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今話題のInsureTechで米国の健康保険の比較を効率化する企業がNASDAQにIPO申請。機械学習、ビッグデータを利用し、ユーザーが最適な健康保険を見つけられるプラットフォームを提供するGo Health(GHTH)に迫る。

1. 会社概要

2001年に設立。本社はシカゴ、イリノイ州。同社は元々、Clint JonesとBrandon Cruzによって設立された健康保険マーケティング会社Norvax、Incから社名を変えて、成長を遂げてきた。
Go Healthは健康保険比較プラットフォームを提供するヘルスケア企業だ。同社のテクノロジープラットフォームは、20年近くに及ぶ保険の行動データを利用し最新の機械学習アルゴリズムを活用。これにより、ユーザーは複雑で分かりにくい健康保険のプランを、他のプランと比較しながら、簡単に自分のニーズに最適なもの見つけることが可能になる

また、オンラインプラットフォームであることから、顧客や法人に訪問営業をしていた保険代理店の非効率な業務を効率化し、変革させる。これまでは、提供できる健康保険プランの幅広い選択肢も、収集した長年の消費者ショッピングデータに基づく健康保険プランの選択における公平なサポートも提供できなかったが、GoHealthはそれを可能にする。

独自の機械学習テクノロジーLeadScoreを利用して、ユーザーのニーズターゲットの洗い出し、評価等を行い、リアルタイムですべての消費者リード(2019年には400万件を超える)に優先順位を付けることが可能になり、顧客にとっても、保険会社にとっても、便利で効率的なサービスになる。
まさにWin-Winのビジネスを実現する。

コロナも追い風!?
コロナでのリモートワーク、ソーシャルディスタンスにより、同社のリモートエージェントプラットフォームは本領を発揮している。ビジネス自体もオンラインなため、コロナもあまり関係がない。
しかも、保険エージェントにとっても、在宅勤務の期間中も効率的手数料ベースの報酬モデルという、安定した魅力的な収入源により、エージェントの維持と採用の継続が可能。さらに、消費者がリモートでビジネスを行うことに慣れてきているため、COVID-19の大流行が終わった後も、同社のプラットフォームのモデルは加速し続けると推測。

2.ビジネスモデル

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まず、マーケティング。マーケティングコストをリアルタイムで分析し、どのチャネルにフォーカスすればよいか、判断できる。マーケティングの効率化が図れ、現在実績4000万人以上の顧客にリーチ。
そして、営業ではリードスコアリングを利用し、緻密な顧客分析が可能。反対に、保険キャリアの分析も過去のパフォーマンスベースで行うことで顧客にとっても理解しやすく、最適なプランを提供。

収益モデルは、定期コミッション制。消費者がGo healthに登録し、保険商品を購入し、顧客になったときに保険キャリアから最初のコミッションが支払われる。それらの顧客が健康保険プランを保持している限り、追加の定期コミッションがずっと入ってくる仕組み。また、面白いのが、過去のコミッションに基づいて構築された高度な統計モデルを使用して、将来のコミッションの売上予測を立てているという、データドリブンな経営となっている。高度な統計モデルを利用し、消費者の人口統計属性を考慮し、健康保険プランの特性と一時的なデータから、特定の各プラン製品に登録されている各消費者に関連するコミッションストリームの予想LTVが決定できる。

2020年3月時点、予想される将来のコミッションストリームを表す売掛金の総額は、3億8880万ドルで、2019年3月31日と比較して223.4%増加している。

3.テクノロジー


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データ駆動型のオムニチャネルマーケティング
予測される消費者リードのターゲティング、消費者リード生成プロパティに対する多変量テストの高いアルゴリズムに基づいて、マーケティング支出の目標収益率を計算し、インプレッションの増加と適格な見込み客を促進。
リードスコアリング
独自の機械学習テクノロジーの1つであるLeadScoreは、大規模なエンドツーエンドの販売データに基づいて構築され、消費者リードのLTVと変換確率を予測し、リアルタイムで消費者リードのルーティングを最適化するために利用。
・マッチング
LeadScoreとエージェントパフォーマンスデータモデルに基づく独自の認定プロスペクト配信、ルーティング、および優先度キューイングテクノロジーを用いて、実際の顧客に変換する可能性が最も高いリード顧客と、保険エージェントのマッチングを支援。
・マーケットプレイス
独自のマーケットプレイステクノロジーは意思決定支援ツールを備え、保険会社のエンタープライズシステムとシームレスに統合し、高度なスキルと訓練を受けたエージェントが特定のニーズに基づいて各消費者に適した健康保険プランを迅速かつ効率的に選択し、提案できることが可能。

4.資金調達額

これまでの資金調達額は合計で$75.4Mで、サンフランシスコにあるNimble Ventures(2014年に設立された比較的新しめのファミリーオフィスVC)と
Norwest Equity Partners (NEP)に出資を受けている。

5.財務

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                                                                                                      (Gohealth S-1)

6.競合他社

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・Getinsured
GetInsuredは、2005年に設立された、ブローカー、保険会社、雇用者、個人向けのヘルスケア製品・サービスの比較ショッピングポータル。医師レビュー、歯科医のレビュー、病院の医療処置費、薬とサプリメント等の情報が見れる。CEOのChini KrishnanはGetinsuredに携わる前、Valicert 社で会長兼最高技術責任者を務め、技術部門やサービス部門の運営を含む役割を担い、複数の買収の完了にも貢献。Valicertは2000年に株式を公開し、2003年にはTumbleweed Communications(NASDAQ: TMWD)と合併。

HQ:マウンテンビュー、カリフォルニア州
CEO:Chini Krishnan
総売上:27百万ドル
上場:非上場
過去の買収歴:2017年8月にACAExpress.com, 、2016年11月にArray Health Solutions を買収
eHealth
1997年に設立。eHealthは、個人、家族、企業が健康保険と関連商品を見つけ、購入可能にするオンライン代理店。健康保険のオンライン情報サービスであるeHealthInsurance Services Inc.の親会社。客観的でユーザーフレンドリーなフォーマットで複雑な健康保険情報を提示し、消費者ニーズを満たす健康保険商品の調査、分析、比較、および購入を可能にする。eHealthの投資家の中には、Goldman Sachs、Kleiner Perkins Caufield & Byers、The Sprout Groupなどがいる。

HQ:サンタクララ、カリフォルニア州
CEO:Scott Flanders
総売上:543百万ドル
上場:上場済み EHTH(NASDAQ)
過去の買収歴:Health, Wealth and Life Advisors, LLC
・Stride Health
個人向けのヘルスプランを提供するオンラインマーケットプレイス。2013年に設立。投資家には、F-Prime Capital Partners、Venrock、NEAなど。2015年1月、ストライドヘルスはモバイル向けの新しいバージョンのヘルスケアレコメンデーションエンジンを発表。主にユーザーを特定のヘルスプランに誘導するときに獲得したブローカー手数料が収益。また、追加のサービスをパートナー企業に請求することで、収益の一部を稼ぐ。新しい官民パートナーシップにより、ストライドユーザーは連邦医療交換への登録を簡単に行える。Strideの統合を通じて、ユーザーは特典を選択し、会社のプラットフォームから直接、助成金を申請して受け取れる。

HQ:サンフランシスコ、カリフォルニア州
CEO:Noah Lang
総売上:3百万ドル
上場:非上場
資金調達額:49百万ドル

7.市場環境

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米国のメディケアの登録数は、2019年の約6,100万人から2028年までに約7,700万人に増加すると予想されている。メディケア適格人口の割合は増加しており、2019年のメディケアアドバンテージプランに加入しているメディケア受益者の38%、つまり約2300万人が商用保険ソリューションを選択している。

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北米における健康保険のキャリアのシェアはUnited Health Group (14%)が圧倒的に高く、Anthem、Humanaと続く。主要なキャリアはほぼGo Health と提携済み。


8.実績/提携パートナー

データドリブンなビジネスモデルであり、消費者とのやり取りから生成されたデータを利用したリード顧客数は、400万件を超える。
300以上の保険会社との提携しており、米国の主要な保険キャリアである、Anthem, United Health, Well Careなどが名を連ねる。 現在500万人以上の米国人が利用。

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2016年7月にはクラウドベースで主に従業員向けの健康保険、福利厚生プランを提供するプラットフォームを開発していたConnected Benefitsを買収ずみ。

また、Deloitte Technology Fast 500やErnst&Young Entrepreneur of the Yearなど、数多くの賞を受賞している。









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