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中小企業の研究費は、個人の自己研鑽に頼らざるを得ない現状について

下記の記事を読むと、大手企業は潤沢な研究費があっていいなと思う方も多いでしょう。大手にお勤めの方からすると、それでも全然足りないとお考えかも知れません。しかし、中小零細企業だと、僅かな研究費どころか研究費そのものが無いのが当たり前だったりもします。

■研究開発費の増加額ランキング
1位 武田薬品工業 1127億円増額
2位 トヨタ自動車   512億円増額
3位 ホンダ      400億円増額

「研究費は無いのが当たり前」ということは、企業努力をしていない証拠であり、だから零細企業のままなのだとの意見もあるでしょう。しかし、研究費を捻出する余裕がない中小零細企業が多いのも事実です。

今回は、中小零細企業が研究費を掛けるべきか否かの議論はちょっと横に置いておき、研究費が掛けられないという前提で、中小企業における研究費が個人の自己研鑽に頼らざるを得ない現状について考えます。


「研究費が無い」には、2種類ある

前述の通り、良くも悪くも研究費が無い中小零細は多いのが現実です。しかし、実のところ「研究費が無い」には2種類あります。

1)研究費どころではない! ギリギリの経営状況下の中小零細
2)僅か~ある程度は研究費が捻出できるが、研究費は使わない中小零細

ここで注目したいのは、上記2)の中小零細。経験的には、かなり多いと思います。「ちょっと情報収集したいから」と使う図書費や、「競合他社の製品を研究したくて買うちょっとした商品」の購入費など、仕分ルールにもよりますが、これら図書費や商品購入費は研究費と捉えることもできるでしょう。しかし、このような「何か情報を得たい/研究したい」といった趣旨の【ちょっとした費用=リサーチ費用】社内風土として経費として上げにくい中小零細は多いのです。


研究費を経費として上げにくい社内風土はどこから生まれるのか?

研究費が経費として上げにくい風土が出来上がる経緯は様々あります。次に挙げるのは、その代表的な2つです。

・何においても経費に厳しい
経営者や経理担当者が、とにかく経費にはうるさい。または、超節約志向である。長年の節約志向が「どうせ経費として認めてもらえない」という諦めを生み出すのです。その結果、研究費を計上する前例がなくなり、研究費0円が常識になっていくのです。
・過去に経営危機を経験している
ビジネスは常に浮き沈みがあります。長く経営をしていると危機的な経営状況に陥る経験をした中小零細は多い。このような経験をすると、経費の使い方に慎重になるのも当然です。必要な経費についても制限が掛かり、全体的に経費に厳しくなると、研究費は認めてもらえなくなります。

いずれの場合も、必要なら稟議を上げてみればよいのですが、研究費はすぐに売上貢献しない経費であるため、稟議が通りづらくなります。また、稟議を通す過程で、「何のため?」「意味あるの?」などと聞かれたら、「もういいや」となってしまい、研究意欲がなくなる担当者も多いのが現実です。折角、何かを研究しようとしている担当者がいるのに、勿体ない話です。

研究費は無い!
でも新しいことをしていかなければいけないジレンマ

企業活動を継続させ続ける上で、現状の商品やサービスを改良したり、新しい商品やサービスを考えたりし続けなければいけない。でも、前述の通り、研究費を経費として上げにくい風土がある。こうなると、従業員としては、つらい立場に立たされます。つらい立場に立たされた結果、仕方なく従業員は自腹を切って研究費を捻出するのです。

下記の意見は、実際に私がある会社で聞いた話です。

現状の商品やサービスを改良する発想や知識の不足、新しい商品やサービスを考えるめの発想や知識が不足しているのは、そもそもその担当者の問題。その足りない知識やスキルを補完するための図書費などのリサーチは、自己研鑽のために個人が費用負担するのは当然。

これを読んで、経営者が語った内容だと思われたでしょうか。実は、担当者本人が語った話なのです。誰が語ったかで大きく印象は異なりますね。経営者が語った場合はヒドイ話です。一方で、担当者本人が語った場合は妙に納得してしませんか。

いずれにしても、会社は研究費を負担してくれない。しかし、仕事としては何かを生み出さなくてはならない。そのために、担当者は自己研鑽という名目で研究費を自腹捻出する。つまり、ジレンマの果てにあるのは個人依存なのです。中小企業の研究費は、こうして個人の自己研鑽によって支えられているのです。


#COMEMO #NIKKEI

がんばってイイ記事書きます^_^