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眠れぬ夜に読む『天使なんかじゃない』

連日の猛暑で、暑苦しくて眠れない日が多い。眠れないと思えば思うほど焦ってしまい、余計に眠れなくなるので、そんな時は一旦起きて、「別に眠れなくても大丈夫だ!」と自分自身に思い込ませ、寝転がって別のことをしながら、次の眠気を待つことにしている。

眠れぬ夜にすることは、読書だ。小難しい内容だと頭がさえてきて眠るどころではなくなるため、漫画を読む。そういえば私は、子供の頃はあまり漫画を読まなかった。理由は、漫画より小説の方が長い時間楽しめるからだった。お財布と相談し、1冊1時間もかからずに読み切ってしまう漫画よりも、場合によっては一週間くらいかけて読む小説の方がいいじゃないか、と思っていたのだ。少し成長してからの学生時代も同じ理由であまり漫画を読まなかった。けれど、ここ数年は無性に読みたくなって読んでいる。きっかけは確か、情報番組でタレントがおすすめの漫画を紹介するコーナーを観たことだったと思う。

最近の眠れぬ夜をきっかけに読み始めたのは、矢沢あいさんの『天使なんかじゃない』である。

創立されたばかりの高校・私立聖学園。第一期生の冴島翠は2学期早々生徒会役員候補に担ぎ出され、その日の午後に立会演説会でスピーチする羽目になってしまう。緊張した面持ちで講堂に行くと、立候補者の中に以前から存在が気になっていたリーゼント頭の男子生徒、須藤晃を見つける。くじ引きにより最初にスピーチを始めた翠だったが、マイクコードに足を引っ掛けて転んでしまう。更にスカートがめくれて全校生徒の前で自分のパンツを丸出しにしてしまう失態を犯してしまうが、晃のフォローにより無事切り抜ける。投票の結果、翠と晃、そして麻宮裕子、瀧川秀一、河野文太の5人が第一期生徒会役員に就任する。こうして、翠は晃たちと生徒会活動を行いながら、3年間の高校生活を送ることになる。

Wikipediaより引用

『天使なんかじゃない』は、子供の頃、従姉の家で表紙を見た記憶はあるけれど、読んだことはなかった。内容が年齢に合わなかったのもあり、その時は興味を持つこともなく通り過ぎた。

この漫画を読もうと思ったのは、なんとなくである。「そう言えば読んでいなかったな」と読んでみたくなったのだ。

初めて読んだ感想(現在、全8巻中、3巻読了)は、「もっと早く読んでおけばよかったな!」である。こんな面白い漫画を素通りしてきたことが悔しかったのだ。何より、主人公の翠ちゃんの喜怒哀楽の豊かさと真っすぐさが、見ていて(読んでいて)とても清々しくて元気が出た。

好きなシーンがある。

新入生歓迎会で翠たちは演劇をやることになった。翠の調整で麻宮裕子(通称マミリン)とマミリンが片思いしている瀧川君を恋人同士としてキャスティングすることになった。しかし、当日、観客の中に瀧川君の彼女(新入生)がいることがわかり、マミリンは演じることを拒否してトイレに立てこもってしまう。翠が説得しようとして声をかけた時、マミリンは、勢いで翠に対し「大っきらい!」と言い放ってしまう。人によっては大喧嘩、又は絶交になってもおかしくないものだけれど、翠が返した言葉は、「あんたがあたしを嫌いでも あたしは好きよマミリン!」だった。その後、予定通り演じ切り、演劇は大成功に終わった。翠の言葉に何だか胸が熱くなった(真夜中だ)。……いいなあ、こういうの。

と同時に、私は心のどこかで漫画を「所詮漫画」と侮っていたかもしれないと反省した。

ふと、学生時代、国語の先生が生徒に読書を薦めるにあたり、「今しか感じ取れない感性があるので、それを大切にしてほしい」と仰っていたことを思い出した。

当時の私は、小説を読めばいいと思っていたのだけれど、これは小説に限った話ではなく、漫画もだったんだな。何だか自分の落とし物を見つけたような気がして、しばらく漫画の世界に浸りたくなった。ようし、この夏は、落とし物を気が済むまで拾ってみよう。

だから、眠れぬ夜は、夜な夜な漫画を読み漁るのだ。

文:彩音
編集:アカ ヨシロウ

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