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子宮留膿腫で熱は出るか?

結論としては「熱が出ることはあります」。

Schattner A, Dubin I, Glick Y, Haimovich S. An Unusual Cause of Prolonged Fever in an Elderly Woman – Pyometra. Am. J. Med. 2023;136:e138–9.

ですが,ある産婦人科医に聞くと,子宮留膿腫の大半は帯下異常や不正性器出血でを主訴に受診し,時に無症状で偶発的に見つかることもあり,熱源になりうるという認識は薄いのかもしれません。内科医的発想では,膿が溜まっているのだから,熱くらい出るだろうと思ってしまいますが,この辺の認識の差を自覚しておかないとコミュニケーションがうまくいかないことがあります。

↓は日本の報告で,4年間で東京都多摩老人医療センター婦人科外来で子宮腔内を検索出来た60歳以上の353例中48例(13.6%)に子宮留膿腫がありました。

赤澤憲治, 高森久純, 安田博. 老年婦人の子宮留膿腫ー外来統計にみるその特徴ー. 日本産科婦人科学会雑誌 1991;43:1539–45.

主訴が発熱だったのは3例でしたが,他に問診等で発熱があることがわかったのが11例で,合わせて14例に発熱がありました。14例中13例は37℃台で,38℃以上になったのは1例のみでした。
発熱を主訴にした3例は,他科での検索で感染巣がみつからず,不明熱で熱源検索のために受診した例でした。逆に,発熱があった14例中,他の疾患による発熱が明らかだったのが3例あったそうです。発熱患者で子宮留膿腫を見つけたからといって,それだけで熱源として決めつけずに,他にないことを確認するのが重要です。

↓は古い報告で,おそらくCT検査がまだ普及していなかった時代のものだと思いますが,大腸菌の菌血症を起こし,他に熱源がはっきりせず,ドレナージされないまま病態が悪化して亡くなり,剖検でおそらく子宮留膿腫だったのだろうというものです。

Abernathy WS. Pyometra presenting as fever of unknown origin. Obstet. Gynecol. 1973;42:775–7.

放っておくと,稀には重症になることがあるようですので,他の熱源検索を行いつつ,他になければドレナージをお願いしたい病態です。








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