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くるり「ワールズエンド・スーパーノヴァ」

この曲が好きだ。発売当時、この曲を何度も何度も繰り返し聞いていたことを思い出す。

20年前の私はこの曲を聴きながら、まだ見ぬ光景を旅する自分とその先の自分の将来を思い浮かべて、つらい現実から逃避していた。何故かはわからないが、その空想の旅の行先として設定されていた場所はさびれた漁村だった。

勉強はそこそこできたものの、景気も悪く、健康もあまり良くなく、周囲とはおりあえなかった。ヒリヒリとした時代の空気を感じていた。自分の現状と未来への見通しは明るいものではなかったが、この曲を聴いている時は幸せだった。暗い部室で授業をサボって何回聴いたかわからない。この曲が未来への希望を与えてくれた。

僕らいつでもべそかいてばかり 朝が来ないまま
いつまでもこのままでいい それは嘘 間違ってる

くるり - ワールズエンド・スーパーノヴァ

自分には才能があるというぼんやりとした自信と、その才能をどのようにすればこの世界に示せるのかわからないもどかしさあるいは焦燥感。若さによって引き起こされた期待と不安をまぜこぜにした感覚をこの曲が揺さぶった。

この曲が発売されて今日でちょうど二十年になる。社会人となり、住んでいるところも変わり、山の中の街でそこそこの生活をしている。当時夢描いていた道のりとは異なる旅路をたどっているがそこに大きな不満はない。いろいろなことを経験し、ずいぶん落ち着いてしまったのだと思う。けれども、まだこの曲を聴いて胸が躍る感覚も残ってはいる。

こちらのアレンジもおすすめ。「ふれあいコンサート」のファイナル公演を収録したもの。特に最後のサビからラストに入っていくところ、管弦楽によりリフレインされる旋律が高揚感に溢れなんとも美しいと思う。

#エッセイ #思い出の曲


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