印象的な本

 ふとした瞬間に、昔読んでいた本を思い出したりする。それは仕事中であったり、ぼんやりとした家路であったり。
 そしてそれは、幾つかある特に印象に残っているタイトルなのである。
 その中の一つに、アンダー・ラグ・ロッキングというタイトルがある。

 発売から10年以上が経ち、作者はこの作品だけを残し、次回作の発表も無く、流れのはやいライトノベル業界において当然のことながら絶版という、完全に埋もれたと言える電撃文庫の作品。
 古本屋でも見かけたことはないし、ヤフオクなんかであればギリギリ流れているのであろうか。おそらく電子書籍化もされていない。というくらいにはマイナーな作品。

 当時まだ学生だった自分は雪景色の中にラジオと一緒に女の子が横たわっている表紙と、そのあらすじに惹かれて購入に至った。
  そして、ちょっとした衝撃を受けることとなったのである。

 親の世代が外部からの侵略により都市を追われ、そんな見知らぬ故郷のために前線に駆り出される少年少女の話。挙句、兵士として子供を送り出した親はその子のクローンを造っても良いとする特別法により、帰る場所さえも奪われるという、ひたすらに理不尽な設定まで付いてくる。

 何がそんなに気に入ったのか、最後の一文が読みたかったのか、購入後は気が付いたら読んでいるということがしばらく続いた。
  多分、決定的なまでにバッドエンドであったとしても、依存であろうがすれ違おうが、お互いを思っている主人公たちが羨ましかったのかもしれない。

 そして、もう何年も読んでいないこのタイトルを思い出す度、そこまで大切なものは持っていないなぁと、少しだけ寂しくなったりする。

 自分の命くらいかなぁ、大事にしたいのは。守りたいものが無いとしても。

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