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米国企業のDXへの取り組み動向❹

連載「米国企業のDXへの取り組み動向」では、大手家電量販店のベストバイ(第1回)、スポーツ関連メーカーのナイキ(第2回)におけるDXの取り組みについてご紹介してきました。

今回(第3回)は、誰もが知っているテクノロジー企業であるマイクロソフトのDXに関する取り組みや業績の変化についてご紹介していきます。

マイクロソフト

20世紀において、パソコンの代表的なOSであるWindows、そしてWord、Excel、PowerPointといったオフィススイートのライセンス販売で帝国を築いてきたマイクロソフトですが、今世紀になるとモバイル、ソーシャル、クラウドテクノロジーの浸透に大きな後れをとり、しばらく停滞期が続いていました。

この間に台頭してきたのが、ご存じのGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)です。

スタートアップ提唱で有名な起業家であるスティーブ・ブランク氏は、検索スマートフォンモバイルOSメディアクラウドという5つの大きな市場において、マイクロソフトが全て大敗したと評価しました。

そのような厳しい状況で新たなCEOとして就任したのが、サティア・ナデラ氏です。ここでは、同氏が取り組んだ2つの大きな変革を整理してみたいと思います。

売り切りから継続課金へのシフト

1つ目は、売り切り型のライセンスビジネスモデルからクラウドベースのサブスクリプション型のビジネスモデルへ方向転換したことです。

従来は、パソコンOSのデファクトスタンダードであるウィンドウズの強みを活かし、その上で稼働するソフトウェアを販売、時としてバンドリング(抱き合わせ)販売するという、いわば王道を歩む販売形態を採用していました。

現在において、これらのプロダクトの多くは、基本的な機能を無償で提供するとともに、クラウドをベースとしてプレミアム機能をサブスクリプション形式によって提供されています。これは、一般的にフリーミアムと呼ばれる収益モデルです。

また、アマゾンのクラウドサービスであるAWSには及ばないものの、マイクロソフトが提供しているAzureも順調に売り上げを伸ばしているようです。

このようにして見ると、マイクロソフトのビジネスモデルはやっと時代に時代に追いついてきた、口の悪い人からはいずれも二番煎じであると評価されることもあります。

しかしながら、従来から同社が市場に提供するプロダクトやサービスの多くは追随型(MacOSからWindows、Lotus 1-2-3からExcel 、Netscape NavigatorからInternet Explorerなど)であり、強力なプロダクトおよびマーケティング戦略で各々のカテゴリにおけるトップシェアを獲得してきた経緯があります。

いずれにしても、同社が近年大きな復活を成し遂げたのは、これまでに築いてきた大きな顧客ベースの存在でしょう。

独占から協調へのシフト

2つ目は、ビジネスモデルというよりは、組織文化の変革と言えるものです。

大袈裟に言えば、従来の組織文化は排他的、例えばリナックスのような他のOS、またはウィンドウズ上で稼働しないソフトウェアを提供しているベンダーを全て敵とみなし、徹底的に叩き潰すような企業文化のイメージがありました。

各国の政府から、独占禁止法や競争法違反の疑いや適用を受けることさえありました。
さらに、同社内部の事業部門間においても、従来は多くの軋轢があったようです。

CEO就任後、サティア・ナデラ氏は共感という言葉を使うことによって従来の組織文化の変革に乗り出しました。

また、これまで敵視してきた企業とのコレボレーション、あるいは他の企業が提供しているプロダクトやサービスの積極的な採用を図るようになってきました。

多くの企業、それらの企業が提供しているプロダクトやサービスとのコラボレーション(協調)にシフトするようになってきました。

例えば、自社システムにリナックスを採用したり、iOSやアンドロイド上で稼働するオフィスアプリを積極的に提供したりしています。

業績の改善

2014年以来、DXを推進しいていく中、マイクロソフトは時価総額においても再び首位の座を獲得しました。

そして現在では、GAFAに復活著しいマイクロソフトを加えたGAFAMが世界を席巻するテクノロジー企業と呼ばれることが多いようです。

2013年末に38ドルであった株価は、2020年末には222ドル(7年間で約5.8倍)にまで伸びています。

投資家にとってマイクロソフトの魅力の1つは、オフィスプロダクトを中心としたアプリケーションクラウドサービスハードウェアとOSという3つのカテゴリにおける収益のバランスが上手くとれていることでしょう。

アップルはハードウェアやデバイス、グーグルやフェイスブックが広告による収入が多くを占めていることとは対照的です。また、アマゾンの売り上げの多くはECによるものですが、利益の多くはクラウドサービスによるものです。

企業レベルにおけるDXとは、デジタルテクノロジーを活用したビジネスモデルを通じて組織を変革し、業績を改善することです。デジタルは手段であり、変革は目的です。

日本において、とかくデジタルのみが強調されることが多いのですが、マイクロソフトは変革が重要であることを教えてくれる良い事例となるかもしれません。


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