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【シカゴでバードウォッチング!】 Lapland Longspur 爪長頬白

前回の記事「-20°Cの中」で触れたLapland Longspur (ツメナガホオジロ、爪長頬白)に再登場願うことにしました。

冬鳥として北海道や本州などの海岸近くの草原や農耕地に少数飛来してくるそうなので、日本でご覧になった方もいらっしゃるだろうと思います。私が初めてPark 566で見たのは2019年でしたが、今回すぐ近くの地面でずっと餌をついばんでいたのでゆっくりと観察することができ、その微妙な色合いの美しさに見入ってしまいました。

雪があってもツンドラ地帯よりも暖かいね、Lapland Longspur君!     ©Dan Lory

Lapland Longspurのspurとは、鶏の蹴爪とか、登山用具のアイゼンの意味で、つまり「Laplandにいる、第一趾/後趾に長い爪を持つ鳥」ということで、和名の爪長頬白になるわけです。

私はこの鳥だけが長い爪を持っているのかと思いましたが、ツメナガセキレイ (Western Yellow Wagtail) もタヒバリ (Water Pipit) もヒバリ (Eurasian Skylark) も同様に爪が長いことがわかりました。理由はわからないそうです。

わ、長い!左脚の後指の爪。     ©Dan Lory

日本でもシカゴでも見ることができるこの鳥の姿は、繁殖地であるLapland (ラップランド)やカナダの北方のツンドラ地帯から避寒のために渡ってきた時の冬姿です。

Lapland Longspurは、一見すると日本のスズメ (Eurasian Tree Sparrow)のように見えますが、よく見るとスズメより少し大きく、頭上には濃い褐色の斑点があり、後頸部は赤茶色。顔は黄褐色で周辺部に黒い線があり、喉と前頸部からお腹にかけてバフ色(薄い黄褐色)で、大雨覆(おおあまおおい)は赤茶色です。

斜め後ろから見ると、後頸部の赤茶色が目立つでしょ?      ©Dan Lory
赤茶色の大雨覆がわかる横姿のLapland Longspur     ©Dan Lory

では、私たちが決して見ることができない春から夏の繁殖期にある雄は、どんな姿でしょうか。

嘴は黄色、目から下の顔全体から首にかけて真っ黒になり、白い眉斑と赤茶色の後頸が目立ち、冬には黄褐色だった部分が綺麗な白色で、キリリと引き締まった感じになります。見事な変身を遂げ、力強い感じで雌にアピールするのでしょうね。

繁殖期にあるオスのLapland Longspur     
ML31721801 by Ian Davies, Macaulay Library

この晴れ姿を見ようと思ったら、私たちは春か夏にLaplandやカナダの北方のツンドラ地帯に行かなければならないんですよね。

Lapland・・・。サーミ人が住んでいて、夏は白夜が続く所。雄大な自然の中でのハイキング。フィヨルド。熊。狼。トナカイ。オーロラが見られる確率が世界一の所。犬ぞり。アイスホテル。

カナダ北部のツンドラ地帯・・・私が好きな写真家の星野道夫さんがよく訪れた所。エスキモー/イヌイットが暮らしている所。カリブー。ホッキョクグマ。凍土。

そのどちらにも私は生涯行くことができないかもしれないけど、私の目の前にいるLapland Longspurはそこで数ヶ月過ごし子育てを終えてきたんですよね。そして、そのLapland Longspurと私が、今、この空間と時間を共にしていると思うと、出会いのかけがえのなさに心が震えました。

地球上に国境という線を引いたのは、愚かな人間。鳥たちはそんなことはお構いなしに、軽々と飛び越えて行く。鳥たちが空の上から眺めるように私たちも地球を見ることができたら、どんなに自由になれるでしょう。

と、いろいろなことを考えてしまいました。


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