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『家庭医療学』のチカラで誰もが生き生きと過ごせる町をめざして

2023年度不定期連載、お待ちかねの『役員の顔』です。
今回は、理事【阿部 佳子さん】です。
医療法人社団やまと「やまと診療所日吉」院長として、現在は主に在宅医療を行っていらっしゃいます。家庭医療学を学び子どもから高齢者まで、障害を持っても認知症になっても楽しく暮らせるまちづくりを目指して、地域の活動に参加されています。横浜市港北区出身の生粋の港北っことしてびーのびーのを支えて頂いています。


理事 阿部 佳子氏

家庭医として地域に関わりたい理由

医師になってから19年間、東京都北区を中心に主に診療所で外来と訪問診療を行ってきましたが、2016年に地元の横浜市港北区に戻り、今はもっぱら訪問診療を行っています。研修医時代からの同期と指導医のおかげで、その間にすっかり「家庭医」になっていたと思います。

家庭医とは、身近にいるかかりつけ医で、年齢・性別・疾患によらず、なんでも困ったことがあれば相談にのるお医者さんです。私の指導医は家庭医の中では、有名でしたので多くの医師・研修医・医学生たちが見学や実習・研修に来ていました。その中で、地域の医療資源について調べる機会があり、私の出身地近くでも、訪問診療を受けられなかったケースを聞きました。

地域には訪問診療をやっているところはありつつも、私の高校時代の友人のお母さんが、自分の家で最期を過ごしたかったが、それをかなえてくれる訪問診療がなく、病院で亡くなったということ。自分の生まれ育った地域で、自分の限られた時間を、自分の過ごしたい場所で過ごすこともできないのだろうか?という疑問がわきました。また、日々の診療の中で、認知症のあるご主人が家で静かに読書をして過ごしたいのに、奥様の介護負担があるからという理由で、行きたくもないデイサービスに行かなければならないということもみてきました。おそらく、そんなことが今も続いています。

自分だったらどんなデイサービスに行きたいのか?そもそも、その家で本人も家族もそのまま暮らせないのか?施設にいること自体が楽しくて幸せだと感じられるようにならないだろうか?
いや、その町自体が、認知症であっても障害があっても楽しいと感じられる町にならないのだろうか?そんなことを考えて、少しでも何かできないかと思い、生まれ育った地元に帰ってきました。
もちろん、認知症や障害者だけでなく、そこに生活する全ての人が居心地のいい町が理想です。港北区は東京のベッドタウンで、多くのサラリーマンたちがウイークデイの日中は東京に出てしまいます。日中町にいる人の多くは、子どもたちと子育て中の親、地元の企業で働く人たち、高齢者です。これらの人が安心して楽しく暮らせる町ってどんなものだろう?と考え、現在、まずは日中に地域にいる人たちに対して以下の3つのアプローチを試みています。


安心して楽しく暮らせる町を作る3つのアプローチ

訪問診療をしている私にとって、高齢者は仕事柄最もよく会う人たちで、その中では多職種連携や学習会などで診療やケアの質を高めようとしています。しかし仕事の中だけでは元気な高齢者にはなかなかお会いできません。
そこでまず1つ目のアプローチとして、2020年からえがおまつり実行委員になって高齢者の文化祭的な取り組みにかかわってきました。元気いっぱいな高齢者の多いこと!「えがお」の活動は今後も続けていきたいと思っています。

港北公会堂で開催された”プラチナ世代”の祭典「えがおまつり」


2つ目として、今年の夏からは月1回の健康相談をコミュニティカフェで始めました。ここでは病気で受診というほどではないけれど、ちょっとした健康の心配事に関してリラックスした環境でお話をうかがっています。

3つ目に、地域で働く世代へのアプローチとして、法人会という組織に入りました。法人会は、正しい税の知識の普及と地域の振興に寄与することを目的とした団体で、地域の企業の経営者が多く参加されています。経営者は従業員や経営のために、自分の健康を顧みず無理をしがちです。そんな人たちも無理せず健康に生きられないものだろうか?と思います。法人会の行事に参加しながら交流を深め、また産業医の視点で、関わる人たちのサポートができたらと思っています。
そして、子どもたちとそのお母さんたち。もちろん最近は「イクメン」と呼ばれる男性も多いのでそういった方へのアプローチも。ここはびーのびーのが長年取り組んできている地域の課題ですので、微力ですが参加させてもらっています。

誰もが希望を持って生きていける町へ

やりたいことが多すぎで欲張りだとも思いますが、まずは、今ある地域の活動・行事に巻き込まれることを楽しんでいます。多くの方々と関わらせていただいているおかげで、仕事も地域の活動も楽しく充実したものになってきました。これらの関わりから、誰もが希望を持っていきいきと生きていける町を夢見て、少しずつ解決できそうな課題から取り組んでいきたいと思います。

理事 阿部佳子


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