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狂犬病の曝露前,曝露後予防(ヒト用)

IDATENメーリングリストで狂犬病の予防接種(ヒト用)について話題になっていたので,紹介します(スライドの切り貼りなので手抜きです)。

曝露後予防

曝露前予防がない場合の曝露後予防は以下の通りです。
カテゴリーIIIの咬傷では,抗狂犬病免疫グロブリンの接種が必要ですが,日本国内では入手不可能なので,必ず現地で初期対応を受けてきてもらう必要があります。カテゴリーIII相当で,現地で初期対応を受けずに日本に帰国してきてしまった人でこれは狂犬病罹患のイヌの可能性が高いなと思ったとき,免疫グロブリンを受けに海外に戻るように奨めたこともあります(保険会社と契約内容によるかもしれませんが,海外旅行保険に入っていればカバーされる可能性があります)。このケースで危ないなと思ったのは,特にちょっかいをかけていないのにイヌが噛みついてきた,という情報でした。狂犬病を発症したイヌはそういうことがあるそうです。

免疫グロブリンを投与する意味合いは,ワクチン接種をしても抗体価が上昇するまで7〜10日間のタイムラグがあります。この間を免疫グロブリンによる受動免疫でカバーします。
とはいえ,途上国では抗狂犬病免疫グロブリンは入手しづらいことがあるそうです。ここで重要になるのが曝露前予防です。曝露前予防をしておけば,曝露後接種を追加することによって速やかに抗体価が上昇するので,免疫グロブリンの投与は不要になります。

曝露前予防のスケジュール

曝露前予防のスケジュールは最近,国際的には変化がありました。
これまでの曝露前予防は以下の通りでした。

従来,曝露前予防は3回でしたが
WHO,ACIPで推奨が変更されています。

ACIPではリスクカテゴリーを5つに分けて,ブースター接種の必要性についてまとめています。

要点は,
・リスクカテゴリー1,2: 認識できない曝露の可能性あり

→抗体価を定期的に確認,<0.5 IU/mLならブースター
・リスクカテゴリー3,4: 認識できる曝露あり

→狂犬病疑いの動物に咬まれる,引っかかれる,飛沫を浴びるなど明確な曝露があれば曝露後予防(ワクチン2回)
・カテゴリー3はリスクが持続するため,

1)2回接種後1〜3年の間に抗体価確認,
<0.5 IU/mLならブースター

2)day 21から2回接種後3年間以内にブースター
・カテゴリー5:低リスク(一般的な米国居住者)
→曝露前予防必要なし

という感じです。咬まれる,舐められる,引っ掻かれるなどわかりやすい曝露リスクなら,その後曝露後予防を追加すればよいですが,実験室等でいつウイルスに曝露したかわからない状況で働く人は常に一定の抗体価レベルを保つ必要があります。この推奨では抗体価を測定して,必要に応じてブースターすることになっていますが,日本では狂犬病の抗体価は一般医療機関で測定することはできません。
ですので,リスクカテゴリー3では,抗体価測定の代わりに,従来通り3回目のワクチン接種をしておくのがよいと思います。


従来は,咬まれたら曝露前後合わせて
計5回と考えられてきましたが,計4回に変更されています(米国の推奨)。

  • 以前は,曝露前3回+曝露後2回で計5回
    曝露前がない場合は,曝露後RIG+ワクチン5回
    →咬まれた場合はワクチンは計5回

  • 最近は,曝露前2回+曝露後2回で計4回
    曝露前がない場合は,曝露後RIG+ワクチン4回
    →咬まれた場合はワクチンは計4回


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