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第8回・小説草稿。仮題:「スマトラでウルトラゾフィー:亜空神界流転抜転編」(仮

スタジオ・シー・ウィード:レコーディング・スタジオ

レコーディング・スタジオのミクシング・ブースに、麻のサマー・スーツにパナマ帽の小太りのオトコ。

タイトなブラックレザー・パンツにブーツに黒のGuns 'N Roses のロゴ入りクロップドT-シャツの小麦色の肌をした精悍なオンナ。

そしてミキサー中央のエンジニアズ・チェアに座り細巻きシガーをくゆらせる、白の洗いざらしのT-シャツに、空色のハイビスカス柄スイム・ショーツを履いた、ポニーテールの細身のオトコと、その足元で昼寝する初老のゴールデン・レトリバー。

「海苔男くんあのデブに甘くない?」

  ミッシー:黒でキメたロッカー風のオンナ。実は凄腕のアサシン

「デブはねえだろ、フラれたからって、デブは。」

  キッシー:小太りなマネージャータイプ。

「なによキッシー、あいつの肩持つの?」

「ミッシーそんな恐い顔されたら勘違いして夜ねむれなくなるから勘弁してくれよ。」

少し微笑んでからすごい顔で睨み返すミッシー。

ヒッと声をあげ笑ってスタジオを出るキッシー。

「グレンのあのタイヤ、やばくないかな?」

細巻きのシガーを吸い、ぽっぽっといった感じに宙に輪をつくる海苔男。

「うん、デドコ確認したのかって訊いたら、となりのメカニックのコネで横流してもらった逸品だって、自慢されたよ。」

「ヤバいねそれ。」

「うん。ちょっと見守ってやろう。」

シガーを眺めて、声は出さず「ミマモッテヤロウ」と繰り返す海苔男。

「スタジオ専属ドライバーならデートに誘ってやろっかな。」

「いっぱい美味いもの食わせてあげてよ、ミッシー。」

ドアがしまっているのを確認してから海苔男にハグするミッシー。

「うんそうするよ海苔男ニイちゃん。」

「ミッシーなんかオマエ最近やけに可愛いぞ。」

大げさにのけぞり頭に手をあてて、ケラケラと笑うミッシー。

「グレンがアタシをデート連れってくれたら海苔男兄ちゃんにお礼しなきゃね。」

「なら、アンジーとデュエットで一枚レコーディングしよう。」

「アンジーがうんって言うかな。」

シガーを口に運び、煙をユックリくゆらせる海苔男。

「アンジー、たぶん歌いたくてしょうがないはずだよ。自分の才能は自分が一番知っているはずだから。ただ、責任感がつよすぎるんだ。」

「そうだね。アタシ、アンジーのそういう所、好きだから。」

「ペニーズでアキラ君とゆっくり働いて、もう充電すんだはずだ。」

「そうね。もう何年かな。」

「ああ、何年たったかな。」

「アタシ、アンジーのステージまた観たいよ。」

「はは。それはミッシー、世界中のゲン・ジューミンがそう思ってるさ。」

足元のレトリバーがユックリと尾を振る。

「ノアも同意だって。」

海苔男が老犬ノアのお腹を撫でると、ノアが起き上がり、ミッシーに鼻面を擦り寄せた。