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私だけの人魚姫であってほしかった

今回の記事はディズニーの実写映画「The Little Mermaid」の感想noteです。少し批判的、差別的にも見える文章を書くかもしれませんが、悪意があって執筆しているものではないことだけは御理解頂ければ幸いです。
執筆した期間から大分ずれての公開になったので、今更感があるかもしれませんが、お付き合いください。

違和感

実は私、公開以前から様々なコンテンツで映画のことは知っていて、かなり見るかどうか考えていたんです。予告編も何回も見て、違和感を感じて、どうしても手が出なかった。
1か月近く経っても決心がつかなくて、結局友人に誘われる形で映画を実際に見に行きました。

映画を実際に見ても何故か落ち着かず、なんだかもやもやの残る形で物語を見終えてしまったなと思いました。違和感は残ったままでした。

「アリエル」に会いたかった

私にはどうしてもアリエルだと思えなかった。
そこにいたのは「アリエル」という名の別のプリンセスだった、と思った。

確かに歌はとても綺麗だと思った。
でも、そこにあるのは力強い自信のある女の人の歌声で、憧れとそれが叶わない失望を持つ、それでも天真爛漫な少女だとはどうしても思えなかった。
「子ども」だから自分の手にしたいものが出来ない、そういう諦観ではないと思った。

一目見て、茶色の髪だと思った。海の中は百歩譲って、陸は確かに茶色だ、と思った。確かにその髪も素敵で綺麗かもしれないけど、私のアリエルは赤髪で、そのチャームポイントが好きだった。さらさらの髪をフォークでとく、その場面が印象的だった。

宝物を放り投げて欲しくなかった。20個もある、でも、それを捨てない、憧れを大切にするアリエルが好きだった。

書ききれない、言葉に出来ない感覚もあるけれど、私はどうしても「アリエル」だと思えなかった。受け入れられなかった。

私が求めていたのは、あの「アリエル」じゃなかった。
赤髪で白い肌で、アリエルブルーのひれを持つ、天真爛漫で表情豊か、陸へのあこがれと、それを象徴するコレクションを大切にする少女。
そうじゃなかったことに悲しくなった。納得がいかなかった。
今も腑に落ちないまま、私の心に残り続けている。

この感覚は「差別」になってしまうのだろうか。
SNSで飛び交う沢山のコメントを見て、ぐるぐると頭の中で色んな考えと感覚がかき混ざった。

ポリコレも多様性も悪じゃない

そう。分かってる。

ポリコレや多様性社会に向けたようなアプローチそのものは決して悪くない。そういった再解釈を経て多くの物語がこの世界には残っているし、それ以上に特にマイノリティと呼ばれる人々にとってそれが大きな意味があるという主張も頷ける。

私の大学での分野は所謂芸術の表象分析的なところだし、ポリコレのような考え方が現代社会と芸術を色濃くつないでいるのも知識として人よりも知っている。そういう考え方の元、作品が作られることは悪ではない。決して、世間が思う話題づくりだけや金銭的事情だけの物でもないし、いろんな人にとって多角的な意味で大切であることも理解しているつもりだ。全然反対じゃない。僕自身だって、そういう自分自身のアイデンティティにはたくさん苦しんできた。考えてきた。

人種を含めた様々な特徴で仕事の幅が狭くなるべきではないと考えているし、そんなことをしているのなら、きちんと考えるべきところは考えろと思う。それは「差別」だと思うから。

そうだ。だから、そういうことが言いたいんじゃない。
きっとこの映画もどこか誰かのための物であると考えたら自然なもので、それは嘘じゃない。そういうものとして確かに美しいのかもしれないと思う。

ある他の人のnoteで「この映画を見て、黒人の女の子がプリンセスを夢見られるようになったら、それが最高の幸せで、映画がつくられた意味だ」と述べている人がいた。きっと、そういうことなんだと心から共感する。

ただ、きっと私はこの映画を作られる時に想定されていた人間ではないのだろう。そのことが仕方ないと思う一方、元々が好きだっただけにとても悲しい。

私だけの人魚姫

ディズニー作品は子どものころから多く見ていた。
アリエルもそういう作品たちの中に出てくる好きだったプリンセスの一人だ。
色々な人がいて、誰かの希望になる作品があって、また別のプリンセス像が世界に出ていく。それが社会にとって大切なものだと分かる。
うん、そう。

だけど、私には腑に落ちない。
私だけの人魚姫がいなかった。そのことにどうにも納得できていないのだ。

終わりに。

色々書いてきたけれど、きっとこういう話には答えがないのだろう。「公的」と「私的」の狭間は多分、とても大きい。
だけど、最後に一言だけ言いたい。
私だけの人魚姫で、アリエルであってほしかった。

ここまで読みぐるしいものを読んでくださってありがとうございました。
これを見て下さった皆さまに祝福がありますように。

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