牡丹とひじき

とんでもなく美人の同僚がいる。

100人いたら100%全員振り返り、うち78人は失神している。さらに2人は果敢にも連絡先を聞き出そうとして断られ、既に失意の旅に出ている。

立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿は百合の花、彼女は少しハーフぽい顔立ちをしているので、まさに大輪の薔薇のような出で立ちだ。
我が部署には女性が2人しかいないので、立てばワカメ 座ればひじき 歩く姿は切り干し大根(水戻し前)のこちらとしてはたまらない。
恐らく陰で「あの部署のひじきの方」とか言われている。いや、これはひじきに失礼であった。

前世でどのような徳を積めば彼女のレベルに生まれ変われるのか。

自分の村を救って生贄になるくらいのことは何度かしていないと無理であろう。生贄に選出される時点で美人だった可能性もある。輪廻の底知れぬ恐ろしさを感じる。

とにかく、そんなレベルの美人だ。

だが彼女の魅力は美貌だけではない。
天は二物を与えずと言うが、二物どころか劇物を与えることもある。
天が彼女に与えたエクスカリバー、

それは『天然』。

美人+天然は最強のカードだ、ということを日々痛感している。
美人はまず、人生において一度も乾物の扱いを受けていないため、性格に曲がったところがない。
天真爛漫な明るさ、誰にでも話しかけられるフレンドリーさ、素直さ。
そこに屈託無くちょっとした勘違いでも言おうものなら、周りはギャップに即堕ちである。
厳しい上司も難しい同僚も、彼女の前では即陥落。
常に向かうところ敵無しだ。

例えば。

彼女は仕事中に調べ物をしていた。
大変熱心に調べているようで、小一時間沈黙が流れていた。
互いの仕事に集中しながらふと横顔を覗くと、長い睫毛にキリリとした表情がなんとも美しい。
机に向かう姿も絵になるナァ‥と思った瞬間、

「アッ‥!!

プレーリードッグって、犬じゃないんだ!!!」

私は床に崩れ落ちた。

さて、我が部署にはもう1人、男性の先輩がいるのだが、
このような女性と日々過ごすことについてどう思うか、さぞや幸福に思っていることと尋ねてみれば、

「‥あぁ、俺ガ○ャピンみたいな顔が好きだから。」

人の好みは千差万別。
ひじきにもワンチャンありの世の中である。

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