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第3回・小説草稿。仮題:「スマトラでウルトラゾフィー:亜空神界流転抜転編」(仮

ワタシにとっては、毎度の事なのですが。
タイトルは終わりに近づくまで浮かんで来ないので、なかなか決まりません。

シーン:ダイナーPenny's


緩いアメリカン・カントリー・ミュージックが流れている。

昼過ぎのダイナー。

内側からでは読みにくいが、

Island Dinner, Penny'sとウィンドーにロゴがハンドペイントしてある。

店内に客が数組いる。

昼食ラッシュは取り過ぎた様子。

黒に藍色で細かいフラワープリントがほどこされたワンピースに、
グリーンのエプロンをした、赤髪のウェートレスが、

レジのバランスシートをパッドで確認している。

今どきアイコに自動管理させていないのは珍しい。

アキラ君が躁の状態になると、

お皿は全てただのバイキング宴会状態になってしまうため、

島民議会の3長老からこの方法を薦められた。

アイランド・リパッブリックの税務署から

文句を言われた事はいまだ一度もない。

「ねね、おねえさん、

オレのクラムチャウダーって

まだなの?」

「ねえ、コーヒーおかわりおねがい。」

「いいじゃん、ビットID交換しようよ」

「ねえ、今日はいつまで?」

ハイドロ・チキンをシュレッドしながら、アキラ君は、若いオトコ達の惨めな甘え声に、苦笑いしていた。

気を流せば聞かずには済むのだが、頭の隅に置いて、オトコ達の寂しさを眺めていてやる事にした。

アンジーはいつものようすで、仕事をこなし。

「ねえキミ。ウチの旦那に知れたら殺されちゃうよ。」

オトコ達の股間、肛門がキュッと締まる音まで聞こえてアキラ君は大爆笑した。

おい、そんなことを言ったら、もう来なく なっちゃうだろが、

アキラ君は、アンジーの昼ごはんの チキントスタダのスパイスをチョっと控えて、

サワークリームを大めにのせようかなと思った。

「アンジー、ここクラムチャウダー3つ。クラッカーこれオマケね。」

「はーい。」

火を灯し、トルティーヤを3枚のせる。

ウォッカオレンジをカーボンストローでチューっと多めに吸い込む。

近隣諸島のアボカドがそろそろ手にはいらなくなるかもと思うと、ため息が出そうになる。

アボカドは神の、芳醇な愛の印。

生まれた時、アンジーの名をアボカドにしようか?とエミに言ったら殴られそうになった。

またストローをチュッと吸う。

トスタダにのっけるワカモレを多めにすくって口に入れる。

「うーんまんだむ。」

あのCMは良く出来ている。

アキラ君のジャパンCMコレクションの中でもダントツにナンバーワンだ。

あのブロンソンという役者は、映画よりも、あのCMのほうが断然にいい。

太陽の下でうーんまんだむを千回くらい繰り返せたら、

アストロ・プロジェクション状態に入り、

爬虫類人達とチェスを楽しむ時間を持てる。

千年後の自分達の未来の姿、爬虫類人は、

地球で暮らすことを選んだ人々の姿。

2500年前後に、人類が選んだ進化形態。

そうであろうとアキラ君は思っているのだが、

無礼になるといけないから質問どころか脳裏にもださない。

爬虫類人達はイニシエのサムライ達より礼儀に対して真剣だ。

命がけで礼節を守ろうとする。

「アンジー、お昼用意できたよ。」

もう三時半か。

「タバコ吸ってきてもいいかな。」

アンジーの拗ねてクシャクシャにした、

あの顔がオレは一番好きだ。

・・・うーんまんだむ。




つづく。