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クレイジー・Dの悪霊的失恋ージョジョの奇妙な冒険よりー 【ネタバレあり読書感想文】 漫画より読みやすいけどやっぱり色々気になると夜も眠れない。


★★★★☆
Amazonでレビューしたものです。



小説向きのスタンドか


DIOの呪縛に10年後未だ囚われているホル・ホース、ボインゴ、そしてトト神が、鸚鵡を追って杜王町で仗助にふれ、自分を取り戻し、自信をつけ、解放されていくストーリー。さらに、同じ事件で従兄弟の花京院典明を失った涼子も、事件の謎を知り受け入れるきっかけを持っていく。

ほぼほぼ漫画とストーリーは一緒だから、すでに内容は知っているものなのに、小説の方が流れが丁寧で読みやすかったです。(漫画を作っていた方々には大変申し訳ないが。。)

ホル・ホースとマライア、オインゴボインゴの再会、仗助とホル・ホース、涼子ちゃんの出会いや交流は、漫画よりしっかり過程が描かれていて、それらしく面白いやり取りだったし、仗助を通じて花京院が結びついていくところも自然でした。(でも仗助はケツは蹴らせないと思う、、、)

ホル・ホースの過去もボインゴの過去も詳しく触れられて、元敵ながらしんみりしました。
なんでスタンド使いってこう、悲しくハードな過去が多いのですかねえ。むしろスタンド使いだったから、こんな過酷な環境でも生き残れたということなんでしょうか。

病院でのホル・ホースと彼の会話はうるうるきました。
そう、、、見れなかったんだよね。。
でも1週間では展開が急すぎるよ。

また、最後の良平さんから4部に繋がる流れも素敵でした。奥さん大事にしてたんでしょうねえ。

漫画は3巻に詰め込みすぎたのでしょうかね。重要なシーンのぶつ切りみたいになってしまった感じでした。メインストーリーばかりぎゅうぎゅうに詰め込んでしまったのか、人物に共感しにくかったし、息抜きがなかったというか。

スタンド自体も記憶を再現するという点で、内向き、小説向きだったのかもしれません。

ケチつけてすみません


それでも、やっぱりたくさん気になってしまいました。

漫画では残った疑問点が小説では解明されましたが、でも奴がどうやって奴に鳥を渡したのかがよくわからないまま。。。自分の役に立つために使いそうだけど。職業的に最初に選ぶ相手ではまずないでしょうに、猫を被って生きてきたのにどうやって縁付いたんだ? 矢でうったらスタンド使いになるか死ぬかだから、どっちでもなかったはずだしねえ。
その奴のおじいちゃんの書き置きとかなかったんだよね。てか、おじいちゃんって出てきてた人?(人ではないか)

それに、DIOがスタンドと名づけたり、みんなが前から持っていたスタンドを、最近タロットやエジプト9栄神で名づけたとは思えないんですよね。
ポルナレフや花京院が、ずっと前から一緒にいた自分の能力を洗脳中にエンヤ婆に勝手に名付けられて、それを誇らしげには使わないだろうし、必殺技の名前だけは前からあったというのも変だしねえ。

運命のすれ違いは面白いけど、この本のテーマとしては蛇足かな。あんな豹変したら通報されそうだから、さわりだけでも良かったかもしれない。

叔母さんてまた別口?
ていうか、花京院が分家?地元に地名残ってるのに?
本当に申し訳ないけど、涼子ちゃん両家の子女にはちょっと見えないよ、、、花京院はまあわかるけど、、あっちが本家で涼子ちゃん分家だったらわかるけど。
あれが分家なら本家はお蝶夫人でしょう。

やっぱり仗助が


主人公を外側から描くのは難しい

この話で普通に考えると主役は仗助なのですが、仗助については本人の内面は戦闘中ばかりで、他はホル・ホースや涼子ちゃんからの視点でした。
仗助の二面性というか分断について繰り返されてましたね。(お母さんも)

また、恋愛は超主観的なものでしょう。

漫画で描くとすると顔を赤らめたり明らかに動揺する動作を見せるとか、はっきり言葉で好き好きいうか、としないとなかなか外からは分かりにくいものです。

小説だったら内面の表現でわかりやすいと思うのですが、そのへんはこの小説ではあまりなかったです。

まあ、ただ男子高校生のアプローチが私はよくわからないので、実際はこんなもんなんでしょうかねえ?(それでもケツは蹴らせないと思う、、、)

黄金の精神を包む東方のやさしさ

友達になりたいジョジョをあげれば、仗助はトップクラスでしょう。

彼の性格といえば、「普段は穏やかだけど、キレる」というもの。
特に髪型をいじられると瞬間でキレ、4部でも何度もキレてました。

髪型については、スタンドに目覚める発熱の時の雪の中で助けてくれた少年の髪型だったというエピソードが原作であります。それを真似していたと。荒木先生が確か、仗助は助けてくれた少年を父親がわりにみている、可哀想な奴だと、言われていた覚えがあります(ソースは見つからずうろ覚えですすみません)

仗助は欠損家庭といわれる育ちになりますが、それについては彼には何の責任もありません。全くオトナの身勝手の結果に振り回されている子供です。ジョセフについてはこちらで触れませんが、朋子にしても知っていて不倫して子供を作って産んだわけなので、罪な母親です。
彼の生まれた当時はまだ、世間の目が良くも悪くも今と比べ物にならないぐらい厳しい時代でした。愛人や2号を囲う金持ちや権力者がいた一方、父親のいない子供に対しての風当たりはだいぶ強かったでしょう。ましてや地方都市で不倫の結果で相手が外国人では。本当なら朋子さんは教師なんて出来なさそうですが、遠くで勤務していたのか、良平さん夫婦の人徳でフォローしていたのか。

仗助の育ちを思えば、父の日から始まって、日曜日に遊ぶ家族、運動会で我が子の写真を撮る父など、他の家の仲睦まじい父子を見て、その度に寂しく悲しい思いをいだくのが普通でしょう。何で自分は他と違うのか、何で自分には一緒に遊んでくれるお父さんがいないのか。
15歳までそうやって育てば、自分の境遇への怒りを母親に向けてもおかしくない年齢です。ぱっと見立派な不良ですし。うるせえクソババアって家庭内暴力振るいそう。

でも仗助は、口答えなどしつつもなんだかんだと母親を思いやっています。
承太郎が家に来る時に気にしたのは、母親がジョセフを思って泣くことでした。
彼の境遇でこの年齢でこのセリフは出ないでしょう。勝手に付き合って別れて自分を産んで思い出して泣く母親に、「やかましい!」と怒鳴ってもおかしくありませんが、仗助はそうしません。彼は、自分の感情を横に置いて、まず母親を家族を思いやり、思いやりを言葉や行動にうつすことのできる、やさしい男の子です。
その象徴がたくましくも、ピンクのハートの優しいスタンド=クレイジーダイヤモンドであり、そのやさしさは、おそらく東方の、良平さん譲りでしょう。

本来なら自らの境遇にいつもキレていてもおかしくないのですが、ジョースターの誇り高き黄金の精神と、東方の周りへのやさしさで、彼は普段はキレることを抑えているのでしょう。

ジョジョでは結構突然キレる人は多いです。
が、一般的には、ずーっと我慢に我慢を重ねてきたところに、最後の一押しでキレるものです。
仗助も本当なら境遇に父や母への怒りや憤りをもつところを抑え続けているから、ちょっとのきっかけでいきなりキレてしまうのではないかと思います。
だから二面性というのはちょっと違うかなーという印象です。
涼子ちゃんのキレているのを察知するというのはわかりますが、ちょっとわかりにくかったかな。

何より、髪型についてはやっぱり原作通りであってほしかったですね。大事な大事なエピソードだし、命の一大事のことは鮮明に覚えているものですから、熱のあった本人はともかく母親は覚えているものでしょう。命の恩人の話は繰り返ししたでしょうし。
じいちゃんとのことはまた別のエピソードにして欲しかったです。

個人的にはこんな展開を期待してました


漫画の2巻まで読んだ時点での私の予想(というか希望願望妄想)では、

花京院は収容時にイヤリングを片方落としていて、もう片方は涼子ちゃんのつけている形見。鳥は10年前に彼のイヤリングを飲み込んだ。10年後、仗助が涼子ちゃんを探し、落とした彼女のイヤリングを再生させて彼女を呼び戻そうとしたところ(怪我して歩くのがしんどかったから)、鳥が引き寄せられて腹の中からイヤリングと記憶が引き出されて再生されて魂だけ花京院とハイエロが復活。警官を倒し涼子ちゃんは鳥の持ち主になる。警官のジジイは吸血鬼で杜王町から少し離れた山奥に引っ込み他の吸血鬼と集落を作っていて、一部はスタンド持ちになっていた。杜王町の多数の行方不明の一部は吸血鬼が原因(他の県にもそういう街がある)。5人パーティーで倒しに行き仗助は父ゆずりの波紋に目覚め、茨ならぬ拳や触手や弾丸につたわらせて吸血鬼を倒す。倒したあとは、鳥が仗助の記憶を消去、花京院は両親と再会し墓に眠り、ホル&ボイはエジプトへ戻る。4部が終わったお彼岸に涼子ちゃんが墓参りをして、すれ違いに承太郎が来て、、

という話かと思っていたんですけどねえ。残念。


空想落書き。Stingの”Shape of My Heart"を聴きながら。
こんな展開になるのを期待していたんですが、。。
もう二次創作するしかないかなあ。



著者:上遠野浩平、荒木飛呂彦
出版社 ‏ : ‎ 集英社 (2023/6/19)
発売日 ‏ : ‎ 2023/6/19
単行本 ‏ : ‎ 360ページ
ISBN-10 ‏ : ‎ 4087901181
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4087901184
寸法 ‏ : ‎ 13.4 x 2.7 x 19.4 cm


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