナ! を連発しまして、イヤミ先生の「シェ〜!」(で写真に撮られたがることと)並んで、大人たちが大変嫌がったものでした。


というわけで、私も、親の生前も死後も、困っちゃうことがたくさんありました。

父は、2022年3月桃の節句の日に、家庭内事故で連れ合いを亡くしました。
その後急速に衰えましたが、寝たきりではあったものの、認知症ではないと、私は思っていました。
でも、認知症の診断が降りなかったとしても、90から100歳の人というのは、元々の頭の状態から少しずつ、衰えていくのは当たり前。健康も筋肉も衰え行くのに、頭だけが前と変わらないわけには行きません。
やはり精神活動の方は、普通の状態から困った方向へ変わっていくのでしょう。自分で親の最後のころを見ていて、今ではそう、ほぼ確信しています。

父はベッドに寝たきりになると、驚くようなことを言い出すことが増えていきました。
あるときは、寝ているうちにベッドの向きを変えただろうと怒り出しました。
私が名古屋から電話をかけて、

「重いから姉一人では動かせないし、第一、狭くて向きを変えることはできないよ。それに、いつもベッドからテレビ見てるよね?」

と言っても、納得しません。

「じゃ、お前が名古屋から来て、一緒に動かしたんだ」

と言います。
違うと言いますと、今度は私の夫が動かしに来たんだと言います。
その話が終わらなくなって、父が取り乱して大荒れになってしまったため、訪問診療の先生に来てもらいました。

先生は、

「ベッドは、私もお伺いさせていただいていますが、
どうもいつも、この向きだったようです」
「じゃ先生、俺は頭がおかしいんですか」
「いえ、そんなことはありませんが、ベッドに限って申し上げますと、
どうも、最初からこの向きで、動いてはいないですよ」

とおっしゃって、父はやっと不承不承、口をつぐんだそうです。


一人で介護をしている姉は、父から言われることのうち、

「お母さんが来ている」

はまだいいのですが、

「俺のお袋が来て、お前(姉)を一緒に連れてこいと言っている」

と言われた時は、さすがに参ったそうです。

主治医の先生には、

「俺の娘たちは鬼なので、先に送ってから俺もあとから行きます」

と言いました。
みなさん驚かれるかもしれませんが、似たようなことはずっと言われてきているので、「ああまたか」いう感じでした。

先生が少し悲しそうに、
「娘さん方は、本当によくやってくださっていますよ。
そんなことはおっしゃらないでください」
と言ってくださいましたが、父は天井を強い目でにらんでいました。

それにしても先に送るって、どうやって送るというのだろうか。
そんなこと、子供に言ってはいけませんよね。

これはやっぱり、脳の経年変化と、脳の消費期限に限りなく近づいていくからではないのでしょうか。

残念ですが、歳をとって丸くなる人は、期待するほど多くはありません、
我が父が、亡くなるまでの半年に見せたことは、

「頭がおかしくなっていたと思えば、納得できるよね・・」😅
「でもあの人、もともとおかしかったから、
いつからもっとおかしくなったのか、とてもわかりにくいよね」

と、姉とは言っております。

今の80代以上の人たちというのは、戦中戦後の、大量の餓死者を多出した飢餓時代を生き延びた個体です。なのでその生命力は、当時亡くなって行った人たちより強いと言われています。
そして、親の面倒は子供(娘、嫁が主)が見るものだとか、
一子相続が正しいと信じているために「長男教」の信者である人がとても多い。
すでに手垢のついた感のある「昭和の価値観」ですが、それをしょったままの方が多数いように思われます。

昔は、60歳を過ぎればご老人。
平均余命の年代別の差がわかる表です。

去年私が見送った人々は、78歳、99歳、99歳、97歳、96歳でした。
78歳は難病でなければ、やはり100歳近くまで頑張ったかもしれません。

今のご老人というのは、子供に老後を見てもらうのが当然と思ってはいるが、
自分自身は、10年とかそれ以上に亘る介護を経験していない人が多いのだそうです。

なので、基本、大威張りでありながら、介護のなんたるかはよく知らず、かつ、体がとても丈夫で、長生きという人たちの層が厚いです。

お金がいくらあっても、介護の手が足りないために 介護ヘルパーさんに来てもらえないという時代がもうすぐ目の前です。

母の亡くなった翌日に、姉の腰椎圧迫骨折がわかりました。

「家に娘がいるのになんで他人を家に入れなきゃいかんのだ」

と言って、外からの助けを拒んでいた父の、介護用ベッドにのしかかるようにして、私は言いました。

「あのね、お姉ちゃん、腰骨折れていたの。
次にやったら車椅子かもしれないよ(以上は盛って言いました)

お姉ちゃんが入院しても、私が名古屋から引っ越して一緒に住んで介護することはできません。
お姉ちゃんが車椅子にでもなったら私、お父さんのこと許さない。
そうなったらお父さん即、老人施設入居だから、いいね?
それが嫌なら、介護保険を利用してください」

と、言いました。

「お前は、鬼だ」

と言われました。

大丈夫です、先述のとおり、昔から言われ慣れています。
聞くのは嫌なものでしたが。

この後、少し役立つことを、続きで書きます。

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