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服を着ているすべての人へ。

12年以上アパレルの会社で働き
生産・販売の現場にいる私は、悩んでいる。

大量生産、大量消費の時代はもうすぐ終わる。

バングラデシュ、ベトナムで大量に作られた製品を大量に注文して加工し販売する。
数年前まではそれで上手くいっていた。
様々な問題が収束した未来でも、同じやり方が通用するのだろうか。


服を買う理由、捨てる理由


今まで私が服を買っていた理由はなんだろうか?
好きなブランド、かわいいデザイン、安い。
どれも表面的な理由でしかない。

そんな私でも少しは考えることもある。
似たような服は持ってないか、クローゼットに入るスペースはあるのか。
私は少し前まで、ひとつ買ったらひとつ捨てるという戦法で乗り切っていた。

ひとつ買ってしまった為に、
捨てられることになった服。
衣替えのたび、
一年間一度も着なかったことに気づき捨てられる服。
そんな生活に、だんだんと疑問が湧いてくる。

服が好きで、そこそこ安価で良い質、
良いデザインの服が買いたいと思っていた私自身が
アパレルの闇を作り出していたのだ。

洋服のストーリーを知る


店頭に並ぶたくさんの服。
どこで、だれが、どのような環境で作られたものなのか考えたことはあるだろうか。

ファストファッション大手は、海外に生産の拠点を構えている。
近年の経済成長で中国は人件費があがり、
現在はバングラデシュやベトナムで生産している。
受注枚数の最低ラインは数千から数万枚。

そんなに注文して売れるのだろうか、と思った方へ。
服の原価は販売金額の15%であることが多い。
つまり10,000円の服は1,500円で作られている。

ある程度の枚数を売れば
残りは半額セールにしようが、廃棄にしてしまおうが、じゅうぶん元は取れる原価設定だ。

***

さて、人件費の安さで選ばれたバングラデシュ。
その労働環境は良いとは言えない。
工場の天井が崩落し、多くの死者を出したり
朝から晩まで安い賃金で働かされたりしているのだ。

では施設を新しくしては?
労働者の給料を上げたらいいのでは?

そうすると
工場を新設するには、しばらく休業せざるを得ない。
休業すると他の工場に注文をとられてしまう。
給料を上げると製品の原価が高騰し、販売価格にも反映される。
そんな高い商品を私たちは買わない。



そうなのだ。
安くてそこそこ良いものを求める私たちが
服の大量廃棄を生み出し、過酷な労働をしなければならない人々を生んでしまっているのだ。

服を着ることを考える


かつて日本にも、アパレル関係の町工場が多くあった。
ファストファッションの台頭でほとんど姿を消したが、
その技術は非常に高度である。

これまで話した大量生産、大量消費の社会や
労働者の人権問題、環境、日本の技術者の雇用など
多くの問題を解決するブランドがもうすでに現れ始めている。

10YCをご存知だろうか?


10年後も着たいと思える着心地で着る人の生活を豊かに。
というブランドコンセプトにまず感動する。
アパレルに長く勤める私から見て、このブランドの魅力をいくつかあげてみる。


原価公開

原価を公開することによって、作る人も身が引き締まり、購入する私たちも納得できる。何より品質に自信がなければできないことだ。


よく考えればわかることだが、SサイズはLLサイズより使用する生地が少ないので原価も下がる。カラーによっても違う。
サイズ、カラー別での金額にも注目してほしい。


先ほどアパレル会社のほとんどは原価率は15%だとお伝えしたが、なんと10YCの原価率は50%だ。


企画から資材の輸送などを考えるとほとんど手元には残らないだろう。10YCというブランドが存在する意味と、私たちに商品を届けたいという熱意が伝わってくる。

生産工場公開


この服は高い技術をもった工場で心をこめて作られていますという透明性。生産する過程において、劣悪な労働環境で涙を流す人はいない。
日本の町工場の技術、雇用がしっかり守られている。

野菜の表示シールでよくある『私が作りました』のアパレル版だ。安心できるし、応援の意味を込めてついつい買ってしまう。


「買う」はゴールではなくスタート

10YCの取り組みを見ていると、
惹かれるものばかり。


①下取りサービス『THANKYOU BACK』

②修理サービス『TSUGITASHI』

③余り物を使って商品を作るサービス『JANAIHOU』

●10YC Shirtの「じゃない方」の生地を使用したFit Capは軽くてずっと被っていても快適で、つばが短いのも気に入っています。



④染め替えサービス『IROHEN』

最近はじまった、『THANKYOU BACK』された商品を別の製品に作りかえて販売する『ARATAME』

リペアをしてくれたり色を染め替えてくれたり、購入後も楽しみが広がるのは、今までの『服を買う』という過程の中に存在しなかったことだ。


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このようなブランドの存在をひとりでも多くの人が知ることで、社会のニーズを変えることができる。

環境や人権に配慮した商品に人気が集まることが浸透していけば、10YCのようなブランドを立ち上げる人が増え、その頃ファストファッションはもう同じ土俵には立てないだろう。



そんな社会を作るのは、
あなたが『服を着ることを考える』ことから始まるのかもしれない。


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軽くてシワにならず、乾きが早い。着心地もサラッとしています。


サステナブルでイノベーションな服とは?を私なりに想像した、短い小説も書いています。よければご覧ください。



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