おじさん柔術

膝が悪くてコンバットベースをとれません、テクニックドリルのときに仲間に迷惑をかけたくないから退会します、と言った白帯おじさんにはおそらく最初で最後の退会届拒否をしました。数年前の話です。詳しくは聞かないけれど以前のぶっ壊し系道場でぶっ壊されたのでしょう。その白帯おじさんは楽しそうに道場に通ってくれて文句なしの青帯を授与できました。


そのまま通い続けてくれればよきタイミングで私がテクニック検定の試練を与えるので都度それらをクリアしてくれさえすれれば次の帯を渡せますよ渡したいです私の夢は貴方を黒帯にすることですと、現在青帯の63歳おじさんに伝えていました。
ところが突然、私は試合に出たいです、と言い始め、本当に試合に向けて準備をし始め、実際に試合に出て、負けました。
本人としては試合に出るという経験をしたくて負けメダルでも表彰台に乗りたいという気持ちだったらしくすっきりした様子でした。


真剣に準備した様子を一番見てきたのは私なので、その準備してきたことを出せなくて私は悔しいです。彼と同じ年齢体重性別帯色の対戦相手の方が殺されても文句言いませんと一筆書いて正々堂々と目の前に立ってくれたのだから準備したことを全部出せたら勝ち負け関係なく心の底からお疲れさまでしたとさわやかに言ってあげられたと思います。これも勝負なのでよくあることではあります。そして膝のいろいろもあるし真面目な人が真面目に準備すると思いつめがちになるし試合向けじゃなくて黒帯に向けての修行もしてほしいし、何よりも人生は有限で今日のこの日のこの瞬間がこれからの人生で一番若いピチピチした瞬間なので無駄にはできないので、正直言って試合は出なくていいのだけれども、たぶん、一年後か二年後にまた出そうな雰囲気です。人生。試合後の飲み会も楽しそうでした。

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