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SF小説「ジャングル・二ップス」4ー6

土着系SF小説「ジャングル・二ップスの日常」第4章シーン6

ミタラシ

画面はフランスのニュース番組だ。

絵画の額縁にはめ込まれたミュートのテレビ画面が、生真面目そうなニュースキャスターの姿を滑稽な物にしている。

日本語字幕が付いている。

海外のニュースはもう少し早い時間に放送するはずだとショーネンは思った

今朝BS番組を録画したもののようだ、昨日の飛行機事故の詳細を検証している。

それよりもこの声だ。

店内に流れているこの声は聞き覚えがある。

間違いなくアレックス・ジョーンズのダミ声だ。

いくら海外では有名だとはいえ、アメリカのコンスピ系老舗番組、インフォ・ウォーズを店内で聞いている古本屋の店主なんて日本中探してもそうはいない。

ショーネンもYouTube でインフォ・ウォーズはたまに観ていた。

アレックス・ジョーンズが極右の白人至上主義者のレッテルを張られ、全てのSNS から同時にパージされてちょっと経つ。

日本でも注目されて良いはずのニュースだと思うが誰も注目しなかった。

日本のアメリカ通に、一般的なアメリカ人と付き合いのある奴なんていない。

アメリカ通みたいな連中は、日本に興味がある教養のある白人連中にしか相手にされない。

英語ができる以外本当は何処にでもいる、つまらない奴等しかいないからだろうと思う。

日本に流れてくるアメリカの情報はメインストリームのメディアを眺めていても読み解ける表層的な部分だけだ。

アレックス・ジョーンズやジョー・ローガンを聞きながら悪態をついているようなオッサンと話さないとアメリカは見えない。

インフォ・ウォーズか。

タロウさんはただの古本屋の店主ではないようだ。

店内は古本屋というよりは雑貨屋のような雰囲気で、色んな国の物が置いてある。

まあ、あの三人の知り合いなのだから只者じゃないのは当たり前だ。

「それ、いいでしょ。電池入ってるし、動かせるよ。」

フランス語の箱のデザインが面白くて手にとって見ていただけだが、タローさんが話しかけてきた。

値段を見ると7500円と書いてある。

「このロボットどこかで見たことあります。」

「えっ? キミ、グレンダイザー知らないの?」

タローがあまり驚いていない口ぶりで言った。

「グレン・ダイザー。」

「そう。グレンダイザー。グレートマジンガーが一番海外ではポピュラーだけどね。永井豪の作品はフランス、スペイン、ヨーロッパ、中南米で絶大な人気らしいんだよね。」

「デビルマンのですか?」

「そう。永井豪ね。それとフランスで日本のアニメは、そうだ、キャプテン・ハーロックとかも同じくらい人気あるかな。」

「ねえ、タロー君。ミタラシ見当たらないけど、どおしたの?」

キヨミがたずねた。

「ミタラシ? 天気良いし、どこかで昼寝じゃないかな。」

タローがヤスオに美術書を渡しながら言った。

「なあタロー。ションベンいい?」

「エースケ悪い、ローソンでやってくんね。最近また水止まらなくなって元栓閉めてんだよ。」

オッケーと言いながらエースケが外に出る。

「タローさん、オレ仕事でトイレとか水回りの修理、家に戻れば一応道具一式あるんで見ましょうか?」

遠慮のいらない相手だと思いショーネンが言った。

「ショーネンは掃除屋やら色々やってるから頼んじゃうといいよ。」

ヤスオが美術書を返しながらタローに言う。

「そうか。なら頼んじゃおうかな。」

「場所を言って貰えれば勝手に見ますよ。どんな感じなんですか?」

「うん、流したら、水が溜まる時と溜まらない時があるんだよね。」

「タンクの中は見ました?」

「うん。取っ手をガチャガチャ動かして直る時もあるんだけど、どこが引っかかるのかイマイチわかんないんだよ。」

タローが店の奥のドアを見る。

「じゃあ、ちょっと見てきます。」

「なんか悪いね。」

「ははっ。直るかはまだ分かりませんよ。」

ヤスオがタローから小さい道具箱を受け取りショーネンにわたす。

「カッコイイじゃないショーネン君。」

キヨミがヤスオの肩を叩く姿を見てショーネンが頭を掻いた。

「ほれっ、ミタラシ。」

エースケが大きな三毛猫を抱えて店内に戻った。

「タロー君、ミタラシまた太ったわね。」

エースケから三毛猫を受け取り、キヨミが頬擦りをする。

「こいつ人気者でさぁ、近所中の猫好きからオヤツ貰っちゃうから、俺が健康食買っても見向きもしねえんだよ。どうしたらいいかなぁ。」

「もうしょうがないデブちゃんねえ。もうデブちゃんなんだからあミタラシはぁ。」

三毛猫が迷惑そうに目を閉じる。

「あの。タローさん。輪ゴムありますか?」

ショーネンがトイレの扉を開けて言った。

「輪ゴム?」

「輪ゴムでたぶん治ります。」

「輪ゴムなら沢山あるよ。」

「じゃあ、とりあえず3本ください。」

オッケーと言いながらタローがエースケに輪ゴムを渡す。

「おお、なるほどな。そうゆうことか。」

エースケが頷く。

「水が流れると黒い風船部分が上がりすぎて引っ掛かるから、輪ゴムを柱に巻き付けてストッパーにするんだとよ。」

「巻き付けた輪ゴムに引っ掛からなければ、勢いよく水が流れても大丈夫になるはずです。」

ショーネンがタローに言う。

「やるなぁショーネン。」

ヤスオが声をかける。

「前に同じ形のタンクを直したので、見てすぐわかりました。」

「二ャーッ。」

「ミタラシが誉めてつかわすって。」

キヨミがそう言うとオヤジ三人が嬉しそうに笑った。

つづく。

トランプ大統領にメッセージを送るアレックス・ジョーンズ

ありがとうございます。