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フィールドで一番使える昆虫図鑑          ~『日本の昆虫1400』文一総合出版

 槐真史編、伊丹市昆虫館監修『日本の昆虫1400』は、フィールドで一番使える図鑑です。ビオトープ関係者にもお勧めしたい。数年、実際に使ってみて、お勧めする理由は次の3点です。

推薦理由

  • 写真が大きく見やすく、小さな昆虫でもその特徴がよくわかる

  • フィールドで出会う、地味な昆虫の種名もわかる

  • ポケットにも入る大きさでフィールドで使いやすい

写真が大きくて見やすく、小さな昆虫でもその特徴がよくわかる

 今までの昆虫図鑑は、背中から標本を撮影した写真を採用していました。確かに翅を広げたチョウやガの標本は、翅の隅々まで見えるので、わずかな色や模様の違いもわかります。しかし、特にガなどでは、野外で翅を広げた姿を見ることはめったにありません。ふだん目にするような、翅を閉じて静止した写真の方が役立ちます。そもそも標本は死んだ個体です。トンボやカメムシなどでは、色が変わってしまう場合もあり、実際の姿と異なります。
 『日本の昆虫1400』では、生きた昆虫を白い背景の上で撮影しています。これを「白バック写真」といいます。同じ生きた昆虫の写真でも、野外で撮影した生態写真に比べ、体の隅々までよくわかります。ガなどは翅を閉じて静止した写真を採用しています。これは正に野外でみられるものです。生きた昆虫の写真は、文字通り生き生きとしていて、野外で実物に会いたくなります。
 1ページに3、4種とあまり欲張っていないので、昆虫の写真の大きさがほぼ均一です。そのため、1センチ程度の小さな昆虫は何倍も拡大してみることができます。知っているつもりの種類でも発見が多いです。

フィールドで出会う、地味な昆虫の種もわかる

 フィードでよく見つかる種でも、地味で小さな昆虫は、図鑑で載っていないことがあります。これに対して『日本の昆虫1400』では、5mm程度の小さなカメムシ類や色が地味なガ類など、フィールドで出会う種を載せています。これは、「出会う頻度の高い種を重点的に収録」する選定方針によるようです。
 いろいろなデータベースからリストアップし、この中から環境指標や分布拡大などの話題性のある種、地域的に身近な種、掲載した種と区別するために必要な種、執筆者らの観察経験を加味して決めたそうです。
 その結果、1400種という昆虫図鑑としては決して多く掲載しているわけではないものの、実際にフィードで出会う昆虫に使えるようになっています。また区別が難しい仲間に対しては随所に「絵解き検索」があり、実用度が増します。

ポケットにも入る大きさでフィールドで使いやすい

 文一総合出版のポケット図鑑はシリーズ化されており、『日本の鳥300』『日本の野草300』『都市の樹木433』などが出ています。どれもポケットに入る大きさで、320ページにそろえており、適度な厚さです。『日本の昆虫1400』は二分冊になってはいるが、表紙に代表種があり、どちらの巻を見ればよいかすぐわかる。この点からもフィールドで大変使いやすい。

 これから少しずつビオトープに関する内容をアップしていくつもりでいますが、ビオトープでは、事前に目標とする種を決めることや、日々の生物の観察が必要です。『日本の昆虫1400』は、一番にお勧めできる昆虫図鑑です。


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