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SPORTS,GAME and LIFE for YOUTH

 今年もバスケ・シーズンが始まりました。先週からはBリーグが開幕、今月後半には本場NBAも開幕。来年に向けて長い戦いが続きます。そんな中、今週末はバスケットボールの記録係を担当するために、地元の高校生の大会の手伝いに行ってきました。

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(会場となる「おおきにアリーナ舞洲」)

 この大会「大阪エヴェッサ×藤井組CUP」は企業とプロバスケチームが主催するプライベートイベントで、いわば『準公式戦』といった類のものです。「コロナ禍において活躍の場を失った学生達にプレーの機会を創出したいという強い想いから開催」(大阪エヴェッサ公式ツイッターより)とのことで、昨年に続き今年も開催の運びとなりました。

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(試合会場はプロが使うのと同じアリーナで!)

 この大会には、普段の高校生の公式戦と違うような『演出』があります。例えばMCが試合中に選手たちを煽ります。一方で、フリースロー大会なんてミニ・イベントもあったりします。大会なので審判も呼んで記録係もつけてきちんと運営はするけれど、勝利を目指すばかりではなくて、楽しくバスケをすることにも重点が置かれている。そんなユニークな大会です。

 そんな環境で試合をすることに、高校生諸君はもちろん慣れていないので、最初のうちは自分の名前を挙げて褒めてもらったりすると照れくさそうな表情をしたりしているのですが、そこは若い人たちなのですぐ順応して、だんだんとノッてくるんですね。

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 私が担当した試合の一つが、試合の流れが行ったり来たりする好ゲームとなりました。片方のチームに流れが行きそうになると、MCは負けてるチームの肩を持ちます。「ディフェンスの手が下がってるぞぉ。苦しい時こそ、ハンズアップっ!」とかね。これ、公式戦で運営側がこんな事やったら抗議が来ると思うんですけど、そこは半分練習試合みたいなものですからね。というか、そういうことが認められている大会と言ったほうが良いかな。

 するとね。ちゃんと頑張るんですよ、高校生たちが。MCの煽りに応えて張り切るんですね。この辺は、ストリートバスケの大会みたいなノリです。もちろん、ベンチも盛り上がります。周りで観ている他チームの子たちからも「おお」と声が漏れるのが聞こえる。いやあ、若いっていいなあ。公式戦ではちょっと見たことがない雰囲気です。

 この試合は、よくバスケットを知ってるチーム同士の戦いで、試合途中で戦術を巧みに変えたりしたのですが、それをまたMCがイジるんですね。「おおーっとぉ、ゾーンだ。オール・コートのゾーン・プレスだあ」って。で、このプレス・ディフェンスがハマる。試合がもつれて接戦になる。追うほう、追われるほう、両軍ベンチから声が出る。いやあ、記録席で計時をしながらも、めちゃくちゃ楽しかったなあ。

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 試合は残り数秒で2点差を追うチームがマイボールでタイムアウト。一時は15点差あった試合を積極的な守備で追い上げてきたチーム。コーチが制限時間をぎりぎり使って円陣。やがて審判からボールが手渡され、巧みなブロックを仕掛けたのが見事に決まってゴール下に長身の選手がノーマークで走り込む。そこにパスが出る。渡る。いよいよ同点か。放つ。ボールがボードを打つ。跳ねる。リングの中へ吸い込まれ…ない!

 ピーっ!

 ホイッスル。「ファール!ファールで止めたあ。惜しぃー」MCが喚く。

 なんや! なんや、これは!
 何なの、この緊張感。ワクワクする感じ。プロの試合みたい。

 結局、フリースローは1本しか決まらず。彼らは追いつくことが出来ませんでした。でも一点差の好ゲーム。印象的だったのは負けたほうのコーチが選手を褒めていたことですね。自分たちのゲームが出来た嬉しさ。自分たちのスタイルが貫けた自信。そういう手ごたえみたいなものを感じたのかなあ。試合後に「惜しかったですね」って声掛けた時も、すごくすっきりとした顔をされてました。

 選手たちも屈託なく「惜しかったなあ」って顔をしてるし、会場は「ええもん見たなあ」ってムードだし。MCはしてやったりの顔をしてる。もちろん勝ったほうも、厳しいゲームをモノに出来て喜んでたし。でも、勝ったからって特にご褒美はなくって、単なる準公式戦なんだけどね。だからこそ気楽に楽しめたのかも知れないけど。

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 先日、とあるスポーツ指導者に「スポーツとは『運動+ゲーム』である」と教えてもらいました。ゲームなんだ、と。だからDOじゃなくてPLAYなんだと。遊びなんだから楽しむんだ、と。勝つだけじゃなくて、負けても何か得るものがないとダメなんだ。勝ち負けにばかりこだわるバッド・ウィナーよりも、自分たちらしいプレーをめいっぱい楽しんだグッド・ルーザーのほうが、後々の人生において価値があるんだ、と。

 負けたチームの表情を見ていて、その話を思い出したんですよね。

 いまの高校生たちや若い指導者の皆さんは、その辺の感覚(バッド・ウィナーよりもグッド・ルーザーでありたい、という気持ち)が我々の世代なんかよりもよっぽど優れているんじゃないかなあ。そんな気がしました。あの試合でMCやコーチや選手たちは、そういう価値観をうまく表現してくれたんじゃないかなあ。それが観ていてすごく爽やかで、運営を手伝うやりがいを強く感じたんだと思います。どうもありがとう!

 我々の頃は WIN or LOSE 一辺倒の根性ドラマが主流だったけどね。そもそもそんなの万人が目指せるわけないんだもん。その点、今のスポーツは GAME and LIFE の両方で価値を見出そうとしてるのかも。たかがスポーツされどスポーツ。試合が終わっても人生は続くんだからねえ。

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 では、半世紀ほど前に若者が熱狂したスポーツ観をご覧いただきながら、今週はお別れです。

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